「六本木のカローラ」価格上昇中! 日本から流出した「M3」と「325iX」の驚きの値段とは
くるまのニュース / 2021年4月12日 11時10分
六本木のカローラと呼ばれたBMW「3シリーズ」のなかでも、特に個性的で高額だった「M3」と「325iX」の現在の評価を最新オークション結果から考察する。
■日本でも価格が上昇しているE30型3シリーズの海外での評価はいかに
1960年代前半に発売されたBMWの「1500シリーズ」は、ノイエクラッセ、英語でいうところのニュークラスと呼ばれた、ヒット車だった。
その後このシリーズは「1602」、「1802」、そして「2002」と進化を続けるとともに、モータースポーツでも活躍をしたことから、BMW=ドライビングカーというイメージを決定づけている。
この02シリーズのあとを継いだのが、BMW3シリーズである。初代は1975年から1983年まで生産されていたE21型である。丸目2灯のヘッドライトと逆スラントノーズは、キドニーグリルを見ずともBMWとわかる特徴的なものだったが、1979年のマイナーチェンジでセダンはヘッドライトが4灯化され、上級モデルに近いイメージとなっている。
そして1982年に登場したのが、日本でもヒットしたE30型3シリーズである。おそらく、日本でBMWというクルマが一般に認知されたのは、このモデルが最初ではなかっただろうか。
バブル期の六本木や青山、赤坂などでよく見かけられたE30型3シリーズは、「六本木のカローラ」とも呼ばれるほどであった。ちょうど同時期、メルセデス・ベンツ「190E」も大ヒット。そのころ20歳代前半だった自分は、がんばって「M3」を買うか「190E2.3-16」を買うか、スキーにいくことを考えて「325iX」を買うか……と、妄想を巡膨らませていたほどだ。同じように悩んだ人も多いことだろう。
その325iXというクルマは、BMWが市販車としてはじめてつくった4WD車である。搭載しているエンジンは170psの2.5リッター直列6気筒で「325i」と同じエンジンである。
フルタイム4WDシステムを採用したことから、スパイクタイヤが使えなくなった初期のスタッドレスタイヤ時代(1990年代初頭)において、雪道での優位性が高かった。
当時のフルタイム4WD車というと、ラリー由来のスバル「レガシィ RS」や三菱「ギャラン VR-4」などもあったが、イメージとして「BMWってオシャレ」的なところも魅力だった。
もちろん325iXは、当時の収入では買えるわけもなく、結局自分はギャランを買ったわけだが。ちなみに、1988年当時の325iXの車両価格は598万円、M3の車両価格は758万円であった。
さて、世界的に見ても大ヒットといっていい販売台数を記録したE30型3シリーズは、中古車市場での流通台数も多いように思われるのだが、実は状態のいい中古車は少ない。
M3のように、「M1」由来の4気筒エンジンを搭載したホモロゲーション車両といったヒストリーを持つクルマであれば、新車当時から大事に扱うオーナーも多く、状態のいい車両が中古車市場に流通する。ところが、325iXのようなファミリーカーの場合には、ハードに使用され乗り潰されてしまう個体が多く、さらにメンテナンスをしっかり受けている車両が少ない。結果として状態のいい個体が、中古車やオークションマーケットに出てくるのは非常に稀なケースとなる。
■日本から海を渡った2台のE30型の落札価格は?
しかし、日本におけるBMWオーナーは、クルマを丁寧に扱っているケースが多く、海外で走っている古いBMWも、元をたどれば日本で新車として販売されたものだった例が数多く見受けられる。
批判されることの多い日本の車検制度だが、こうしたメリットがあるというわけである。法定費用の高さや車検までのスパンの短さなど、いろいろユーザーには負担のかかる車検制度だが、半ば強制的にメンテナンスを受けなければいけないため、「クルマをよい状態で保つ」という点と、「日頃から車両整備に無頓着な人の車両もメンテナンスを受けさせる」という点においては、意義がないわけではない。
●1988 BMW「325iX」
BMW初となる4WDモデルBMW「325iX」(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
今回紹介する2台のE30型の325iXとM3は、ともに日本で新車として販売されていた個体だ。
まず325iXだが、こちらは現在9万8000km走行の2オーナー車である。最近ヘッドガスケットを交換しているほか、ボディの全塗装もおこなっているため、ロイヤルブルーは輝きを取り戻している。
インテリアは使用感こそあるが、大きなヤレなどはなく、エンジンルームも年式なりのくすみはあっても、機能的な問題はない。低年式のヨーロッパ車にありがちな、ルーフライニングの剥がれもなく、テールライトの樹脂レンズのくすみもなし。これからも日常的に使えるクルマといっていいだろう。
RMサザビーズが3月下旬に開催したオンラインのみのオークションに出品された325iXは、7975ポンド(約120万円)で落札された。予想落札価格は1万−1万5000ポンド(約150万−230万円)となっていたことを考えると、格安といっていいだろう。
仮に日本国内にあったとしても、中古販売価格が120万円ならばお買い得感ある値段だ。E30型3シリーズは、「320i」などでもオリジナルの程度のよい個体は150万円前後が普通である。325iXが敬遠された理由のひとつとしては、BMW初となる4WDであるため、意外と整備が大変であることが挙げられるだろう。
●1988 BMW「M3」
「スポーツエボリューション」でもなく、レーシングパターンのトランスミッションでもない「M3」が1000万円オーバーのエスティメートを付ける時代になった(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
一方のM3は、いまだ落札にはいたっていない。この個体も日本で新車として販売されている。
トランスミッションは左下が1速となるレーシングパターンではなく、レギュラーパターンの5速MTが搭載されている。シートのファブリックなどにスレはなく、エンジンルームや下回りもきれいな状態だ。走行距離はメーター上で9万4000kmとなっているが、状態からすればこれが実走行距離と考えていいだろう。
2019年にイタリアに渡り、現在はイタリア人オーナーが所有している。そこでボディを塗装し直しているが、それ以外はパワーウインドウやエアコンなど完調といっていいものとなっている。
このM3につけられた予想落札価格は、8万−9万ユーロ(約1040万−1170万円)というものだったが、流札となった。レーシングパターンのトランスミッションであれば、おそらく予想落札価格内でのハンマープライスとなったのだろう。
しかしレギュラーパターンとはいえ、フィーリングのいい2.3リッターエンジンを搭載したM3ならば、900万円くらいでの落札はあり得るのではないだろうか。
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