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隣接県で10円/L差も!? ガソリン価格の地域差なぜ存在?「輸送費だけじゃない」理由とは

くるまのニュース / 2021年3月23日 9時10分

クルマのガソリン価格が地域ごとに大きく異なることは、マイカーを所有する人の間でよく知られている事実ですが、差が生じてしまう理由はいったい何でしょうか。一般的には、ガソリンの輸送コストが販売価格に上乗せされているといわれていますが、話はそれだけではないといいます。いったいどういう状況なのでしょうか。

■遠方のガソリンスタンドでよくある「違和感」

 クルマで遠くへ移動し、出かけた先のガソリンスタンドで給油したとき、「おや?」と思ったことはないでしょうか。日常的にガソリンを入れている地元のガソリンスタンドに比べて、値段が高い(安い)ことがあるのです。この違いはなぜ生まれるのでしょうか。

 もちろん、多くの人はガソリンスタンドごとに価格が異なることを理解していますから、数円の違いがあっても不思議には思わないでしょう。

 しかし、都道府県ごとの平均価格を見ると安い地域と安い地域でレギュラーガソリン1リッターあたり10円以上の価格差がついていることがあります。

 1リッターあたり10円といえば、満タンで50リッター入れると500円の差がつきます。これは「わずかな差」とは思えない差ではないでしょうか。

 資源エネルギー庁が石油製品小売市況調査としてまとめて令和3年(2021年)3月17日に発表した資料をみると、全国平均価格はレギュラーガソリン1リッターあたり147.3円でした(以下、ガソリン価格はすべてレギュラー価格)。

 たとえば関東甲信越を見ると、価格がもっとも安いのは埼玉県で143.1円。しかし県境の一部が隣接している長野県では、153.2円と10円以上の差が生じています。

 果たして、この地域による価格差の理由はどこにあるのでしょう。

 一般的には、原油からガソリンを精製する製油所が近くにある地域ではガソリン価格が安くなり、遠くなると高くなるといわれています。その理由は輸送コスト。製油所からガソリンスタンドまで運ぶコストが価格に上乗せされるというわけです。

 たとえば長野県には製油所がなく、神奈川県や千葉県にある製油所からまず鉄道を使って長野県内の「油槽所」と呼ばれる場所に運ばれ、その後各地のガソリンスタンドにタンクローリーで運ばれます。

 長野県は広範囲かつ山間部も多く、タンクローリーで運ぶにも手間がかかるので、それも輸送コストも上乗せされ、ガソリン価格が高くなりがちというわけです。

 ガソリン平均価格が安めの千葉県(143.8円)、宮城県(142.6円)、和歌山県(144.3円)、岡山県(144.1円)などは県内に製油所があります。

 一方、153.2円の長野をはじめ、山形県(154.0円)、福井県(150.4円)、島根県(151.0円)、長崎県(153.7円)、鹿児島県(155.2円)など特にガソリン平均価格が高い地域は県内に製油所がないため、一般的にいわれる「製油所から遠いから高い」という理論が当てはまるといえるでしょう(長崎や鹿児島は運ぶのにさらに手間がかかる離島などの影響もある)。

 東京は148.1円と製油所が近いわりに周囲の地域よりも平均価格が高めですが、それはガソリンスタンドの土地代が高いなど都心部での特殊な環境を反映していると考えられます。

■輸送費だけじゃない? ガソリン価格に地域差ある理由とは

 しかし、話はそれだけではないようです。

 資源エネルギー庁からは石油製品に関する卸売価格の調査もおこなっており、都道府県ごとの平均価格が公表されています。

 その最新データ(令和3年1月分なので前出の小売市況調査とはタイミングが若干ずれている)を見ると、埼玉県の卸売価格平均はレギュラーガソリン1リッターあたり108.4円。

 いっぽう長野県は110.8円と、価格差があるにはあるものの、販売価格ほどの開きはないから不思議です。

 ガソリン小売価格が安めの千葉県、宮城県、和歌山県、岡山県はそれぞれ107.8円、109.4円、109.2円、108.0円。一方、高めだった山形県、福井県、島根県、長崎県、鹿児島県はそれぞれ109.8円、109.8円、109.6円、112.8円、109.7円。

 比べてみると、長野県と同様に卸売価格には販売価格ほど大きな価格差がないことがわかります。仕入れ値には輸送コストも含まれています。

 つまり、一般論としてガソリン価格の高い地域は輸送コストを反映した仕入れ値も高めではあるものの、その価格差がそのまま販売価格に反映されているわけではないということです。

 むしろ、仕入れ値には小売価格ほど大きな地域ごとの価格差はないといっていいでしょう。

ガソリン価格が地域ごとに違う理由とはガソリン価格が地域ごとに違う理由とは

 販売価格は、卸売価格以上に地域ごとの価格差がついているということになります。

 果たして、大きな価格差のある地域が存在する理由はどこにあるのか。

 その答えは一概に結論付けられるものではありませんが、ふたつの理由が考えられます。

 ひとつは「販売量の違い」。販売価格が高い県は山間部や過疎地域など人口の少ない地域も多く、そういった地域ではガソリンスタンドあたりのガソリン販売量が少なくなります。

 そのため店の経営を成り立たせるためには、利益率を上げるしかありません。そこでガソリン価格が高くなりがちなのです。

 もうひとつ、「競争原理が働きづらい」ともいえそうです。山間部や過疎地域にはもともとガソリンスタンドの数が少なく、隣り合うガソリンスタンド同士が激しい価格競争をしている都市部とは事情が異なるのです。

 そういった要因の結果として、安い地域に比べるとレギュラーガソリンが1リッターあたり10円以上も違うという状況が生じてしまうと考えられます。

※ ※ ※

 ガソリンスタンドの数はここ25年ほどで約半減したという統計があります。クルマの平均燃費が向上したことで、以前に比べてガソリン消費量が減りました。

 そのためガソリンスタンドのおかれている状況が厳しいのは都市でも山間部など人口の少ない地域でも変わりませんが、ガソリン価格が高い地域には輸送コストだけでは片づけられない事情があるといっていいでしょう。

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