なぜ高値安定? いまや貴重な存在となっている絶版コンパクトカー3選
くるまのニュース / 2021年3月2日 16時10分
近年、クラシックカーや旧車、限定モデルなど希少なクルマの中古車価格が高騰しています。ところが、一見すると希少なモデルではないコンパクトカーでも、ジワジワと相場が上がっているモデルも存在。そこで、中古車価格がちょっと高くなったコンパクトカー3車種をピックアップして紹介します。
■じつは希少なモデルになりつつあるコンパクトカーを振り返る
ここ10年ほどで、1980年代から1990年代に登場したスポーツカーや高性能車の中古車価格が、世界的に高騰しています。また、近年発売された高性能モデルの限定車が投機の対象となって、新車価格以上で取り引きされているケースも散見されます。
こうした状況となった背景としては需要と供給のバランスにあり、クルマに限った話ではありませんが、希少価値が価格の高騰を招いています。
ところが、一見すると希少なモデルとは思えない国産コンパクトカーでも、比較的高値で推移しているモデルも存在。
そこで、中古車価格が高値安定傾向にあるコンパクトカーを、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「ノート NISMO S」
エンジンも専用とするほど本格的なスポーツモデル「ノート NISMO S」(画像は「e-POWER」)
2005年に発売された初代「ノート」は、競合ひしめくコンパクトカー市場に投入された日産の次世代グローバルカーとしてデビュー。
初代は1.5リッターもしくは1.6リッター直列4気筒エンジンを搭載していましたが、2012年発売の2代目では、1.2リッター直列3気筒エンジンにスーパーチャージャーを組み合わせた「ダウンサイジングエンジン」を採用。
さらにノートといえばエンジンで発電してモーターで走行する「e-POWER」が加わったことで、一躍コンパクトカークラスの販売台数1位(2018年)を獲得するなど、大いに話題となりました。
この2代目ノートにはスポーティグレードとして「ノート NISMO S」がラインナップされていました。
NISMO Sの開発と生産はオーテックジャパンが担当し、搭載されたエンジンは、専用の1.6リッター直列4気筒自然吸気で、高圧縮比化してハイリフトカムシャフトが組み込まれるなど、いわゆるメカチューンが施された結果最高出力140馬力を発揮。組み合わされるトランスミッションは5速MTのみです。
外装では専用のエアロパーツやカラーリングが奢られ、専用エキゾーストシステム、強化サスペンション、専用ブレーキシステム、ボディ補強、ハイグリップタイヤなどが装備されています。
NISMO Sは日常的な使い勝手もよく、オールマイティな本格的スポーツコンパクトとして人気がありました。
そして、2020年12月に3代目ノートが発売。全車e-POWERとなったことから、MTモデルもNISMOシリーズも消滅。
現在、NISMO Sの中古車は、低走行の比較的良質な物件ならば200万円台前半で安定しており、新車価格に近い物件もあるほどです。
●トヨタ「ヴィッツ GRスポーツ“GR”」
足まわりとシャシを中心にチューニングされた「ヴィッツ GRスポーツ“GR”」
トヨタ初代「ヴィッツ」は「スターレット」の後継車として1999年にデビュー。プラットフォームからパワートレインまですべてが刷新された新世代のコンパクトカーです。
2020年に4代目が登場すると、グローバルで統一された車名の「ヤリス」に変わりました。
3代目までのヴィッツでは、スポーティグレードの「RS」が存在していましたが、2017年に「G’s」シリーズに続く新たなスポーティモデルの「GRスポーツ」と「GRスポーツ“GR”」が登場します。
GRスポーツ/GRスポーツ“GR”ともに、109馬力を発揮する1.5リッター直列4気筒エンジンを搭載。エンジンスペックだけを見ると平凡ですが、足まわりやシャシを中心にチューニングされています。
なかでもよりハードなGRスポーツ“GR”では、ローダウンされた専用強化スプリングに、減衰力を高めたショックアブソーバーで足まわりをチューニング。専用ブレーキキャリパーとスポーツブレーキパッドが採用され、さらにシャシの各所に補強パーツを追加して剛性アップが図られています。
また、内装もスポーツシートと小径ハンドルを装備し、GRスポーツ“GR”ではメーターパネルも専用で、センターにタコメーターを配置するなど、レーシーな演出が施されています。
現行では、2020年9月に「GR ヤリス」が登場したことで、スポーツグレードはヤリスとは大きく異なるモデルへと変貌しました。
GRスポーツ/GRスポーツ“GR”は比較的短命で物件数も多くなく、現在の相場はGRスポーツで170万円前後、GRスポーツ“GR”は180万円から200万円の間です。
■フィットで最後のスポーティグレードになる!?
●ホンダ「フィット RS」
6速MTが設定されて外観もスポーティな「フィット RS」
2001年にホンダ「ロゴ」の後継車として登場した初代「フィット」は、優れた経済性とシンプルで洗練されたスタイル、クラストップの室内空間を実現したことから、大ヒットを記録しました。
2007年にモデルチェンジされた2代目では、1.3リッターエンジンにアシスト用モーターを組み合わせた「フィットハイブリッド」が登場して話題となり、さらにスポーティグレードのRSが登場。
2013年にデビューした3代目でも、2代目に引き続いてRSをラインナップしました。
RSは専用のフロントグリルにリアバンパー、テールゲートスポイラーなどを装備し、リアゲートの形状も専用のものが与えられています。
エンジンは最高出力132馬力の1.5リッター直列4気筒i-VTECを搭載し、トランスミッションはCVTに加え6速MTを設定。
シャシもRS専用に各部が補強されてボディ剛性の強化が図られており、ステアリングのベアリングも剛性アップして応答性を高めるなど、ハンドリング性能を向上。
そして、2020年に4代目が登場するとMTの廃止とともに、スポーティグレードも消滅してしまいました。
現在、RSの6速MT車で高年式低走行の物件は190万円台が相場で、200万円台のクルマも珍しくありません。
※ ※ ※
今回、紹介した3車種に共通するのは、現行モデルでMTのスポーティグレードが消滅したということです。
前述のとおりノートは全車e-POWERとなり、フィットはRSに準ずるグレードがなくなりました。ヤリスは6速MT車がラインナップされていますが足まわりやシャシはスタンダードのままで、比較的安価なスポーティモデルは2WDのGRヤリス RSがありますがCVTのみです。
そのため、各部がチューニングされMTを設定したこの3車は、貴重なモデルとなってしまいました。
MT車の需要はわずかですが求めるユーザーは一定数いることと、ドライビングプレジャーに優れて普段使いにも適したスポーティなコンパクトカーは少なくなり、今後も高値安定が続くと予想されます。
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