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足まわりの進化がスゴいことに! カメラと連動するハイテクサスペンションとは?

くるまのニュース / 2021年3月11日 17時10分

メルセデス「Sクラス」が先鞭をつけた「カメラ連動アクティブサスペンション」。そこで、今後、自動運転とも連動して進化と普及が進みそうな「カメラ連動アクティブサスペンション」を解説。合わせて、メーカーごとにどんな機能なのかもご紹介します。

■サスペンションがカメラと連動?

 クルマのハイテクといえば先進安全技術や電動化技術に注目が集まりがちな状況ですが、実はサスペンションも大きく進化しています。

 2013年にメルセデス・ベンツが「Sクラス」などに搭載しはじめた新時代のサスペンションは、搭載されるカメラによって路面状況をクルマが検知、ダンパーの減衰力などを自動制御してくれる「アクティブサスペンション」のさらに先を行く技術です。

 今ではアウディやシトロエン、トヨタも似たような機能を持たせたサスペンションを開発しており、さらに普及しそうな気配を見せています。

 そこで今回は、この「カメラ連動型アクティブサスペンション」を解説。さらにメーカーごとに、その特徴的な機能や仕組みを紹介します。

※ ※ ※

 まずは、この「カメラ連動型サスペンション」の凄さを理解するためにも、ベースとなる「アクティブサスペンション」について改めて理解しておくと分かりやすいと思います。

 アクティブサスペンションはクルマの各部に取り付けられたセンサーからの情報によって、サスペンションのセッティングや車体の姿勢を受動的に電子制御するものです。

 多くのアクティブサスペンションは油圧回路と空気バネを用いており、その歴史は意外に古く、1950年代にはシトロエンで開発がスタートしていましたが、日本でメジャーになったのは「フルアクティブサス」をセールスポイントにして1989年に登場したニッサン「インフィニティQ45」からです。

 また最高峰のレースであるF1の世界でも、1990年代の始めにはアクティブサスペンションの優位性が認められて普及。ダンパーとスプリングを油圧制御することで、優れた路面追従性によるコーナリング性能の向上と、姿勢制御によってストレートでの車速向上を両立しました。

 しかし、開発費の高騰やレギュレーションに違反する使い方が懸念され、1993年に禁止されました。

 公道を走行するクルマの場合は路面の凹凸やコーナリングを検知し、ダンパーやバネのセッティングを制御して、安定した姿勢と優れた乗り心地を目指して、アクティブサスペンションが開発されましたが、次第に各メーカーとも開発から撤退。

 しかし、近年は再び脚光を浴びることになりました。

 今までのアクティブサスペンションは、運転席から任意に選んだモードによって減衰力を変化させたり、路面から受ける衝撃や振動を検知し、減衰力やバネレートを自動制御するというものです。いわば衝撃や振動を上手にいなすための受身の技術でした。

 ところが、最新のカメラ連動型アクティブサスペンションは、ここからさらに一歩踏み込み、搭載されるカメラで路面の状況を検知し、衝撃が入力される前に最適な減衰力に制御するシステムとなっており、さらにスムーズな乗り心地を実現しました。

 これには、安全装備と連動したカメラの搭載、路面の凸凹を検知するスキャニング能力、それらの情報から瞬時にサスペンションの減衰力調整をおこなう処理能力といった高度な性能が求められます。

 そうした技術の根幹であるカメラの分解能とコンピュータの演算速度の向上によって、さまざまなメーカーで採用できるようになりました。

■名称は違えど同じ「カメラ連動式アクティブサスペンション」

 次に具体例として、すでに登場している「カメラ連動型アクティブサスペンション」をメーカーごとの特徴を踏まえて紹介します。機能を中心に各メーカーの個性が出ている印象です。

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●メルセデス・ベンツ「マジックボディコントロール」

 この、カメラ連動型アクティブサスペンションの先鞭をつけたのがメルセデス・ベンツで、高級車に求められる「上質な乗り心地」を追求するために開発されました。

 世界初のカメラ連動型アクティブサスペンションが登場したのは2013年に誕生した6代目「Sクラス」や、さらに上級シリーズの「AMG」モデルで「マジックボディコントロール」という名称でオプション設定されました。

 このマジックボディコントロールは、フロントウインドウ内側に設置された「ステレオマルチパーパスカメラ」に、前方の路面の詳細な凸凹を検知する「ロードサーフェススキャン」機能を搭載。

 事前に最適なスプリングレートとダンパーの減衰力を自動制御してくれるというものになっており、2020年に誕生した7代目ではさらに精度が高められ、最大で時速180kmまで対応可能となりました。

 さらにマジックボディコントロールには、コーナリング中の遠心力に逆らうように車体の姿勢制御をおこない、車体はフラットな姿勢を保ち続けるという、まさに「マジック」なサスペンションの動きを実現させています。

●アウディ「AIアクティブサスペンション」

 アウディにもカメラ連動型アクティブサスペンションが登場しています。それが2018年に誕生した4代目「A8」に、翌2019年に追加設定された「AIアクティブサスペンション」(現在は欧州の一部仕様のみ)です。

 アウディのシステムは、各車輪に48Vモーターと複数のギアなどを内蔵しており、1秒間に18回送信されるフロントカメラからのデータをもとに前方路面の凸凹を検知。

 クルマが実際にその凸凹を通過する前に最適なストローク量へと制御するというものです。

 しかも制御するまでの時間は千分の数秒という早さで、クルマの揺れや振動、コーナリング中のロール、加速やブレーキなどによる車体変化まで抑え込んでいます。

 もちろん任意でも好みのモードに設定変更でき、荒れた路面でもスムーズに走り、かつダイナミックなハンドリングも楽しめるようになっています。

●DS(シトロエン)「DSアクティブスキャンサスペンション」

 快適な乗り心地にこだわり続けているシトロエンは、空気ばねと油圧シリンダーを組み合わせた「ハイドロニューマチック・サスペンション」を開発したメーカーとして有名です。

 このハイドロニューマチック・サスペンションの進化系として、2016年に発表されたのが「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション」で、サスペンションが沈みきった状態でも機能する第2のダンパーを内蔵し、ゆっくりかつ強力に減衰することで、サスペンションが縮みきる状態=底つき感を感じさせずに、路面の大きな凸凹などの大入力に対しても快適な乗り心地を実現させています。

 そして、プログレッシブ・ハイドローリック・クッションのさらなる進化系として誕生したのが「DSアクティブスキャンサスペンション」です。

 システムはフロントガラスに装着されたカメラで前方の路面を常時ハイスピードスキャンし、通過する前に路面の凸凹を識別し、減衰力をリアルタイムで最適に電子制御するものです。

 現在はシトロエンの高級ブランドとして独立したDSのモデルに採用されていますが、今後は同様のシステムを同じスランティス・グループ(PSA+フィアット・クライスラー連合)で使用する可能性は高いと思われます。

 しかも姿勢制御などの機能を省いたことで、それほど複雑なシステムは必要なく、安価に搭載できるメリットもあります。

※ ※ ※

 各メーカーとも乗り心地や走行安定性の向上は、日進月歩で進化しているといえます。

 これまでは路面の状況をサスペンションの入力から検知して各部を制御する「フェードバック制御」でしたが、いまでは工学的に検知して、事前に制御する「フィードフォワード制御」と、それを補完するフィードバック制御が組み合わされるようになりました。

 また、もともとは高額なシステムも、普及によってコストダウンが図られ、より安価なクルマでも搭載されることになるでしょう。

 動力性能や燃費性能などと異なり数字では見えにくい技術ですが、より安全なドライブに寄与するということです。

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