軍用から始まったSUV黎明期の立役者「初代ディフェンダー」が今なお至高の存在である理由【中古車至難】
くるまのニュース / 2021年4月5日 8時10分
いまやメルセデス・ベンツ「Gクラス」やジープ「ラングラー」のように、オフロード性能の高いハイレベルなSUVが数多く存在する時代となった。そんななか、現代においてはお世辞にも高性能とはいえないレトロな「初代ディフェンダー」が、車好きに選ばれ続けるその魅力は一体どこにあるだろうか。
■実戦仕様の飾らないかっこよさ
自動車メディアでの仕事が長くなってくると、どうしてもいろいろな意味でスレてしまい、街でスーパーカーや希少車を見かけても「とくに驚きもしないし感動もしない」という精神状態にもなっていく。
だがそのようにスレてしまった人間でも、見かけるとつい「おっ!」と盛り上がってしまうクルマが少数ながら存在する。
そのひとつが初代ランドローバー「ディフェンダー」だ。
2020年4月には新型のディフェンダーが発売されたわけだが、初代ディフェンダーが登場したのは1948年のこと。といっても当時はディフェンダーという車名ではなく、「ランドローバー」という非常にシンプルな車名だった。
●1945年 ランドローバー シリーズI
このランドローバー・シリーズIは、英国陸軍の特殊空挺部隊「SAS」に制式採用されたほどの屈強なオフローダー。そしてシリーズIからシリーズII、シリーズIIIへと代を重ねていったランドローバーは1983年、マイナーチェンジにあたって「ランドローバー90/110」へと車名を変更。90または110という数字はそれぞれのホイールベースを表していて、単位は「インチ」である。
そして1985年、バンとピックアップの127インチホイールベース版である「ランドローバー127」が追加されたが、この時点でのランドローバー車のラインナップは、無骨なオフローダーであるランドローバーのほかは、高級SUVであるレンジローバーだけだったため、車名の種別は非常にはシンプルだった。
だが1989年に第3のモデルとして「ランドローバー ディスカバリー」が誕生したことで「ランドローバー90/110/127」のネーミングは少々微妙になった(わかりづらくなった)。そのため1991年、ランドローバー90/110/127の車名は「ディフェンダー90/110/130」へと変更された。ちなみに130というのは「切りがよいから」というだけの意味で付けられた車名であり、実際のホイールベースは127インチのままである。
2005年以降、新型が導入されるまでディフェンダーの正規輸入は途絶え、並行輸入車だけが流通していたが、それまでは正規輸入モデルも販売されていた。
正規モノの「ディフェンダー90」はV型8気筒ガソリンエンジンにATを組み合わせ、1997年から1998年にかけて1050台を販売。もうひとつの「ディフェンダー110」は直列5気筒ディーゼルターボ・エンジン+MTで、2002年から2004年にかけて正規販売されたモデルだったが、いわゆるディーゼル規制によって販売終了となった。
■初代ランドローバーの中古車の味わい方
しかしその後は各地の専門ショップが並行輸入車としてディフェンダーを数多く輸入したため、現在も初代ディフェンダーのユーズドカー自体は豊富に流通している。
流通の中心は2012年以降の最終型で、この世代の搭載エンジンは、EURO5規制に対応した2.2リッターのディーゼルターボだ。乗り味は「無骨!」というほかないもので、高速域での直進安定性や快適性も、決して褒められたものではない。
だがこのクルマにおいては、そういったことは「割とどうでもいい」と判断するのが正解だ。あまり速度は上げず、その昔から基本的にはほぼ変わっていないデザインと“たたずまい”を楽しむべきクルマなのだ。
●1948年−2021年 ランドローバー「ディフェンダー」
ランドローバー90世代から続くホイールベースでのグレード分けは、ディフェンダーの特徴。ドア数やオプションなどが異なり、共通するシンプルなデザインは上級志向のレンジローバーとは似て非なるものだ(C)ジャガー・ランドローバー
2012年式から2016年式の中古車相場は700万円から1000万円といったところ。一般庶民の感覚からするとなかなかの高額であり、高額な割には前述のとおり、舗装路で快適な走りを披露してくれるわけでもない。
そうであるがゆえに街を走る初代ディフェンダーの数は少なく、たまに見かけると、筆者などは思わず「おっ!」という声が出てしまうのである。
メルセデスのGクラスやポルシェ「カイエン」など、いってみればありきたりなプレミアムSUVでは飽き足らない、あるいはあまり好きではないという個性派にはぜひおすすめしたい、なんとも玄妙な味わいの、そして希少性の高い1台が、この初代ランドローバー ディフェンダー。
この時代にこういういい方が適切かどうかはわからないが、「男の乗り物」を探している人は、ぜひご注目いただければと思う。
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