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マクラーレン「F1」を2度も大破させた「Mr.ビーン」の元愛車の価格は?

くるまのニュース / 2021年4月1日 11時50分

『Mr.ビーン』ことローワン・アトキンソン卿がレースに参戦するために所有していたフォード「ファルコン」のレースカーが、英国のオークションに出品された。有名人の元愛車にはプレミアがつくのだろうか。

■実は腕利きドライバーのアトキンソン卿とその愛車について

 ヨーロッパやアメリカの一流オークションハウスでは、著名なセレブレティたちの「元愛車」たちが出品される機会が、けっこうな頻度であるようだ。

 今回紹介するのは、近年のクラシックカー業界でにわかに注目を集めつつある英国のオークションハウス、シルバーストーン・オークション社が2021年3月下旬に開催した「THE RACE RETRO LIVE ONLINE AUCTION 2021」に出品され、クラシックカーレース愛好家、とくにグッドウッドのファンの間では話題騒然となった1台である。

 世界的なコメディスターが、母国イギリスを中心とする欧州各国のクラシックカーレースで走らせてきた愛車、1964年型フォード「ファルコン」FIAレースカーについて、解説しよう。

●1964 フォード「ファルコン FIA レースカー」

 日本でも人気の高いローワン・アトキンソンは、スラップスティック(ドタバタ)コメディの世界的ヒット作、TVドラマだけでなく劇場映画化もされた『Mr.ビーン』シリーズや、『007』ジェームズ・ボンドを徹底的に茶化した映画『ジョニー・イングリッシュ』シリーズではハチャメチャな演技を見せた一方、近年では刑事ドラマの名作『メグレ警視』シリーズにおいて、苦み走った渋さも披露する名優である。

 長年にわたる文化的功績が評価され、2013年に大英帝国勲章(コマンダー)を受勲していることから、現在の公式な呼び名としては「ローワン・アトキンソンCBE」あるいは「ローワン・アトキンソン卿」と称される彼は、オックスフォード大学出身の超インテリであるとともに、自動車エンスージアストとしても知られている。

 毎年9月に英国ウェストサセックス州グッドウッドで開催される世界最大規模のクラシックカーレースイベント「グッドウッド・リバイバル・ミーティング」では、複数のカテゴリーのレースに常連としてエントリー。現役ないしはレジェンド級レーシングドライバーたちと互角に渡り合ってなかなかの戦歴を挙げてきたさまは、例年末に販売される公式DVDや公式WEB動画などで観たことがある人も多いだろう。

 そんなアトキンソン卿が、グッドウッドにおけるツーリングカーレース「セント・メアリーズ・トロフィ(St. Mary’s Trophy)」にてバトルを展開する際の相棒となってきたのが、FIA(世界自動車連盟)スポーツ規約にしたがって改造された、1964年型フォード「ファルコン」である。

 フォード・ファルコンは、アメリカ本国におけるフォードのベーシックカーとして、1960年モデルから誕生した。この個体は1963年−1965年に生産された第2世代、2ドアハードトップの「スプリント」である。

 これでもアメリカではもっとも廉価な大衆車として位置づけられていたモデルで、標準エンジンは直列4気筒OHVないしは6気筒OHV。しかしこの時代のアメリカ車の常道どおり、オプションとして大排気量V8(260立方インチ:4.2リッター、または289立方インチ:4.7リッター)も選択可能とされたことから、V8搭載車はいわゆる「アメリカンマッスルカー」の代表格とも称されることになった。

 そのパフォーマンスはヨーロッパのレース界でも注目され、1960年代に全欧で人気を博した「ETC(ヨーロッパ・ツーリングカー・チャレンジ)選手権」においても、ジャガー「Mk2」やロータス「コルティナ」、BMC「ミニ」、あるいはアルファ ロメオ「ジュリア」などと混走して目覚ましい戦歴を残している。

 鯨のように巨大なファルコンは、タイトコーナーではより小柄かつ俊敏なライバルたちに詰められるが、ドリフト状態でストレートに飛び込んだままレースをリードする。そんな迫力たっぷりの光景は、当時のETC選手権における名物となった。

 そして現在、1965年以前に生産された車両を対象としたクラシックツーリングカーレースは、アマチュアのエンスージアストたちによって高い人気を得ており、FIA規約のもとに複数のシリーズ戦が展開。往年と変わらないマシンたちが、往年と変わらない熱戦を繰り広げているという。

 そのような熱いバトルの真っただ中に飛び込んで、ファルコンFIAレーサーのごときモンスターを乗りこなすには、相当なドライビングスキルが必要となる。しかしMr.ビーンことアトキンソン卿は、彼の愛車であるマクラーレン「F1」を2度も大クラッシュさせてしまったことから運転が下手だと誤解されがちなのだが、本当は他チームの助っ人として呼ばれるほどの腕利きとして認知されている。

 それは、このフォード・ファルコンとともにサーキットで披露した腕前によって証明されたものなのである。

■約851万円の落札価格は、付加価値があってこそ?

 このほど、シルバーストーン・オークション社から「THE RACE RETRO LIVE ONLINE AUCTION 2021」に出品されたFIA仕様フォード・ファルコンは、ローワン・アトキンソン卿からの直接のオファーによって、同社に販売委託されたという。

●1964 フォード「ファルコン FIA レースカー」

ローワン・アトキンソン卿が、「グッドウッド・リバイバル・ミーティング」を含む様々なクラシックツーリングカーレースに出走してきたフォード「ファルコン FIA レースカー」(C)Silverstone Auctions Limited 2021ローワン・アトキンソン卿が、「グッドウッド・リバイバル・ミーティング」を含む様々なクラシックツーリングカーレースに出走してきたフォード「ファルコン FIA レースカー」(C)Silverstone Auctions Limited 2021

 アトキンソン卿は2006年以来このファルコンを所有しており、過去15年間には英国スネッタートンやベルギーのシメイで開催される「シルバーストーン・クラシック」、そしてもちろん「グッドウッド・リバイバル・ミーティング」を含む、様々なクラシックツーリングカーレースに出走してきた。

 この種のレースカーの常として、レースの前後には必ずスペシャリストによる整備を受けているが、さすがに世界的レジェンドの愛車に相応しく、英国でも最高のチームがメンテナンスサービスを担当。その間に施されたすべての作業、アップグレードなどを詳しく記した履歴ファイルも完備した状態でオークションに出品された。

 このファルコンは2014年から現在に至るまで、グッドウッド・サーキットにもほど近いファンティントンの「ジョン・フリーマン・レーシング」によって管理されており、現時点における最後の重要なコスト投下は2018年となる。新品のラジエーターやアルミニウム合金製バンパー、ブレーキやエンジン冷却系などを含む様々な作業がおこなわれている。

 もちろん、アトキンソン卿の所有期間中の定期的なメンテナンス作業とアップグレードの履歴ファイルには完全な詳細が記載されている一方で、2020年には世界中で猛威を振るっているCOVID-19の影響により、サーキットで本領を発揮する機会は与えられなかった。

 現状において添付されるFIAドキュメントは「クラスCT10(ピリオドF 1962−1965)」のためのもので、新型コロナ禍によって車両検査も中断されていることから、更新手続きは未決状態にある。

 ただ、前回のレース以降に走らせる機会も限定されていたため、英国のクラシックレース界では有名なスペシャリスト、スティーヴ・ウォリアーによって組まれたエンジンは、この先もしばらくの間は充分なパワーを発揮するとのことである。

 また、すべてのシートベルトや消火器などの安全装置は新品に取り換えられているほか、スペアパーツにはホイール/タイヤのセット、リミテッドスリップデフ、落札者がストックしておく必要がある補修用ボディパネルなども含まれる。

 クラシカルなターコイズ・ブルーのボディカラーに、ミニライト社製アロイホイール、少しだけローダウンしたスタンスは、いかにもイギリス式ツーリングカーレーサーらしいアピアランス。英国のエンスーにとっては、堪らない魅力を湛えた1台である。

 加えて英国内のナンバー登録もされていることから、サーキットのみならずクラシックカー・ラリーイベントやツーリングなどにも参加可能である。

 シルバーストーン・オークション社では、今回の出品に際して「巧みに仕上げられ、世界的セレブレティとともにヒストリーを築いてきたファルコンを手に入れるならば、レースシーズンが間もなく始まる今こそ、絶好のタイミングでしょう」という煽情的なキャッチ文とともに、5万5000−6万5000ポンド(邦貨換算約835万−約988万円)というエスティメートを設定した。

 これも同社曰く「今回のガイド価格は現実的」とのことだったが、3月27日午後(現地時刻)におこなわれたオンライン競売では、エスティメート下限をなんとかクリアする5万6250ポンド、日本円に換算すれば約850万円で落札されることになった。

 ぎりぎり面目は保たれたかにも見えるのだが、実はこの価格は同年代のフォード・ファルコン・スプリントの相場との比較では、2倍から3倍にも相当するもの。完璧なレース仕立てであることを加算したとしても、やはり「元Mr.ビーン代」がかなり含まれるかに感じられたのである。

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