一度見たら忘れられない!? 個性的なスタイルがクセになるクルマ5選
くるまのニュース / 2021年3月14日 6時10分
さまざまなクルマが販売されるなか、見た目が個性的すぎて、お世辞にも「流麗」や「スタイリッシュ」とは呼べないデザインのクルマもあります。ブサイクなのかカッコイイのか判断が難しいですが、超個性的なスタイリングのクルマを集めてみました。
■個性的すぎるビジュアルが逆に魅力的!?
数多くのクルマが登場してくると、なかにはお世辞にも「流麗」や「スタイリッシュ」とは違うベクトルのデザインを採用したモデルも登場します。
しかし不思議なことに、そういったクセが強いクルマのほうが、記憶に残っていたりするものです。
そこで今回は、強烈な個性を放つスタイリングを採用したクルマを5台ピックアップして紹介します。
●日産「レパードJ.フェリー」
バブル期(1980年代後半から1990年代初頭)は、国産メーカーが海外で自社の高級ブランドを展開するのが流行り、日産も「インフィニティ」ブランドを立ち上げ、新たな上級ミドルクラスのセダンの投入が期待されていました。
そんな期待を背負い、高級パーソナルカーとして一時代を築いた日産「レパード」が1992年に3代目へフルモデルチェンジ。
新たに上級4ドアサルーンとして生まれ変わり、名前も「レパードJ.フェリー」へと変更されました。
エンジンは、当時の「シーマ」にも搭載された4.1リッターV型8気筒エンジンと、3リッターV型6気筒エンジンを搭載。
また、イタリアの名門フェラーリやマセラティでも採用されていたポルトローナ・フラウ社製の本革シートをオプションで用意するなど、パワーユニットも内装も贅沢なモデルでした。
しかし、全長4880mm×全幅1770mm×全高1390mmのサイズを誇るボディは、曲線を多用しただけでなく、尻下がりのスタイリングを採用。
日産としてはアメリカならではの高級車を目指したのですが、北米市場ではウケたものの日本では大不評となり、わずか4年で生産終了となってしまいます。
当時はトランク部分が水平、もしくはリアに向かって上がるスタイルが主流だったなかで、尻下がりのレパードJフェリーは強烈な個性を発揮していました。
●ホンダ「CR-Xデルソル」
バブル期前夜の1983年に「FFライトウェイトスポーツ」という新ジャンルを生み出したスポーティなハッチバック「バラードスポーツCR-X」。
当時は「シビック」の姉妹車である「バラード」の派生車種というポジションでしたが、両車よりも先行してデビューし、ファストバッククーペスタイルが若者を中心に大人気となりました。
実用性よりスポーティなルックスを優先させたハッチバックは、1987年に2代目へとモデルチェンジしたことでさらに人気を高めていきます。
1980年代の終わりといえばF1で圧倒的な強さを誇るホンダのイメージもあり、1989年に追加されたVTECエンジン搭載車はFFライトウェイトスポーツの代表格として、若者のデートやスポーツ走行にも最適な1台となっていました。
しかし、ここで思わぬ事態が発生。それが1989年に登場したユーノス(マツダ)「ロードスター」の大ヒットによって誕生した「オープンカー」ブームです。
これを受けて、CR-Xは1992年には3代目へと進化する際、それまでのスポーツ路線を捨てて「トランストップ」と呼ばれる電動オープントップ機構(手動脱着式もあり)を採用した2シータータルガトップに転向し、名前も「CR-Xデルソル」へと改められてスペシャリティ路線へと変更されました。
全長4005mm×全幅1695mm×全高1255mmの手軽なホンダ製オープンは、170馬力を誇る1.6リッターVTECエンジン(SiR)を搭載しています。
オープンカーブームに乗ってCR-Xデルソルも大ヒットするはずでしたが、重いオープントップ機構搭載によってCR-Xシリーズでもっとも大切な軽量化と、ボディ剛性の低下は否めず、スポーツ性能を犠牲にしてしまったことでどっちつかずのキャラクターとなってしまいました。
いまでこそ電動オープントップはオープンカーの定番となりましたが、当時は手動の幌がメインで、新しいギミックが市場的には受け入れにくかったかもしれません。
それでも座ったまま電動スイッチひとつでルーフがオープンになる様子は、非常に個性的だったといえます。
●スバル「アルシオーネ」
スバルブランド唯一のリトラクタブルヘッドライト採用車として、一部では熱狂的なファンがいる2ドアクーペが「アルシオーネ」です。
1989年に誕生した「レガシィ」以前から4WDを乗用車にも採用してきたスバルですが、このアルシオーネにも1.8リッターターボFF/4WDモデルのほかに、2.7リッター4WDモデルがラインナップされていました。
1980年代の日本メーカーは、世界一位の市場規模を持つアメリカ市場でいかにシェアを拡大するかに力が注がれていた時代で、スバルもアメリカ市場を睨み、アルシオーネもスポーティなウェッジシェイプ(クサビ形)ボディを採用。
そのスタイリングは空力性能が追求され、現在でも不思議な近未来感を感じさせるデザインとなっています。
また、前後の駆動トルク配分を自動制御するフルタイム4WDシステムの「ACT-4」やエアサスペンション、車速感応式パワステなど、新技術も投入されていました。
しかし全長4510mm×全幅1690mm×全高1335mmの直線的なボディシェイプが当時は奇抜と評され、また高めに設定された新車価格の影響もあり、販売面では苦戦。
とくに前後のオーバーハングが長く、あまりに直線的なラインはいまでこそ新鮮ですが、当時としては好き嫌いが分かれたといえます。
それでも当時としては、それまでクロカンを中心としたヘビーデューティ用のイメージが強かった4WDをクーペ(乗用車)に採用したことで、1989年のレガシィのプラットフォームにも影響を与え、のちに美しいスタイリングで登場した「アルシオーネSVX」へとつながる道をもつくりました。
■世界でもっともアグリー(醜い)なクルマとは?
●フィアット「ムルティプラ」
PSAグループとの合併で新たに「ステランティス」グループを結成したフィアットは、イタリア最大の自動車メーカーで、フェラーリやアルファロメオ、ランチアやマセラティなども傘下に持つ大企業です。
フィアットとしてはいわゆる大衆向けのクルマがラインナップの中心となりますが、何年かに一度、突如としてキテレツなモデルを登場させることがあります。
フィアット「ムルティプラ」
そのなかでも、「世界でもっともアグリー(醜い)なクルマ」として認知されているのが2003年に登場した「ムルティプラ」です。
見た目の奇抜さで有名ですが、じつは合理的なパッケージを採用した結果のスタイリングだったことはあまり知られていないようです。
まず最大の特徴ともなっているスタイリングですが、全長3995mm×全幅1875mm×全高1680mmという3サイズからして他に類を見ません。
トール系コンパクトハッチ程度の全長に全幅だけ1875mmになっているのは、前後席ともに3名ずつ独立したシートで乗車可能の6人乗りのMPV(マルチパーパスビークル=多目的車)を目指した結果。
車重も1380kgとそれなりにあるのに、搭載されるパワーユニットは103馬力の1.6リッターNAエンジンで、しかも5速MTのみの設定という不思議な組み合わせでした。
さらにロービームとハイビームを分離し、ハイビームは1段高くなったフロントウインドウ下に配置し、間違いなく1度見たら忘れられないスタイリングに仕上がっています。
見た目こそ奇抜ですが、意外にも乗ると楽しいのはムルティプラの隠れた魅力のひとつです。
前席でも3人掛けでき、高い全高のおかげでウインドウ自体も大きく視界は良好なので、仲間とワイワイ出かけたりするときは予想以上に盛り上がるクルマといえるでしょう。
個人で乗るにはさすがに勇気がいりますが、これだけ時間が経過しても最新モデル以上の注目を集めるクルマはほかにありません。
なお、2004年のビッグマイナーチェンジで、個性的なフロントフェイスはオーソドックスなデザインに改められてしまい、後に日本では醜いと揶揄された前期型の方が人気となる皮肉な結果となりました。
●スズキ「X-90」
軽自動車をメインにコンパクトカー中心のラインナップを誇るスズキは、アイデアあふれる個性的なモデルを誕生させるメーカーでもあります。そのなかでも、もっとも不思議な1台として語り継がれている珍車が「X-90」です。
もともとは1993年の東京モーターショーでコンセプトカーとして登場したのですが、好評だったため1996年には市販化に踏み切ったものの、さっぱり売れなかったモデルです。
初代「エスクード」をベースに、2シーター&2ドアのノッチバッククーペスタイルを採用したクロスオーバーSUVで、全長3710mm×全幅1695mm×全高1550mmのボディサイズに100馬力の1.6リッター直列4気筒エンジンを搭載。
駆動方式は通常はFRで、任意で4WDに切り替えができるパートタイム式4WDを搭載し、さらにボディはモノコックではなく、クロカン車などで採用される丈夫なラダーフレームを採用するなどエスクード譲りのオフロード性能を持っていました。
これだけ聞けば無骨なデザインに仕上げればタフなオフローダーが完成しそうですが、なぜか丸みを帯びたラインで構成されるズングリムックリしたスタイルで、ヘッドライトも楕円形のデザインを採用。
さらに脱着可能なグラスルーフを持つTバールーフまで採用するなど、かなり不思議なモデルになってしまい、販売不振によりわずか2年で終了してしまいました。
※ ※ ※
かつては奇抜なデザインのクルマが当たり前のように販売されていましたが、似たようなコンセプトのクルマばかりになってしまった現在からすれば、当時はそれだけの個性を認める余裕がメーカーにあったということなのかもしれません。
むしろ完成度の高いプラットフォームを各社が開発している現在だからこそ、「コンセプト命」の超個性的なモデルが登場しやすい環境になりつつあるともいえ、実用性よりロマンを感じさせてくれるクルマもたまには登場してほしいものです。
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