レクサスが「LF-Z」で電動化宣言!? スピンドルボディ採用の新型SUV発表の狙いとは
くるまのニュース / 2021年4月1日 7時10分
レクサスが2021年3月30日に、「LF-Zエレクトリファイド」を世界初公開しました。電動化を推進するレクサスですが、今回発表されたコンセプトカーにはどのような狙いがあるのでしょうか。
■LF-Zエレクトリファイドはレクサスの電動化の“先駆者”
現在、自動車業界は100年の1度の大革期を迎えており、とくに「電動化」に関してはカーボンニュートラルやSDGs(持続可能な開発目標)への対応などから、想定を超えるスピードで動き始めています。
そんなことから世界の主要な自動車メーカーも次世代に向けた電動化ビジョンを掲げています。
レクサスとして初の電動化モデルは2005年に登場した「RX400h」です(日本では「ハリアーハイブリッド」)。
RX400hは3.3リッターV型6気筒+フロントモーター+リアモーターを統合制御するシステムにより、「ハイブリッド=パフォーマンス」という魅力をアピールしたモデルでした。
このシステムの可能性を探るために、なんとその年のニュルブルクリンク24時間レースに参戦。翌年2006年の十勝24時間レースには「GS450h」が参戦しました。
このときのリリースには「今後の市販車へ技術的なフィードバックが前提に、開発の一環と位置付けておこなう」と記されていました。
このマシンは24時間をほぼノントラブルで完走し膨大なデータを蓄積。ここでの知見は2007年に開発された「スープラHV-R」を経て、WECのマシンに繋がっているのはいうまでもありません。
ル・マン24時間制覇の第一歩は、じつはレクサスが切り開いていたのです。
そんなレクサスは、いまから3年前の東京モーターショー2019で電動化ビジョン「レクサス エレクトリファイド」を発表しました。
その内容を要約すると「電動化技術を用いてもう一度クルマの原点に立ち戻り、高級車の有り方を根本から変える」というものでしたが、残念ながら具体性が乏しかったのも事実です。
そこで今回、レクサス エレクトリファイドをより具体化するためにブランド変革をモノとして表現したコンセプトモデル「LF-Zエレクトリファイド」を世界初公開しました。
なぜこのタイミングで発表をおこなったのでしょうか。
レクサスインターナショナルの佐藤恒治プレジデントは、「コーポレートとして2050年のカーボンニュートラルの実現に向けてさまざまな取り組みをおこなっていますが、それを実現させるための手段、つまり電動化パワートレインをどのように活用し、どのようなタイミングで展開していくのかは各ブランドで異なります。
トヨタブランドは“普及”を最優先した考え方ですが、レクサスブランドはより“電動化リッチ”の考え方を取ります。じつは今回の『ブランド変革に向けた取り組み』の本質はそこにあります」と語っています。
ちなみに現在、レクサスのラインナップは、「LX」と海外モデルの「GX」以外の全てのモデルにハイブリッドモデルを設定済みで、2020年末時点での累計販売台数は約193万台となっています。
さらに2020年にはレクサス初のEVとして「UX300e」の販売も開始していますが、LF-Zエレクトリファイドはプレミアムブランドにおける電動化の“先駆者”としての新たな宣言でもあるのです。
では、LF-Zエレクトリファイドにはどのような想いが込められ、どのような技術が盛り込まれているのでしょうか。
車名ですが、LFはコンセプトカーに掲げられる称号(レクサスフューチャー)、Zはゼロエミッションを意味しています。レクサス自身は2025年までに実現を見据えた走りやデザイン、先進技術が盛り込まれています。
エクステリアはSUVクーペのプロポーションですが、デトロイトショー2018で世界初公開されたコンセプトカー「LF-1リミットレス」をより先鋭化させたイメージに見えます。
レクサスの顔「スピンドル形状」をボディ全体のアーキテクチャとして進化させた「スピンドルボディ」という表現に挑戦していますが、一目でレクサスと解るデザインながらも、「高級車=押し出しの強さ」といった古典的な手法からの脱却した新時代のプレミアム表現に感じました。
リア周りは横一文字のコンビネーションランプ特徴ですが、こちらも似たデザインを採用する「UX」や「IS」よりもスタイリッシュかつ先鋭化されています。
細かい部分ではリアには定番のLマークではなく英文字エンブレムを採用。今後の量産モデルはこの方向になるのでしょうか。
全体的にクロスオーバーシリーズのフラッグシップにふさわしいデザインだと思いますが、厳しい事をいうと、2025年ではなく“今”必要なデザインかもしれません。
一方、インテリアはエクステリア以上に変わっています。デザインのコンセプトは「Tazuna(手綱)」です。
手綱1本で意思疎通を図る人と馬の関係と同じように、無駄な視線移動やスイッチ操作をおこなわずに、さまざまな機能を活用できる空間設したといいます。
これはつまり、人車一体のインターフェイスの実現です。
この辺りは、各モデルで操作系がバラバラだったり、煩雑なスイッチのレイアウト、デジタルコクピット化の遅れなど、現行モデルの反省が活かされているようですが、今後登場のニューモデルでは早急に対応してほしいところです。
居住性は“広々”というよりも “コクピット感覚”が強い空間づくりですが、フロントからリアまで連続性のある造形やパノラマルーフ(調光ガラス)の採用で解放感は高そうです。
もちろん先進機能も満載で、ドライバーの嗜好や行動特性を学習したAIがドライバーをサポートする「ライフスタイルコンシェルジュ」やスマートフォンを用いた「デジタルキー」、ドア開閉をよりスムーズ&安全にする「E-Latchシステム」、世界中のコンサート会場と同じ音響空間を車内に再現する「次世代マークレビンソンオーディオシステム」など、レクサス流の「おもてなし」はより高いレベルに引き上げられています。
■LF-ZはフラッグシップSUVとして投入される!?
パワートレインは前後に独立したモーター(システム出力は400ps/700Nm)が搭載され、前後の駆動力を自在に制御することでFF/FR/AWDと走行シーンに応じた駆動力を提供するとともに、人の感性に寄り添った車両姿勢のコントロールを可能にする四輪駆動力制御技術「DIRECT4」が採用されています。
レクサス「LF-Zエレクトリファイド」(コンセプトカー)
筆者(山本シンヤ)はレクサス「ES」がベースのDIRECT4のテストカー(フロント:HVシステム/リア:モーター)に試乗したことがありますが、開発途中ということでフィーリング面では荒削りな所はあったものの、セダンながらスポーツカー顔負けのキレのある痛快なハンドリングに加えて、駆動方式の概念が変わる不思議な乗り味に驚きました。
さらにLF-Zエレクトリファイドにはステアバイワイヤが採用されています。ステアリング形状から予測するとロックtoロックはかなり小さい感じがしますが、DIRECT4との協調制御によってどのような走りを実現しているのか気になるところです。
プラットフォームはレクサス エレクトリファイドで目指す「車両基本性能の大幅な進化」の実現のためにEV専用を新規開発し、バッテリーやモーターの最適配置による理想的な慣性諸元を実現ました。
車両フロア下へ搭載されるバッテリーは90kWh(航続距離は600km)と大容量ですが、車両重量は2100kgに収められているのはEV専用プラットフォームが大きく貢献しているのはいうまでもないでしょう。
レクサスは今後、2025年までにワールドワイドで10以上のEV/PHV/HVなどの電動車を含む、約20車種以上の新型車や改良モデルを投入すると発表しています。
これらのモデルにLF-Zエレクトリファイドに採用されたデザイン/技術を適材適所で展開していくことになるのでしょう。
なお、2021年には2台の新型車が発表予定となっています。ちなみにレクサスラインナップのなかでモデルライフが長いのは「CT」と「NX」、そしてLXですが、一体どのモデルが登場するのでしょうか。
さらに筆者が気になっているのは、LF-Zエレクトリファイド自体について。単なるコンセプトカーなのか、それとも将来登場予定のモデルなのかという部分です。
現行モデルのラインナップを見ると、セダン系のフラッグシップは「LS」、クーペ系のフラッグシップは「LC」ですが、SUV系のフラッグシップはというと、LS/LCと同列のモデルは存在しません。
「LXがそれに値するのでは?」という人もいますが、クロスオーバーというよりはリアルオフローダーに属するモデルです。
となると、ピュアEVであるかどうかは置いておいて、「RX」の上に位置するクロスオーバー系フラッグシップと考えるのが素直ではないかなと思っています。
ちなみに日本で「RZ450e」というネーミングが商標出願されています。「LF-Z」と「RZ450e」、どちらも「Z」が共通しているのは偶然ではないような気がしています。
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