トヨタ「ハイエース」がラリーで下馬評を覆す激走を披露! 開発者も「衝撃」
くるまのニュース / 2021年4月13日 18時10分
自動車評論家の国沢光宏氏が、トヨタ「ハイエース」のハンドルを握り、全日本ラリーに参戦しました。商用車をベースにしたラリー車両は、どのような結果を残したのでしょうか。
■トヨタ「ハイエース」でラリーに参戦したらどうなる?
いやいや直近の20年くらいで1番驚きました! というか今までの常識からすればありえないこと。なにしろ荷物を配達するために作られたトヨタ「ハイエース」が、狭くてコーナーきつくてアップダウンのある狭い林道を全開で走っても大丈夫だったのだから。
運転している自分(国沢光宏)すら「凄い!」の連続だったほど。以下、ドライバー自らのレポートです。
2021年3月のこと。チーム(CAST RACING)が「ハイエースで全日本ラリーに出場する」と発表したら、猛烈な反響でした。
基本的に「面白い!」というポジティブなものだったけれど、2割程度は「全日本ラリーをなめているのか?」という厳しい意見。実際、私もラリー好きなため、ハイエースで出場すると聞いたら、反対こそしないけれど「なめているのか?」と思ったでしょう。
なにしろ全日本ラリーは日本のラリーでもっとも上の格式。世界最高格式のWRCを含め、ラリーは紳士のスポーツなので排除こそしないものの、技量の低いドライバーや走行性能の低い車両は自粛します。
最後尾の車両よりダントツに遅かったらカッコ悪い。ということでハイエースです。誰だって速いと考えないだろう。1番軽いボディで1620kg、最高出力は136馬力と非力。背だって高いし、スポーツモデルの反対といってよい。
皆さんは「転倒するよ」と忠告してくれる。いわれなくたって私がもっとも危惧していたのだけれど、それより心配なのは「全日本ラリーに出る資格を持っているのか」という点。
もっとも遅いクルマよりてんで遅かったら、残念ながら継続して出るべきじゃないかもしれません。
ということでスタート時から強いプレッシャーを受けていたため全開で走りたかったが、一方で「実績ゼロ」のラリー車。コーナー攻めたら本当に転倒するかもしれない。しかも車両の完成が遅れてしまい、事前テスト一切出来ず。
ハンドル握ったのはラリーのスタートだったほど。限界特性すら解らない車両でラリーをしようとしている。
■走行動画を見た開発者が「衝撃的な映像」とコメント
そんな状況で迎えた1本目の全開走行区間、走り始めたら、やはり普通のラリーカーとずいぶん違う感じ。
荷物を積んでいないため極端に前輪荷重。ブレーキングすると前後の荷重配分は前が90%。後ろ10%くらいになってしまう。登りのコーナーでは内側輪がほとんど離陸しているらしく、挙動がフワフワした感じ。
はたまた下りのコーナーでは少し無理したら転倒しそう。正直「こらダメか?」。当然ながら全くペースは上がらない。
ところが同じハイエースで出場している喜多見さん(ハイエースのラリー車を開発したエンジニアでもあります)、4kmという短いSS(スペシャルステージ)で私より12秒も速いタイムで走っている! こうなるとスイッチ入っちゃいます。
「他人が出来るなら自分も出来るという困った性格」といい換えてもよい。3本目のSS(1本目のSSをもう1度走る)あたりから徐々にハイエースの特性も解ってきた。
それじゃ徐々に攻めていきましょう、とアタックしてみたら、何と1本目より12.5秒も速くなった! こうなれば調子に乗る。SS4以降も20秒近いタイムアップ! 何より楽しく走れるようになってきた。
もちろん課題は山積といってよい。商用車スペックの5速ミッションのため、1速ギアはスタート用で使えない。2速は発進用のギアに近いため、すぐレッドゾーン。3速が素晴らしく離れているから、2速から3速にシフトアップすると失速したんじゃないかと思うくらい加速しない。
一方、コーナーは相当イケることが判明。前輪荷重になりすぎないようブレーキングし、コーナーもジンワリ横Gを掛けていくと限界がしっかり解る。
全日本ラリーに出走した国沢光宏氏の運転するハイエース
クルマ全体の挙動も穏やか。ラリー車が使っている『CAST』製サスペンションの仕上がりの良さなんだと思う。気がつけば普通のラリーカーの如く狭い林道でフルアタックしてました。
肝心のタイムなのだけれど、総合的に評価すればJN-6クラスに届かない。それでもSS9などは5台出場しているJN-6クラスの3番手タイムを出した! このくらいの順位ですべてのSSを走れたら、全日本ラリーに出ても怒られないだろう。
ミッションの改良など、やるべきことはたくさんある。道が鍛えてくれる。まだ速くなります。
何より興味深かったのはハイエースの開発チームの声。
ハイエースで全日本ラリーに出るという記事を見て連絡くれたのだけれど、動画を見て「走行シーンに関しましては、私の想像をはるかに超える衝撃的な映像でしたので、一瞬何が起きているのかを理解するのに相当な時間を要しました」(笑)。
かくなる上は世界最速の配達車を目指したいと思う。
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