なぜ13年超のクルマは税金アップ? 「納得してない…」それでも旧車に乗る理由
くるまのニュース / 2021年5月6日 9時10分
クルマを所有していると、毎年ゴールデンウイークを過ぎた頃に自動車税(または軽自動車税)の支払い通知が送付されます。自動車税はクルマの排気量によって税額が変わる道府県税(地方税)ですが、新規登録から13年を超える古いクルマほど重課されます。旧車に乗っているオーナーに本音を聞いてみました。
■13年超のクルマは自動車税+15%! 2008年以前のクルマは重課対象に
毎年、GWを過ぎたあたりに自動車税(または軽自動車税)の支払い通知が送付されますが、自動車税はクルマを所有する上で毎年支払う義務のある税金です。
この税金は排気量によって金額が変動するのですが、新規登録から13年を経過したクルマは重課されます。
最近はクルマ自体の耐久年数が向上している関係で保有年数も長くなっており、古いクルマを大事に乗っているユーザーにとってはなんとも厳しい制度になっております。
まず、自動車税の内容や目的とはどのようなものなのでしょうか。
クルマを購入・所有するにあたり、さまざまな税金が必要になります。クルマの購入時や車検時に支払う「重量税」は国に支払う国税なのに対し、毎年4月1日時点でクルマを所有する人が支払う自動車税は、クルマを登録した各都道府県へ支払う「地方税」になっています。
いまでは重量税も一般財源化されましたが、かつては「道路特定財源」として一般道の整備などに使われていました。
一方で自動車税は、各自治体が自由に使える一般財源。要するに、どんな用途にも使える税金をクルマの所有者は余分に払っているというわけです。
ここには「環境負荷」という問題が関連します。クルマは歩行者や公共交通機関とは違い、燃料を燃やしてCO2を含む排気ガスを排出しながら走ることから環境への負荷が大きく、その分多く税金を払うという考え方です。
そのため、燃費の良いクルマは「グリーン化による特例税率」が適用されますが、逆に古いクルマは環境負荷が大きいとの観点から重課される制度になっているのです。
ちなみに、グリーン化による特例税率と混同されがちな「エコカー減税」は、自動車税に関わる特別税率で、前者は重量税とかつての自動車取得税(現在は廃止され「環境性能割」に)に適応していました。
燃費のいいクルマは環境負荷が小さいので税金が安くなるという意味合いは一緒なのですが、管理するのが「国」か「自治体」という違いがあります。
自動車税の金額は、660cc以上1.0リッター以下が2万9500円。以降、排気量が0.5リッター増えるごとに5000円ずつ増額されていくシステムになっています。軽自動車税は年間1万800円です。
2019年10月以降に新車登録のクルマは税率が引き下げられており、たとえば660ccを超えて1.0リッター以下は2万5000円に値下げされました。全排気量で自動車税の引き下げがおこなわれていますが、これは1950年の制度創設以来初めてとなります。
一方、13年を経過したクルマの自動車税は、2リッターエンジン搭載車の場合、基本税額の3万9500円に15%の重課で年額4万5500円と6000円のアップ。
このアップ率も排気量によって多少の差があり、1.5リッター以下では増額分は5500円、2.5リッターまでは7000円の増額となります。
軽自動車税の算出方法は少し複雑で、2015年3月末までに登録した軽自動車は年額7200円、2015年4月以降に登録された車両は1万800円となっています。
軽自動車も13年以上経過していると1万800円に+20%重課された年額1万2900円となっています。
この変動制税率は、エコ(環境負荷)の観点から新しい環境性能がいいクルマへの乗り換えを促す目的で採用されたものなので、電気自動車(EV)やハイブリッド車は13年が経過しても重課対象外となっています。
※ ※ ※
重量税についても新規登録から13年以上を経過したクルマは重課されます。重量税の場合は18年以上を経過したクルマはさらに重課されるという、2段階の方式をとっています。
自動車税とは違い、こちらは重量ごとに重課される率が上昇するのですが、普通車の多くが当てはまる「1.5t以下」は、新車から13年未満は2万4600円(2年)に対し、13年から18年未満は3万4200円、18年以上経過した旧車になると3万7800円と、古いクルマになればなるほど厳しいシステムだといえます。
なおエコカーは13年以上経過しても重課の対象にはならず、1.5t以下の場合は1万5000円です。
■重課に納得したわけではないが… 旧車オーナーの本音
13年以上が経過したクルマに乗っているオーナーは、税金の重課についてどう思っているのでしょうか。
新車から乗り続けている人もいれば、購入した中古車の年式が古くなった人、最初から13年以上経過しているのを分かった上で旧車として購入した人に、古いクルマに乗り続けている理由を教えてもらいました。
2003年から2年しか販売されなかったホンダ「エレメント」
まずは、2004年からずっとホンダ「エレメント」(総走行距離29万km超)に乗り続けている、栃木県のTさん(40代・男性)に税金が高くなっても乗り続けている理由を聞いてみました。
「夏はサーフィン、冬はスキーを趣味としているのですが、エレメントは使い勝手で何の不満もないのでそのまま乗り続けています。
確かに税金が高くなるのは嬉しくありませんが、重課された税金は支払っています。だからといって、新車に買い換える余裕も気持ちもなかなかなくて。
だいぶクルマもくたびれてきていますが、修理できる部分を直しつつ、まだ現役で頑張ってくれています」
エレメントは2003年から2005年に販売された超レア車といえる存在。そんなところも載り続けている理由になっているとTさんはいいます。
「まだまだ乗れるのに買い換えるほうがもったいないというか。新しいハイブリッド車の魅力はわかってはいますが、その差額分を埋めるほど走るのかというと微妙です。エレメントは街ですれ違うこともほとんどないので、そんな珍しさも所有を続けている理由のひとつです」
Aさん(40代・男性)は、数々の輸入車を乗り継いできましたが、現在は2007年式のホンダ「フィット」を足として、趣味の釣りを楽しむために全国の釣りスポットへ出向いています。
「いまはクルマより釣りの道具にお金をかけたくて、ネットオークションでフィットを格安で手に入れました。釣りのポイントは意外に狭い道や低いトンネルを通ることもあるので、コンパクトで小回りが利くクルマにしたかったんです」
コンパクトさと価格の安さでフィットを購入。製造から14年目に突入しても、ほぼノートラブルで元気よく走ってくれているそうです。
「税金のことはあまり気にせず、欲しいと思ったクルマに乗るようにしています。この前まではBMW『3シリーズ』でしたが、税金を安くしたくて乗り換えたのではなく、あくまで小回りが効いて多少雑に扱っても故障の心配のないクルマとしてフィットを選びました。
ハイブリッドのようにはいきませんが、1.3リッターエンジンでも燃費は17km/L前後は走ってくれるので、経済性も十分です。古くてもまだ十分現役です」
最後に話を聞けたのは、あえて「旧車」として1991年式の日産「シルビア」に乗っているMさん(30代・男性)です。
かつての憧れだったS13型シルビアをフルレストア&オールペイント(全塗装)までしている、いわゆる「旧車ファン」です。
「シルビアは旧車なので、税金が高いのは承知の上でした。それより欲しいクルマを手に入れたい一心で購入しました。
ウェザーストリップなどゴム製品は新品に取り替え、ボディカラーもブラックを塗り直し、機関部品も全部オーバーホール。ほぼ新車に近い状態です」
ただ、古いクルマに対しての重課に関しては、納得いかない部分もあるそうです。
「アメリカにも排ガス規制はありますが、21年を超えたクルマは逆に免除になるなど、クラシックカーに対しての理解がある制度になっています。カナダや韓国なども一定期間を経過した古いクルマは免除になるようです。
日本でもやみくもに重課を背負わせるのではなくて、ちゃんと走る旧車(クラシックカー)に関しては、税率を考え直して欲しいです」
確かに、排ガス規制とはいいながら、クルマを廃車にして新しいクルマを製造する過程で排出されるもののほうが、古いクルマの排ガスよりキレイとはいい切れない部分もあります。
「むしろ、日本人の美徳であるもったいない精神でいえば、古いものにも良いところがあることを理解してほしいです」
※ ※ ※
13年超の古いクルマに乗っているオーナーに話を聞く限り、「重課は嫌だけど買い替えたくない」という人が多いことがわかりました。
確かにクルマは安い買い物ではないので年間数千円であれば、重課されても継続して乗ったほうが良いという気持ちも分かります。
「重課はやむなし」で、それよりも魅力的なクルマに乗り続けたいというのが、旧車オーナーの本音のようです。
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