ベーシックカーだけど、とんでもないモデルもあり? 高性能な日産「マーチ」5選
くるまのニュース / 2021年4月14日 6時10分
日産のコンパクトカー「マーチ」は、同社の現行モデル「スカイライン」「フェアレディZ」に続く長い歴史のあるモデルですが、近年はライバルに対してちょっと元気がありません。しかし、歴代マーチのなかには、かなり尖ったモデルも存在。そこで、高性能な日産マーチを5車種ピックアップして紹介します。
■日産「マーチ」の高性能モデルを振り返る
現在販売中の日産車(乗用車)のなかで、50年以上もの歴史を刻んでいるのが「スカイライン」と「フェアレディZ」です。
とくにスカイラインは一度も系譜が途絶えることなく、現行モデルは13代目となります。
さらに、一度も途絶えることなく歴史を刻んでいるのが「マーチ」で、1982年に初代が誕生してもうすぐ丸39年になり、2022年に40周年を迎えます。
現行モデルのマーチは4代目で、初代が10年、2代目も10年、3代目が8年、そして4代目はすでに11年目と、どの代もロングセラーなのが特徴です。
かつては日産のエントリーモデルとして一時代を築いたマーチですが、近年は同クラスのライバルに対して販売状況は良好とはいえず、元気がありません。
しかし、歴代マーチのなかには、かなり尖ったモデルも存在。そこで、高性能な日産マーチを5車種ピックアップして紹介します。
●1989年 マーチ スーパーターボ
シャシよりもエンジンが優れるという過激な性能を誇った「マーチ スーパーターボ」
前述のとおり1982年に新時代のコンパクトカーとして、初代マーチが誕生。
巨匠ジウジアーロの手によるシンプルで直線基調の外観デザインと、安価な価格で大ヒットを記録し、グローバルカーとして欧州でも「マイクラ」の車名でヒット作となりました。
そして、1980年代というとターボエンジンの普及が著しい時代で、1985年には最高出力85馬力(グロス)を発揮する1リッター直列4気筒SOHCターボエンジンを搭載した「マーチ ターボ」が登場。
さらに、1988年に排気量を987ccから930ccにダウンサイジングし、ターボチャージャーとスーパーチャージャーの2種類の過給機が装着された、日本初のツインチャージャーエンジンを搭載する「マーチR」が登場。
マーチRは最高出力110馬力(グロス)を発揮し、ツインチャージャーならではの全域からの力強い加速によって、ライバルのリッターカーを大きく凌駕していました。
しかし、マーチRはあくまでもモータースポーツベース車だったので、普段使いには適していません。
そこで、1989年にマーチRと同じエンジンを搭載して、普段使いにも適した装備の「マーチ スーパーターボ」が誕生。トランスミッションはクロスレシオの5速MTに加え、イージードライブも許容する3速ATも設定されました。
パワーもマーチRと同じ110馬力を発揮し、普段使いに適したといってもパワーステアリングやABSなどは装備されておらず、安全かつ速く走るにはドライバーの腕次第というモデルでした。
●2004年 マーチ12SR
ライトチューンのエンジンに優れたシャシ性能が特徴の「マーチ12SR」
1992年に2代目マーチが発売されましたが、初代のような高性能モデルはラインナップされず、「アウトストラーダ」などライトなスポーティモデルに留まりました。
一方、2002年に登場した3代目では、2004年にオーテックジャパンがチューニングした「マーチ 12SR」が登場。
スタンダードグレードの1.2リッターエンジン車をベースに、エンジンはシリンダーヘッド周りのチューニングや、圧縮比アップに伴うハイオク仕様、ECUのプログラミングも専用で、ノーマルの90馬力に対し最高出力は108馬力(後に110馬力にアップ)を発揮。トランスミッションは5速MTのみの設定です。
なお、109馬力の1.5リッターエンジンでCVTの「15SR-A」も2005年に追加されました。
12SRの車重は960kgと軽量で、足まわりの強化やシャシも補強による剛性アップが図られており、優れたコーナリング性能を誇り、スーパーターボとは異なるアプローチの高性能モデルとなっています。
●2007年 マイクラC+C
欧州テイストの足まわりが高く評価された「マイクラC+C」
前述のとおりマーチは欧州でマイクラとして販売され、2005年に3代目をベースにしたオープンカーの派生車が誕生。
車名は「マイクラC+C」で、ドイツの名門コーチビルダーであるカルマン社と共同開発した格納式ガラスルーフを搭載する4シーターのクーペカブリオレです。
日本でも2007年モデルから英国工場で生産する輸入車として1500台が限定販売されました。
22秒でフルオープンが可能な電動ガラスルーフは、手軽にオープンエアモータリングが楽しめるとして話題となります。
基本的なコンポーネンツは3代目マーチですが、エンジンは国内仕様のマーチには設定されていない110馬力の1.6リッター直列4気筒DOHCを搭載。
余裕あるパワーに加え、欧州仕様のサスペンションによる国内のマーチとは別物の優れた走りが、高く評価されました。
なお、フルオープンの状態では洗練された外観ですが、クローズド状態ではルーフの格納場所となるトランクリッドのラインとルーフラインの造形が、かなりユニークな印象です。
■オーテックジャパンの総力が結集された超ド級のマーチとは?
●2013年 マーチ NISMO S
まさに全方位チューニングされた高性能モデルの「マーチ NISMO S」
現行モデル4代目は2010年にデビュー。日本仕様はタイで生産され、ベーシックグレードでは100万円を切る価格が設定されるなど、大いに話題となります。
しかし、発売当初はスポーティなグレードが設定されず、エンジンとCVTのトランスミッションは全車グレード共通とされていました。そんななか、2013年に待望の高性能モデル「マーチ NISMO S」が登場。
NISMO Sはオーテックジャパンの手によってファインチューニングされた1.5リッター直列4気筒エンジンと5速MTが組み合わされ、最高出力は116馬力を発揮します。
1010kgと軽量なボディと使い切れるほどのパワーとの組み合わせで、優れたドライビングプレジャーを実現。さらにNISMOの手によってシャシ剛性のアップや、強化サスペンション、パワーステアリングのアシスト量など細部にもこだわり、NISMOの名にふさわしいモデルへと変貌を遂げました。
外装では専用のカラーリングに派手すぎないエアロパーツを装着。内装もスポーツシートや、本革とアルカンターラを組み合わせた小径ハンドルが採用されるなど、スポーティに演出されています。
現在もNISMO Sはラインナップされ、気負わずドラビングが楽しめる稀有なコンパクトカーの1台です。
●2016年 マーチボレロ A30
オーテックジャパンの30周年を記念した迫力ボディの「マーチボレロ A30」
マーチだけでなく数多くの日産車のコンプリートカーを手掛けてきたオーテックジャパンは、2016年9月に創立30周年を迎えました。
これを記念して、わずか30台限定生産のコンプリートカー「マーチボレロ A30」を発売。
マーチをベースにクラシカルな外観にカスタマイズしたマーチボレロは、2代目マーチから現行モデルの4代目にもラインナップされていますが、この現行モデルのマーチボレロをベースに、とんでもなくカスタマイズされたのがマーチボレロ A30です。
エンジンは「ノート NISMO S」にも搭載された1.6リッター直列4気筒の「HR16DE型」をベースに、専用のクランクシャフト、コンロッド、カムシャフトなどが組み込まれ、最高出力150馬力を誇り、トランスミッションは5速MTのみです。
また、シリンダーヘッドの吸気ポートの研磨などのチューニングも含め、エンジンの組み立ては1台1台完全に手作業とされました。
シャシは補強部材の追加による剛性アップと、専用のサスペンション、フロントブレーキの大型化とリアブレーキのディスク化などが施されています。
そして、マーチボレロ A30最大の特徴はボディにあり、90mm拡大されたトレッドにあわせて大きく張り出した前後フェンダーを採用。全幅はベース車の1665mmに対して1810mmと145mmも拡大されています。
内装もレカロ製シート、専用の本革巻きハンドル、240km/hスケールのスピードメーターなど、特別な装備を採用。
なお、マーチボレロ A30の新車価格は356万4000円(消費税8%込)とベース車の2倍以上でしたが、限定30台はあっという間に完売しました。
30周年という記念すべきモデルにマーチを選んだということから、オーテックジャパンのこだわりが感じられるのではないでしょうか。
※ ※ ※
現在、欧州で販売しているマイクラはマーチとは別物の海外専用モデルで、3ナンバーサイズにあたる5ドアハッチバックとなっています。
また、メキシコで販売されているマーチは日本のマーチと同様なボディながら、2021年1月に独自のマイナーチェンジによって「Vモーショングリル」を強調した精悍なフロントフェイスへと変貌しました。
国内のマーチも2020年7月に先進安全技術のアップデートを中心とした改良がおこなわれています。
近年はちょっと元気がないマーチですが、まだまだ進化は続いているようです。
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