出せば売れる時代だった? 全盛期を彩った新興セダン5選
くるまのニュース / 2021年3月7日 6時10分
現在、SUV人気はますます高まりをみせていますが、以前もRVブームやステーションワゴンブーム、ミニバンブームと、人気のクルマは移り変わってきました。そんななか、セダンは次第に人気が低迷していきましたが、1980年代から1990年代はまだまだ堅実に売れていた時代です。そこで、セダンが隆盛を極めていた時代に登場した新興のモデルを、5車種ピックアップして紹介します。
■市場を席巻していた頃に誕生した新興セダンを振り返る
トヨタ「クラウン」のクロスオーバー化が噂され、同じくトヨタの「アリオン/プレミオ」が2021年3月末での生産終了が伝えられるなど、2021年もセダンの凋落が続いています。
しかし、これは今に始まったことではなく、じわじわと進行してきました。
時代によって人気のクルマは変わってきており、かつてはRVブーム、ステーションワゴンブーム、ミニバンブーム、そして現在はSUVや軽ハイトワゴンが隆盛を極めています。
規模に違いはありますが、人気となるジャンルのクルマはニーズの変化よって決まることもあり、どんなに優秀なクルマでも、売れない時は売れないものです。
前述のとおり今はセダンが売れていませんが、1980年代から1990年代は全盛期を迎えており、各メーカーとも古くから販売しているモデルだけでなく、次々と新型車を発売。
そこで、セダン人気がピークだった頃に登場した新興モデルを、5車種ピックアップして紹介します。
●トヨタ「セルシオ」
高級車の概念を変えたといわれる初代「セルシオ」
トヨタが世界の高級車市場に参入するために新たに設立したプレミアムブランド「レクサス」。そのフラッグシップとして開発されたまったく新しいラグジュアリーサルーンが「LS」で、国内仕様がトヨタ「セルシオ」です。
初代が登場したのは1989年のこと。当時のトヨタの高級車には歴史あるクラウンが既に存在し、VIP向けとしては「センチュリー」がありました。
セルシオはその両車の間を埋めるポジションで開発。全長4995mm×全幅1820mmという堂々たるサイズのボディに4リッターのV型8気筒エンジンを搭載しています。
特徴としては、欧州の高級車のような高性能でありながら、日本車ならではの信頼性や快適性、そして品質の高さも追求していることです。
なかでも静粛性と内外装の組み上げ精度は群を抜いており、欧米のライバルを震撼させたといわれています。
その後、1994年には2代目に、2000年には3代目へとモデルチェンジしたセルシオですが、2005年から日本でもレクサスブランドが展開されることになり、4代目にあたるモデルからはLSとして販売。2006年にセルシオの歴史は3代17年で終焉を迎えました。
セルシオはトヨタのものづくりの基準を変えるほどの渾身の作で、いまも語り継がれる存在です。
●日産「プリメーラ」
基本性能を高めることでセダンの原点に立ち返った初代「プリメーラ」
かつて日産のセダンというと、「プレジデント」を頂点に「セドリック/グロリア」「ローレル」「スカイライン」「ブルーバード」「サニー」など、多彩なラインナップであらゆるユーザー層に対応していました。
そんななか、1990年に登場した突如登場した5ナンバーサイズのセダン「プリメーラ」は基本性能に磨きをかけ、セダンの原点に迫ったモデルといえます。
プリメーラは一見すると何の変哲もないFFセダンに見えましたが、「走る・曲がる・止まる」という走行性能の基本を追求すると同時に、使い勝手や居住空間といった実用性も徹底して考慮した設計がなされました。
搭載されるエンジンは、1.8リッターおよび2リッターの直列4気筒DOHCで、2リッターでも最高出力は150馬力と突出して高性能だったわけではありません。
しかし、優れたハンドリングと高い走行安定性、スタイリッシュで飽きのこないデザイン、広い室内と荷室などが相まって、2代目へとモデルチェンジするまでの約5年間で、33万台以上を販売するスマッシュヒットとなります。
なかでも注目されたのが足まわりで、フロントのマルチリンクサスペンションがもたらすハンドリングは、欧州車を超えたと評価されるほどの出来栄えでした。
その後、1995年に登場した2代目は、初代からのキープコンセプトとしましたが初代ほどのインパクトは無く、ヒットには至らず。近未来的なスタイリングとなった3代目は意欲作でしたが、すでにセダン人気は低迷しており、やはりヒットせずに、2005年をもってプリメーラは消滅しました。
●ユーノス「500」
美しいフォルムで小さな高級車を目指したユーノス「500」
マツダ5チャンネル時代のプレミアムブランド「ユーノス」から、1992年に発売されたミドルクラスセダンがユーノス「500」です。
500は「クロノス」5兄弟のうちの1台で、全長4545mm×全幅1695mm×全高1350mmと5台のなかで唯一の5ナンバーサイズでした。
最大の特徴は外観で、国産車離れした美しさがあり、ボディは曲面で構成された妖艶な印象です。
搭載されるエンジンは1.8リッターおよび2リッターのV型6気筒DOHCで、後に4気筒版の1.8リッターも追加されましたが、プレミアムブランドらしい贅沢な設定といえます。
また、クルマのボディを塗装してから、バーベキューの肉のように回転させて焼き付け、乾燥、塗装することで厚い塗装の膜を形成し、鮮やかで深みのある色と濡れたような輝きを実現させた塗装技術「ハイレフコート」を採用するなど、かなりコストをかけていました。
500は高く評価され販売も立ち上がりは順調でしたが、モデルライフ後半は苦戦。マツダの業績悪化もあって車種整理の対象だったことから、1996年に一代限りでユーノスブランドごと姿を消しました。
■世相を見事にキャッチアップした2台のセダンとは!?
●三菱「ディアマンテ」
新時代に対応したセダンとして見事成功を収めた「ディアマンテ」
現在、日本の自動車税は、登録車の場合は排気量で税額が区分されていますが、かつてはボディサイズでも区分が変わり、3ナンバー車は贅沢という思想のもと高額な自動車税が課せられたのです。
そこで1989年に税制が改正されるとボディサイズは関係なくなり、現在の排気量に応じた税率へと変更され、さらに排気量の区分も細かくなって2リッターを超えるクルマは減額されました。
こうした減税を念頭に開発され、1990年に登場したのが三菱のアッパーミドルクラスセダン「ディアマンテ」です。
全車3ナンバーサイズのボディで、エンジンは2リッター、2.5リッター、3リッターとすべてV型6気筒を搭載。とくに主力だったのが、新たな税制をキャッチアップした2.5リッターモデルです。
外観は精悍な印象の逆スラントを採用したフロントフェイスが特徴で、流麗なフォルムの4ドアハードトップボディは、ライバル車が5ナンバーサイズを前提に設計されているなか、ディアマンテは3ナンバー専用としたことで伸びやかなデザインが可能でした。
発売当初から幅広い年齢層のユーザーから支持され、5年足らずの期間で20万台を超えるセールスを記録。
1995年に2代目へとモデルチェンジしましたが、ライバルも多くなって、三菱の不祥事も重なり人気は徐々に低迷。それでも10年も販売を続け、2005年にディアマンテは生産を終了し、消滅しました。
●ホンダ「アコードインスパイア」
伸びやかなフォルムと豪華な内装が特徴の「アコードインスパイア」
ホンダは現行モデルでも「アコード」と「レジェンド」をラインナップしていますが、1989年にアコードとレジェンドの間に位置する4ドアハードトップセダンの「アコードインスパイア」を発売。
その名のとおりアコードの派生車ですが、より上級なセダンとして開発されました。
ボディは全長4690mm×全幅1695mm×全高1355mm、ホイールベースは2805mmとロングホイールベースの伸びやかなデザインが特徴で、低く構えた高級感のあるフォルムとなっています。
エンジンはFF車として理想的な前後重量配分とするために、フロントミッドシップに縦置きに搭載。
2リッターと2.5リッター直列5気筒を採用したことで、アコードのスポーティ路線と異なる多気筒化による高い静粛性と滑らかな回転の上昇を実現しました。
ほかにも内装に天然木、本革、エクセーヌなど上質な素材を惜しみなく使うことで、本物指向の上品で贅沢な味わいを表現。まさにバブル経済絶頂期の賜物です。
アコードインスパイアは洗練されたデザインと、優れた走りからスマッシュヒットを記録。
1992年にはボディを拡大して3ナンバー専用車となる「インスパイア」を追加し、1995年には2代目がインスパイアに統一されてさらに代を重ね、5代目が2012年まで販売されました。
※ ※ ※
セダン全盛期のモデル振り返るとどれも個性あふれるクルマで、全盛期というのは時代の潮流だけではなく、魅力的な車種が数多くあることで形成されたのかもしれません。
そうなると、売れないから作らないという現在の流れでは、セダン復活はかなりハードルが高いといえます。
欧州では日本よりもセダンが人気で、ラインナップも豊富ですが、直近ではコンパクトSUVのシェア拡大が顕著になってきました。
今後、日本で買えるセダンは、ますます減少してしまうのではないでしょうか。
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