いま流行りの車を昭和の時代に先取り? ある意味先進的な車5選
くるまのニュース / 2021年3月23日 6時10分
現在、日本で人気があるクルマのジャンルといえば、クロスオーバーSUVや軽ハイトワゴン、ミニバンが挙げられますが、こうしたモデルには元祖となるクルマが存在。そこで、昭和の時代に誕生した先進的なモデルを、5車種ピックアップして紹介します。
■昭和に誕生した先進的すぎるクルマを振り返る
日本の自動車市場では、その時代によって流行のクルマが変化しており、現在はクロスオーバーSUVや軽ハイトワゴンがヒットしており、ミニバンがファミリーカーの定番として君臨しています。
こうしたクルマはセダンやステーションワゴン、クーペと違い、比較的新興のジャンルといえますが、その元祖といえるクルマは意外と歴史的に古いモデルでした。
そこで、昭和の時代に誕生した先進的なモデルを、5車種ピックアップして紹介します。
●ホンダ「ライフ ステップバン」
軽ハイトワゴンのスタイルをおよそ50年前に確立していた「ライフ ステップバン」
近年、日本でもっとも売れているクルマといえば、軽ハイトワゴンや軽スーパーハイトワゴンと呼ばれるモデルですが、その元祖といえるモデルはおよそ50年前に誕生しました。
ホンダは1971年に、大ヒットを記録した軽乗用車「N360」シリーズの後継車として、水冷エンジンを搭載した初代「ライフ」を発売。
このライフのコンポーネントを使って、同年、スペシャルティカーの「Z」(水冷モデル)が登場。さらに多様化するニーズに応えるために、1972年に派生車としてバンタイプの軽商用車「ライフ ステップバン」を発売しました。
ライフ ステップバンの外観は背が高いボクシーな車体に極端に短いボンネットがあるスタイルで、ヒンジドアを採用している以外は現在の軽ハイトワゴンと同様なディテールを確立しており、当時としてはかなり斬新なデザインでした。
また、一般的な軽ワンボックバンでは、フロントシート下にエンジンを置き後輪を駆動するFRが主流でしたが、ライフ ステップバンはFFを採用していたことからプロペラシャフトが不要となり、フロア高を下げてより多くの荷物を積み込むことが可能でした。
さらに1973年にはライフ ステップバンをベースにした軽トラックの「ライプ ピックアップ」が登場。こちらもかなりユニークなスタイルで、ほかには無い個性的な軽トラックとなっています。
しかし、1974年にホンダは初代シビックの生産に注力するため、軽トラックの「TN」シリーズを除く軽自動車の生産から撤退することになり、ライフ ステップバン/ピックアップは短命に終わりました。
ところが生産終了後にデザインが再評価され、若者を中心にライフ ステップバン/ピックアップの中古車は高い人気を誇り、カスタマイズして乗るのがちょっとしたブームとなったほどです。
●日産「プレーリー」
現在のミニバンの要素をすべて持っていたといえる初代「プレーリー」
ミニバンといえばもはや流行ではなく、完全にファミリー層にはなくてはならないクルマですが、現在のミニバン人気の立役者となったのは、1994年に誕生したホンダ初代「オデッセイ」といわれています。
一方、それよりも10年以上前の1982年に、日産は新たなファミリーカーとして、3列シートのステーションワゴンタイプのモデル初代「プレーリー」を発売。
当時、多人数乗車が可能なモデルはワンボックスタイプが主流でしたが、プレーリーは乗用車タイプのミニバンの元祖といえる存在です。
FFを採用したことで室内は低くフラットなフロアを実現し、センターピラーのない大きな開口部のボディと後部両側スライドドアに加え、多彩なシートアレンジも可能でした。
従来の乗用車では実現できなかった優れた乗降性だけでなく、大きな荷物の出し入れも良好で、8人乗り3列シートと5人乗り2列シートの乗用モデルだけでなく、3人乗りと6人乗りの商用バンをラインナップ。
ほかにも4WDモデルをベースにした特別仕様車の「ノルディカバージョン」では、現在のSUV的なスタイルを取り入れていました。
しかし、初代プレーリーは低いボディ剛性による乗り心地や運動性能の悪化や、多人数乗車時の非力さがクローズアップされたことから販売は低迷。
1988年に2代目にフルモデルチェンジするとセンターピラーレス構造を採用せず、オーソドックスなミニバンのスタイルに改められてしまいました。
●スバル「レオーネ エステートバン4WD」
クロスオーバーSUVの元祖でシンメトリカルAWDを採用した「レオーネ エステートバン4WD」
いまや世界的に高い人気を誇っているSUVにはいくつかのタイプが存在します。なかでももっとも人気があり、車種も数多くラインナップされているのが「クロスオーバー」と呼ばれるタイプで、SUVのタフな印象よりも都会的なデザインを採用し、実際の走りも舗装路が重視されたモデルで、一般的にはセダンやコンパクトカーのシャシが流用されています。
このクロスオーバーの元祖といえるのが、1972年に発売された水平対向エンジンを搭載するスバル「レオーネ エステートバン4WD」です。
スバルは1971年に、東北電力から巡回用にとのリクエストにより、「ff-1・1300Gバン」をベースにした4WD車を開発。僅かな台数が生産されたff-1・1300Gバン4WDの技術を応用したのがレオーネ エステートバン4WDで、世界初の乗用4WD車といわれています。
当時はまだ悪路走破性を重視しており最低地上高も高めでしたが、まさに「レガシィ アウトバック」の原型といえるモデルでした。
その後、セダンにも4WDを採用するなど、スバルは乗用4WD車のパイオニアとして現在までDNAが受け継がれています。
■ダウンサイジングエンジンの先駆けと小型ディーゼルの先駆者とは!?
●日産「マーチ スーパーターボ」
動力性能を重視したツインチャージャーを日本車で唯一搭載した「マーチ スーパーターボ」
2000年代に欧州車に端を発して急激に増えていったのが、ダウンサイジングターボエンジンです。エンジンの排気量をダウンしつつ気筒数も減らし、ターボで高速域のパワーを補うという理論で、エコカーのためのパワーユニットとして開発されました。
このダウンサイジングターボの理想形といえるのが2005年にフォルクスワーゲン「ゴルフV」に搭載されたTSIエンジンで、1.4リッター直列4気筒直噴エンジンに、ターボチャージャーとスーパーチャージャーを搭載して最高出力170馬力を発揮。2リッター自然吸気エンジンを上回る出力を発揮しつつも14km/L(10・15モード)という低燃費を実現しました。
一方で、このツインチャージャーエンジンをいち早く搭載していたのが、1988年にモータースポーツベース車として開発された日産「マーチR」です。
競技のレギュレーションに対応するため排気量を987ccから930ccにダウンし、ターボチャージャーとスーパーチャージャーの2種類の過給機が装着され、最高出力110馬力(グロス)と1.5リッターエンジン並の性能を発揮しつつ、低回転域から力強い加速が大いに魅力的でした、
さらに1989年にはマーチRと同じエンジンを搭載して、普段使いにも適した装備の「マーチ スーパーターボ」が登場。トランスミッションはクロスレシオの5速MTに加え、3速ATも設定されました。
マーチR/スーパーターボのエンジンはTSIエンジンと異なり、燃費よりも絶対的なパワーが重視されていましたが、今から30年以上も前にツインチャージャーエンジンを量産化していたのは驚異的だったとえいます。
また、マーチR/スーパーターボのドライブフィールはかなり過激で、シャシ性能よりもエンジン性能が勝っていた荒削りな高性能車として今も語り継がれる存在です。
●ダイハツ「シャレード」
当時、世界最小のディーゼルターボエンジンを搭載した2代目「シャレード」
ハイブリッドやPHEV、マイルドハイブリッドの台頭から、高額なミドルクラス以上のモデル以外では数が少なくなってきているのがディーゼルエンジンです。
排出ガスのクリーン化に高価な後処理装置が必要なことから、小型のモデルは数を減らしてしまいましたが、現在もマツダ「マツダ2」など、1.5リッターディーゼルが生き残っています。
この小型ディーゼルの先駆者といえるのが1983年に登場したダイハツ2代目「シャレード」で、乗用車用としては当時世界最小排気量の1リッター3気筒ディーゼルエンジンを搭載した「シャレードディーゼル」をラインナップ。後に、よりパワフルなディーゼルターボエンジンも登場しました。
そもそもディーゼルエンジンは小排気量=ボアが小さいエンジンには不向きで、燃料をきれいに燃やすことが困難といわれていましたが、果敢にチャレンジしたダイハツは開発に成功。
さらに初代シャレードから搭載する直列3気筒エンジン(ガソリン)もダイハツが量産自動車用エンジンで世界初の快挙であり、大衆車ながら技術的にも意欲作でした。
しかし、ディーゼルエンジン特有の振動や騒音、排出ガスの黒煙の克服が十分でなかったことや、ガソリンエンジンの高出力化が進んだことで、1993年に4代目にモデルチェンジした際にディーゼル車は消滅。
その後、フォルクスワーゲンが1.2リッター直列3気筒ディーゼルターボエンジンを市販し、スズキも800cc2気筒ディーゼルをインド向けに開発しましたが、どちらもすでに消滅しています。
※ ※ ※
歴史に「タラレバ」はありませんが、プレーリーがそのままのコンセプトで進化していたら、ダイハツが小型ディーゼルの開発を続けていたら、クルマの勢力図もすいぶんと変わっていたかもしれません。
優れたコンセプトや技術であっても広く受け入れられなければ意味がなく、誕生した時代の背景など複雑に関係してヒットに繋がるということを考えると、自動車開発の難しさが改めて理解できるのではないでしょうか。
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