22年3月生産終了! ホンダ「S660」は年内受注終了もあり得る? 買うなら「早期決断」重要な訳
くるまのニュース / 2021年3月12日 18時10分
ホンダは「S660」の生産を2022年3月で終了すると2021年3月12日に発表しました。2015年の発売以降、さまざまな特別仕様車やコンプリートモデルの登場も話題となりましたが、これまでどんなモデルが登場したのでしょうか。また、最後の特別仕様車に込められたこだわりとはいったい何でしょうか。
■無限やモデューロが手掛けたコンプリートモデルも話題に
本田技術研究所50周年記念の新商品提案コンペを経て、2015年に登場したミドシップ軽スポーツカーが「S660」です。LPL(=開発責任者)が26歳(発売当時)で、若手が中心の開発チームも話題となりました。
みんなが楽しめる等身大モデルというコンセプトは1991年に登場した同社「ビート」と共通ですが、ビートは「ミドシップアミューズメント」と呼ばれていたのに対し、S660は「スポーツカーの軽自動車」を目指し、ハード面に関しては本物を目指していました。
そのメカニズムを簡単に説明すると、強靭なグリップの横浜ゴムのハイグリップタイヤ「ADVAN NEOVA」を使いこなせるボディ/シャシを専用開発。
エンジンはN-WGN用がベースの660ccターボですが、高回転化対応やターボの変更などほぼ専用設計。トランスミッションは軽自動車初となる6速MT(後にN-VANやN-ONEにも水平展開)を新開発と、車両全体がこだわりの塊でした。
実際に乗ってみると、ターボとはいっても660ccなので絶対的なパフォーマンスはそれなりですが、コーナリング性能はミドシップレイアウトや軽量高剛性ボディも相まって、タイトなワインディングなどでは1クラス上のスポーツカーを追い回すポテンシャルを持ちます。
さらに街中で交差点ひとつ曲がるだけで「ニヤッ」と笑顔になれるハンドリングと、まさに走りの楽しさはボディの大きさやパワーではないことを実感できる1台です。
小さいのに本格的、さらに価格は(スポーツカーとして見ると)リーズナブルと、こんなマイクロスポーツカーは世界中を探しても日本にしか存在しません。
いつもは横のつながりがイマイチなホンダですが、S660は連携の良さも特徴でした。
例えば、純正アクセサリーの企画・開発をおこなうホンダアクセスの「モデューロ」やワークスチューナーの「無限」は、機能性/ドレスアップ/使い勝手を向上させる多彩な商品を設定。
シッカリしたベースをホンダが作り、そこにアクセス/無限が嗜好や用途に合わせて色づけるといった役割分担が上手にできていたように感じます。
その流れはモデルラインアップにも表れていました。
ホンダがリリースした特別仕様車は「CONCEPT EDTION(2015年)」、「Bruno Leather Edition(2017年)」、「#komorebi edition(2017年)」、「Trad Leather Edition(2018年)」と、主に内外装コーディネイトが主でしたが、モデューロと無限は各々のキャラクターを活かしたモデルを用意。
無限はモータースポーツ直系のフットワークを採用したカスタマイズを楽しむベースとなるコンプリートモデル「MUGEN RA(2016年:限定660台)」、モデューロはプレミアムマイクロスポーツをコンセプトに機能/デザイン/質感をプラスしたコンプリートモデル「モデューロX(2018年:通常販売)」を開発しました。
そんなS660ですが、「2022年3月で生産終了」と発表されました。6年で累計3万台以上(月平均400台ちょっと)という販売台数はNシリーズと比較にはなりませんが、2シーターかつ荷物もほとんど積めない特別なモデルということを考えれば大健闘でしょう。
ここ最近の日本のスポーツカーのモデルサイクルは約10年、そういう意味ではS660はモデルライフ後半に入ったばかりといえますが、なぜこのタイミングでやめるのでしょうか。
それは年々厳しさを増していく法規制のためです。ちなみに直近だと騒音規制、燃費規制、衝突被害軽減ブレーキ義務化、衝突安全(ポール衝突)などが挙げられますが、ほぼ専用設計のS660を対応させるには、大幅な変更が必要となってしまい、そこまでお金を掛けられない事情もあるようです。
■早期の受注終了もあり得る? 電動版S660としての復活を望む!
この発表に合わせて事実上のファイナルバージョンといえる特別仕様車が設定されました。
それが「モデューロX バージョンZ」です。「Z」はアルファベットの最後でこれより上位の物は存在しないことから、最終/最高/究極を意味します。ちなみに前述のビートの最後の特別仕様車も「バージョンZ」でしたが、これは偶然ではなく意識したそうです。
通常のS660モデューロXをおさらいすると、ホンダアクセスが企画・開発をおこなうコンプリートカーシリーズのフラッグシップで、走りはもちろん内外装も含めてS660シリーズのフラッグシップを担う“大人向け”のトータルコーディネイトが特長の1台です。
走りの部分は実効空力を目指した「エアロダイナミクス(グリル一体型専用フロントバンパーとリアロアバンパー、専用ガーニーフラップ付アクティブスポイラー)」と、走る道/天候/ドライバーを選ばない懐の深い「フットワーク(専用サスペンション、専用アルミホイール、スポーツブレーキパッド&ドリルドローター)」、そして大人の琴線に触れる「内外装(ボルドー×ブラックの専用シート/ステアリング、チタンシフトノブ)、などを採用しています。
個人的には世界最小のグラントツーリングカーだと思っています。
2021年3月12日に発売された「S660 Modulo X Version Z」
バージョンZはこれらにプラスして、ファイナルモデルらしい特別感をプラスさせたコーディネイトが特徴です。開発者は「よりストイックで非日常に憧れるユーザーへ」と語っています。
エクステリアはバージョンZ専用のソニックグレー・パールのボディカラー(定番のプレミアムスターホワイトパールも用意)とブラッククローム調のエンブレム、さらにはステルスブラック塗装のアルミホイール(通常はブラックスパッタリング)、ブラック塗装の専用ガーニーフラップ付アクティブスポイラーを採用。
インテリアはカーボン調のインテリアパネル(メーターバイザー/助手席エアアウトレット/センターコンソール)、ラックススエード&合皮のドアラインニングパネル、専用シートセンターバック、専用アルミ製コンソールパネル(バージョンZロゴ入り)を装備。
内外装共にヒカリモノを抑えたことで、モデューロXの機能美がより際立って見えると思います。
しかし、「台数限定ではないし、あと1年あるから大丈夫」といっても安心はできません。
S660はほかのモデルよりも生産に手間がかかるので、1か月に作れる台数には限りがあります。
つまり、注文数によって本来の予定よりも早い段階でオーダーストップになる可能性もありえます。手に入れるには早めの決断をしたほうがいいかもしれません。
個人的にはS660の生産終了後、電動パワートレインを搭載し、「EV-STER(S660のデザインモチーフとなった次世代電動スモールスポーツコンセプトモデル)」として再登場するという奇跡を期待したいところです。
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