21世紀に登場したのにシンプル過ぎ? いろいろな理由で簡素な車3選
くるまのニュース / 2021年3月22日 16時10分
昭和の時代にはエアコンやパワーステアリング、パワーウインドウなどがオプションであったり、そもそも設定されていないクルマはたくさんありました。一方で、割と最近に発売されたモデルでも比較的簡素なモデルが存在。そこで、さまざまな理由でシンプルなクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
■装備が簡素だけど好感が持てるクルマを振り返る
現在販売中の乗用車では、比較的安価なモデルでも快適装備や安全装備が充実しています。一方で、昭和の時代のクルマは、エアコンやパワーステアリング、パワーウインドウなどはオプションとなっていたり、そもそも設定されていないモデルも数多く存在していました。
実際にそうした装備は高額だったことから装備しないことで車両価格を抑えていましたが、近年は製造コストも安くなったことから、乗用車ならばひととおり装備しています。
そもそもいくら安価な車両価格でも、もはやエアコンやパワーステアリングが付いていなければ競争力は無い時代だといえます。
しかし、21世紀に発売されたクルマのなかでも、さまざまな理由で簡素な装備のモデルが存在。そこで、比較的最近のモデルでもシンプルなクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●MUJIカー1000
現在まで無印良品がリリースした唯一のクルマである「MUJIカー1000」
余計な加飾を廃してシンプルなデザインをコンセプトとした生活雑貨や日用品が高く支持され、近年は衣類や食料品も人気となっている店舗といえば「無印良品」です。
2004年からは「無印良品の家」を販売するなど話題となり、取り扱う商品も拡大してきましたが、かつて、無印良品がクルマの販売をおこなっていたのはあまり知られていません。
それが、2001年に発売された「MUJIカー1000」です。
MUJIカー1000は日産との協業で開発されたモデルで、2代目「マーチ」の3ドアハッチバック/1リッターエンジン車をベースに製作。
購入希望は無印良品のホームページを通じて受け付け、1000台の限定販売となっており、通常の日産車と同じく納車は日産ディーラーの店舗でおこなわれ、保証や整備も日産車に準じていました。
外観はマーブルホワイトの専用ボディカラー1色のみで、塗装されていない素地のバンパー、専用デザインのフロントグリル、ブラックの電動格納式ドアミラー、スチールホイールなど、無印良品が販売する商品と同様のシンプルさをコンセプトとしたデザインとなっています。
また、装備はオーディオ、マニュアルエアコン、両席エアバッグなど必要最低限ものが搭載されていながら、価格は93万円(消費税含まず)と安価に設定。
さらに、MUJIカー1000の売買契約が成立すると、無印良品オリジナルの14型折りたたみ自転車がプレゼントされる特典が用意されるなど、かなりお買い得なモデルでした。
なお、無印良品のクルマはこのMUJIカー1000以降、現在まで新たに企画されていません。
●トヨタ「86 RC」
素地のバンパーにスチールホイールが意外と迫力を醸す「86 RC」
2012年に、スバルとトヨタが共同開発したFRのコンパクトクーペ、トヨタ「86」、スバル「BRZ」が発売されました。
どちらのモデルも外装デザイン以外の基本的な部分は共通で、外観はやや長めのフロントノーズにショートデッキと正統派FRスポーツカーのフォルムに、ボリューム感のある前後フェンダーやシャープなフロントマスクが特徴的です。
エンジンは最高出力207馬力(MT車)とパワフルな2リッター水平対向4気筒DOHC自然吸気を搭載し、サスペンションはフロントにストラット、リアにダブルウイッシュボーンを採用して優れたコーナーリング性能を発揮するなど、発売と同時に人気となります。
そして、発売当初、86にはモータースポーツベース車である「86 RC」がラインナップされました。
レース用に仕立てることを前提にエアコン、スピーカー、カップホルダー、バニティミラーなど、競技に必要ないものは省かれ、さらに未塗装のバンパーを装着し、ホイールもスチール製となっています。
価格は199万円(消費税8%込)とかなり安価でしたが、エアコンはオプションでも設定されず、普段使いは想定していないストイックなモデルです。
現在、86 RCはラインナップされていませんが、すでに生産を終えたBRZには最後までモータースポーツベース車の「RA Racing」が設定され、ロールケージやオイルクーラー、4点式シートベルトなど競技に必要なものを標準装備。マニュアルエアコンも搭載しており、普段使いも可能でした。
■割り切り方が日本車ではありえない輸入コンパクトカーとは!?
●ルノー「トゥインゴ S」
ベーシックなモデルながら走る楽しさは欧州流の「トゥインゴ S」(画像は特別仕様車)
1993年に、ルノーのエントリーモデルとして初代「トゥインゴ」が誕生。1995年から日本にも正規輸入が始まると、低価格で個性的なデザインからヒットしました。
現行モデルは2014年に登場した3代目で、スマート「フォーフォー」の兄弟車として開発され、エンジンをリアに搭載するRRの4シーター5ドアハッチバックとなっています。
かつて装備と価格のバランスに優れた「トゥインゴ ZEN」がラインナップされていましたが廃止され、2020年2月に新たなベーシックグレードとして「トゥインゴ S」が発売されました。
ボディサイズは全長3645mm×全幅1650mm×全高1545mmとコンパクトで、車重も950kgと軽量です。また、RRの特徴を生かしてフロントタイヤの切れ角が大きくなっており、最小回転半径は4.3mを実現するなど、日本の道路事情にもマッチしています。
エンジンは最高出力73馬力の1リッター直列3気筒DOHC自然吸気エンジンを搭載し、トランスミッションは5速MTのみとされ、アンダーパワーながらも軽量な車体とMTを駆使することで、思いの外キビキビと走らせられます。
装備は比較的充実しており、ひととおりの快適装備以外にも、クルーズコントロール、サイドエアバッグ、ディスプレイオーディオなどを標準装備。
一方で、リアサイドウインドウは下がらず、5cmほど横に開くチルト式とするなどシンプルな設計です。
こうした手法は欧州のAセグメントモデルでは珍しくなく、フォルクスワーゲン「up!」も同様で、フィアット「パンダ」もリアにパワーウインドウを装備せずに手動とするなど、日本の軽自動車とは設計思想が異なっているのが欧州流といえます。
トゥインゴ Sの価格(消費税込)は181万5000円で、現行モデルの海外ブランド車では100万円台で手に入る唯一のMT車です。
※ ※ ※
最後に紹介したトゥインゴはほかにもユニークな設計を採用しており、ウオッシャー液の補充をおこなう際にはボンネットを外す必要があります。
そもそもフロント部分には収納スペースが無く、ウオッシャー液のタンク以外にブレーキフルードのタンク(マスターシリンダー)や冷却水のタンク、バッテリーなど収まっているだけです。
おそらく、点検以外に開ける機会が無いことからこうした機構を採用したと思われますが、やはり日本車では考えられない設計思想だといえるのではないでしょうか。
ちなみにボンネットの材質は樹脂なので軽く、慣れてしまえば外すのは難しくありませんが、ボディを傷つけそうなのが心配です。
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