無料で車中泊できるところは存在する? 道の駅や高速道路SA利用の現状とは
くるまのニュース / 2021年4月3日 7時30分
クルマのなかで寝泊まりする「車中泊」が注目を集めるなか、どこで車中泊できるのかという問題があります。有料施設ではオートキャンプ場やRVパークがありますが、無料で利用できる道の駅や高速道路のサービスエリアなどは車中泊可能なのでしょうか。
■道の駅での車中泊は事実上グレー!?
近年、「車中泊(しゃちゅうはく)」という言葉が一般的になってきた印象があります。最大の理由は、キャンピングカーブームでしょう。
2010年代中盤頃までは、車中泊といえば一部のユーザーがおこなう旅のスタイルだったり、地震や豪雨などの自然災害の際の緊急措置というイメージがありました。
それが2010年代中盤以降になると、登山やトレッキングなどアウトドアや週末のファミリーキャンプの需要が高まり、さらに2020年にはコロナ禍で3密回避やリモートワークという流れのなかで、車中泊の注目度が一気に高まったといえます。
実際、筆者(桃田健史)も最近、ライトな仕様のキャンピングカーを日常的に使用するようになり、今後体験数が増えていくであろう車中泊について当事者意識を持つようになりました。
そうしたなかで再確認しなくてはならないのが、「どこで車中泊ができるのか?」という点です。
基本的には、防犯上安全な場所であること、また敷地の所有者から許可を得ていることが車中泊のための条件となります。
有料施設については、オートキャンプ場や、「安心快適な日本RV協会公認車中泊施設」と説明されているRVパークなどあります。
無料で使える車中泊については、車中泊に限定した本(不定期発売の専門的な情報雑誌)をチェックしたり、実際に車中泊をしている人たちが情報共有するネットなどの情報に加えて、これまで車中泊を数多く体験している人にオンライン会議システムを使って話を聞いたりしています。
そうした調査のなかで分かったのが、道の駅での車中泊に関する国の解釈です。
国土交通省のホームページでは、「道の駅の駐車場で車中泊は可能ですか?」という質問に対して、「道の駅は休憩施設であるため、駐車場など公共空間で宿泊目的の利用はご遠慮いただいています。もちろん、道の駅はドライバーの皆さんが交通事故防止のため24時間無料で利用できる休憩施設であるので、施設で仮眠していただくことはかまいません」という回答になっています。
むろん、仮眠について最大時間などの定義はなく、道の駅の事業者それぞれが詳細を判断するという、事実上のグレーゾーンということになります。
明確な定義がないなかで基本的なルールを守らない人がいると、車中泊に対する地元の見方が一気に厳しくなります。
たとえば、福井県永平寺町の役場関係者によると、町内の道の駅「禅の里」では過去に夜遅くまで車中泊を前提として旅行者がバーベキューをおこなって問題となり、警察と町役場の立ち合いのもとで道の駅の事業者が利用者に注意喚起した事例がありました。
現在(2021年3月末)は車中泊を禁止することはありませんが、バーベキューの禁止など「駐車場のご利用時のお願い」という表示板を設置しています。
■高速道路のSA/PAでの車中泊はOK? NG?
車中泊をしてもいいのか気になる施設として、もうひとつは高速道路のパーキングエリアやサービスエリアです。
主要な有料道路事業者に回答を求め、本稿執筆時点でそのうち3社から回答を得ました。
注意書きを掲示する道の駅も存在
●NEXCO中日本(中日本高速道路株式会社)
「高速道路の休憩施設(SA/PA)は、お客さまが快適に休息をとり、安全にドライブをして頂くことを目的としているため、当社としては休憩施設の駐車場での車中泊はご遠慮いただいております。
なんらかの法律などで休憩施設駐車場での車中泊が規制されているものではないため、あくまでも当社からのお願いとなります。
安全運転には適度な休息が必要であり、一方で用意している駐車マスには限りがありますので、多くの人にご利用いただくために、前述のようなお願い・呼びかけをさせていただいております」
なお、高速道路の駐車場は「道路」であるため、テント張り、火の使用、ゴミの放置などはできないと説明しています。
また、NEXCO中日本の管内には、高速を降りずに泊まれるハイウェイホテルが用意されています。
東名高速道路 足柄SA (上り)の「レストイン時之栖」(静岡県)、名神高速道路 多賀SA(下り)の「レストイン多賀」(滋賀県)、そして東名高速道路 豊田上郷SA(下り)の「ファーストラウンジ豊田上郷」(愛知県)の3か所があります。
●NEXCO東日本(東日本高速道路株式会社)
「SA/PAは、高速道路を利用されるお客さまの休憩などを目的としている施設であり、その駐車可能台数にも限りがございます。
休憩のための仮眠などを禁止するものではなく、また休憩と宿泊を厳密に区分することは困難ですが、前述の目的に反して長時間にわたる駐車や、ほかのお客さまの迷惑になる行為はご遠慮いただいております。
課題といたしましては、車中泊と関連がまったくないといい切れないゴミ捨てに関して、お客さまからのご意見・苦情があがっていることです」
●首都高速道路株式会社
「基本的なルールとしては、首都高PAの駐車台数は制約上限られているため、食事やトイレなどの一時的な休憩を利用目的としています。
一方で、ゴルフの乗り合わせなどの目的外利用により、運転中の一時休憩で立ち寄ったお客さまが駐車できず困っているという声を頂いております。
そのような課題への対策として、ポスターの提示やPAの館内放送などで短時間駐車への
協力の呼び掛けや、2017年から短時間駐車マスを設置しております(2021年3月末現在、大黒PAを除く19か所のPAで設置済)」
首都高速は、東名高速、名神高速、中央道などと比べて道路全長が短く、利用者の移動時間も短くなるため、休憩よりさらに短い“一時的な休憩”という表現が特徴だといえます。
※ ※ ※
本来車中泊は、気ままな旅や臨機応変な行動が魅力なのですが、「狭い日本」のなかで多くの人が車中泊で安全性と利便性を担保することは難しいのかもしれません。
今後、車中泊の利用人口が増えていく場合、無料で休憩できる公的な駐車場における、車中泊に対するより明確なルールや規制が必要になる可能性もあります。
車中泊というクルマの楽しみ方を損なわないような、現実的な解決策が求められると感じます。
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