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クセありすぎ! 「GTV」で味わう変態アルファ ロメオ中古車生活

くるまのニュース / 2021年2月27日 19時10分

リッターあたりの馬力や燃費効率、そして自動運転へと繋がる安全運転支援システムなど、工業製品としてクルマが格段に進化している現代。そんないまを忘れさせるかのように、スペックだけでは語れない心に響くクルマが存在する。それが2ドアクーペのアルファ ロメオ「GTV」だ。その個性とは? 人々を魅了する理由を探る。

■欠点と魅力の混在、まさに人間のようなクルマ

 昨今、1台の素晴らしいイタリア車が絶滅しつつある──と言ってしまうとやや大げさかもしれないが、少なくとも「なかなかの佳作イタリア車が、その中古車流通量を大きく減らしている」ということはできる。

 日本では1996年から2006年まで販売されたアルファ ロメオの2ドアクーペ、「GTV」である。

 同時期に製造販売された先代アルファ ロメオ「スパイダー」(916型)とプラットフォームを同じくするこのクーペは、「いささか異様な造形である」といえなくもない。

 全体のフォルムは当然ながら(?)美しいが、4灯式となるヘッドランプの直径は妙に小さく、それがために違和感を覚える。

 しかしながら「美しき絶壁」とでも評すべきリアセクションはやはり美しいというかきわめてセクシーであり、それらが総合された結果の全体像が、得もいわれぬ感慨を呼び起こすのだ。

 基本となるデザインを担当したのはイタリアの鬼才、エンリコ・フミア。彼がピニンファリーナに所属していた時期の作品である。

 1996年に登場した最初期モデルは「排気量2リッターなのにV型6気筒ターボ」というやや変わったエンジンを搭載したが、翌1997年6月には3リッターのV型6気筒エンジンに変更。

 1998年10月の仕様変更で、エンジンは3リッターV型6気筒DOHCのままであったが、トランスミッションを5速MTから6速MTへと刷新し、日本仕様のステアリング位置も「右のみ」に。そしてもちろん、その他こまごまとした変更もこのタイミングでおこなわれた。

 2003年7月にはフロントグリルの意匠を大きく変更するとともに、V型6気筒エンジンの排気量を3リッターから3.2リッターに拡大。

 さらには2リッター直列4気筒ツインスパークエンジンを搭載するグレードも追加し、2006年まで販売された──というのが、アルファロメオGTVの日本における大雑把なヒストリーだ。

●1996年 アルファ ロメオ「GTV」

 そしてこのクルマ、冒頭で申し上げたとおりの「素晴らしいクルマ」あるいは「なかなかの佳作」であることは間違いないのだが、同時に「いろいろと欠点が多いクルマ」でもある。

 まずは最小回転半径がきわめて大きいため、一般的なクルマであれば余裕でUターンをカマせる場所でも「あれっ?」という感じでターンできず、ドライバーは焦りながら何度かステアリングを切り返すことになる。

 さらにV型6気筒エンジンはオイル消費がなかなか激しく、おおむね3000kmごとには交換してやらねばならない。「ま、とはいえ大丈夫でしょ」的にナメて4000kmほど無交換で走っていると、いつしかエンジンルームから不穏なる異音が聴こえ始める……ということになるのだ。

 加えていえばこのV6エンジンは燃費も──極悪というほどではないが──まあ端的にいって悪く、時代には完全に取り残されている。

 そしていちおう付いている後部座席は「いちおう付いている」だけに過ぎず、巻き尺などを使って正確に調べたことはないが、おそらくはポルシェ911の後席と同じぐらいか、下手をすればそれ以上に狭い。

……という具合の、いってみれば「問題児」ではあるのだ。

■選ぶなら今しかない緊迫した中古市場

 だがこの問題児は、問題児であると同時に「人を魅了してやまない存在」でもある。

 いささか異様な造形は、異様であるがゆえに心に深く突き刺さり、そしてV型6気筒DOHCエンジンは、エンジンオイルも燃料も激しく食うタイプの設計であるだけに、その官能性のようなものは、現代のエココンシャスな各種エンジンとは比較にもならない。

 このV6エンジンの咆哮および回転フィールは、そのまま「生の悦び」を表している、あるいはそれに直結していると評しても、決して大げさではないはずだ。

 まぁハンドリング性能にはさして見るべき部分はないのだが(悪くないが、とりたてて良くもないぐらいのレベルである)、このV型6気筒エンジンとエンリコ・フミアの筆による造形だけで、完全に「お釣り」がくるタイプのクルマなのだ。

●1996年 アルファ ロメオ「GTV」

前期モデルは200psを発生させる2リッター、後期モデルには240psを発生させる3.2リッターを搭載。中期モデルからは6速MTが設定され、それぞれの時期で多様なドライブフィーリングを味わうことができる前期モデルは200psを発生させる2リッター、後期モデルには240psを発生させる3.2リッターを搭載。中期モデルからは6速MTが設定され、それぞれの時期で多様なドライブフィーリングを味わうことができる

 で、そんなアルファ ロメオGTVは、数年前まではそれなりの数が流通していたものだが、昨今は──絶滅傾向というほどではないにしても──減少傾向で、2021年2月下旬現在の流通量は(カーセンサーnetによれば)全国でわずか19台。

 そのうちの2台は「悪くはないが、V6に比べればやや凡庸である」といいたくなる2リッター直4エンジン搭載グレードで、「珠玉のV6」を搭載しているGTVはもはや17台ほどしか流通していないのだ。

 しかもそのうち2台は、2リッターのV6ターボ搭載のかなり特殊な限定生産モデル「GTV V6ターボ アルファコルセ」なので、3リッターから3.2リッターのV6DOHCエンジンを搭載したアルファ ロメオGTVはわずか15台。そのなかでも「コンディションがいいやつ」となると、さらに数が少なくなるのは明白である。

 少ないなかでも流通のメインとなるのは3リッターV6エンジンを搭載した中期GTVで、その中古車相場は80万から160万円といったところ。3.2リッターとなった後期型はきわめて数が少ないが、170万から200万円ほどでいちおう流通はしている。

 パワーがあるのは当然ながら3.2リッターとなった後期型なのだが、中期3リッターと後期3.2リッターでは装着された触媒の数が違うため、「快感」「快音」という面では中期3リッターに実は軍配があがる。

 だが今となってはそんな細かいことはどうでもいいだろう。3リッターであろうと3.2リッターであろうと、「コンディションと整備履歴が優秀な個体」と出会えたならば、そして貴殿がアルファ ロメオ製V6エンジンと鬼才フミアのセンスとを全身で味わいたいのであれば、本当に絶滅してしまう前に手に入れるべきなのだ。

 もちろん、先に申し上げたとおりの「問題児」であることもまた間違いないため、誰彼かまわずおすすめしたいという話ではないのだが……。

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