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EV祭りで盛り上がるも課題は山積み? 今後のEV普及に必要なモノとは

くるまのニュース / 2021年5月7日 18時10分

2021年4月19日に中国で「上海モーターショー」が開催され、トヨタやホンダなどはSUVタイプとなる新型EVを発表。さらに既存の自動車メーカー以外もEV市場に参画する動きを見せるなどまさに「EV祭り」といえる状況です。しかし、現実的にはEV普及には課題が山積みといわれますが、今後どのような展開となっていくのでしょうか。

■「電動化」という言葉が示すものとは

 昨今の自動車産業は、程度の差こそあれど、電動化に向けて大きく舵を切っています。

 一方、電動化の終着点ともいえる電気自動車(EV)は、普及しないという意見もまだまだ少なくありません。これからのEVに必要なものとはなんなのでしょうか。

 近年の自動車産業のトレンドは、いうまでもなく「電動化」です。1980年代にはすでにクルマは電装部品のカタマリではありましたが、もちろんここでいう電動化とはそうした意味ではなく、原動力の電動化、つまり電気自動車(EV)化という意味です。

 電動化の意味をより広くとらえるなら、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)などの動力用電気モーターを採用しているクルマ(電動車)を増やすこと、ということもできます。

 また、逆にいえば、ガソリンや軽油といった化石燃料を動力源とする内燃機関(エンジン)をもたない、あるいはそれのみを原動力とするクルマを相対的に減らしていくということも意味しています。

 ただし、電動化や電動車という言葉のなかに含まれるのが、EVだけなのか、あるいはHVなども含むのかという点については、そのときの文脈によるので注意が必要です。

 例えば、「2030年代半ばまでに乗用車の新車販売の電動車比率を100%にすることを目指す」という報道が2020年末に話題になりました。

 2020年度時点では新車販売におけるEV比率は1%未満であり、非現実的な目標であるかのように思われますが、実際にはHVなども含む、「広い意味での電動車」であり、その基準でいえば、現時点ですでに新車販売の約37%が電動車であり、決して無謀な目標ではないことがわかります。

 このように、日本をはじめとする世界各国が電動化を後押しするような政策を提言し、それに同調するように自動車メーカーも積極的に電動車の開発を進めています。

 その背景にあるのは、もちろん環境意識の高まりという側面もありますし、日本においてはエネルギー自給率を高めるといった安全保障上の問題もあります。

 さらには、電動化を標榜することで株価を押し上げる要因になるといったような、経済金融上の狙いもあると考えられます。

 このように、なぜ世界各国が、そして世界各国の自動車メーカーが電動化を推進するのかという点については非常にさまざまな視点があるため、ここでは深く述べませんが、電動化の足音は一般の人々にも確実に聞こえつつあることは間違いないでしょう。

 一方、日常生活においてみれば、クルマの電動化がまだそれほど実感の湧くものでないこともまた事実でしょう。

 今でこそHVは主流になりつつありますが、それでも「ガソリン車よりは燃費が良い」という程度の認識というのが正直なところではないでしょうか。

 実際、ほとんどのユーザーが定期的にガソリンスタンドへ行くというスタイルは、モーターリゼーションが浸透した1960年代からそれほど変わってはいません。

 クルマにまつわるライフスタイルが大きく変わるという意味では、やはり電動化の終着点ともいえるEVに乗り換えることが必要不可欠といえます。

 現在では、日産「リーフ」やテスラ「モデルS」といったEVもすでに市販されており、かつてに比べれば、都市部においてEVを見かけることも多くなりました。

 しかし、市場全体で見れば、前述の通り、新車販売台数におけるEVの割合は1%未満であり、普及しているとはいい難いのが現状です。

 では、なにがEV普及のさまたげになっているのでしょうか。

 一般の人々にとって、EV購入のさまたげになっているのは「航続距離」と「充電環境」、そして「価格」であると考えられます。

 まず「航続距離」ですが、最量販EVであるリーフの最大航続距離はWLTCモードで458km(62kWhバッテリー搭載車)となっています。

 一方、同社のHVモデルである「ノート」のWLTCモード燃費は28.4km/Lであり、36リットルというタンク容量と掛け合わせると、単純計算で1022.4kmの航続が可能です。

 実際には、乗り方によって航続距離は大きく変化するため単純には比較できませんが、HVやガソリン車に比べて航続距離が弱点であるEVは、「これまでに乗っていたクルマと同じように使えない」という点で、一般ユーザーは二の足を踏むことでしょう。

 EVの特徴である「充電」についても、ユーザーのライフスタイルによってはデメリットになってしまうのが現状です。

 EVを所有するためには、同時に充電環境を整える必要がありますが、自宅に充電器を設置するためには、賃貸契約のマンションや戸建てでは現実的に難しく、持ち家である必要があります。そのうえで、十分なスペースも求められます。

 地方部在住であれば、比較的クリアしやすいかもしれませんが、その一方で地方部では一般に一走行あたりの距離が長いため、そもそもEVが適していないという側面もあります。

 反対に、一走行あたりの距離の短い都市部では、持ち家を持つことのハードルがあがるというジレンマがあります。

 それでも、EVに関心がある人は少なくないかもしれません。しかし、もっとも現実的な問題は「価格」です。

 リーフの場合、大型の62kWhバッテリー搭載車の「X」グレードが、441万1000円、小型の40kWhバッテリー搭載車でも「X」グレードは381万9200円となっています。

 この価格差はほぼバッテリーのコストと考えて差し支えないでしょう。一方、ノートの場合は最上級グレードの「X」グレードでも218万6800円となっています。

 リーフとノートでは車格も装備も異なるため一概には比較出来ません。また、EVではより多くの補助金や税制メリットを得られる場合があり、なおかつ日々の充電コストもガソリン車の給油コストに比べれば安くなる傾向があるため、トータルコストで考えればその差はより小さくなります。

 それでも、一見したときの価格の高さや、トータルコストを計算する際の複雑さを考えると、二の足を踏んでしまうのも無理はありません。

■まだEV普及の課題はある? 寒冷地や整備などはどうなるのか?

 これら以外にも、EVは寒冷地に弱いという意見も根強くあります。2020年12月に関越道で発生した立ち往生のトラブルでは、2000台あまりのクルマが最大で2日間にわたって大雪の高速道路上で取り残されました。

 そもそも寒冷地ではバッテリーのパフォーマンスが悪くなるうえ、「電欠」を起こしてしまうとガソリン車以上に復帰が難しいなどの理由で「EVで立ち往生してしまったらどうすればよいのか」というコメントがインターネット上でも多く見られました。

 幸い、立ち往生した2000台あまりのなかにEVは皆無だったと見られますが、それは現時点で寒冷地ではEVが適していないということを物語っているといえるかもしれません。

 しかし、トヨタは2021年4月19日に新型EVとなる「bZ4X」を発表していますが、車両概要として、「回生エネルギーの活用に加え、停車中も賢く充電をおこない、EVならではの環境性能をさらに上積みする、ソーラー充電システムを採用。冬場などでもお客さまに不便を感じさせない航続距離を確保」と説明するように今後は寒冷地での課題も解決されるかもしれません。

現時点では1回あたりの充電時間も普及の足枷となっている現時点では1回あたりの充電時間も普及の足枷となっている

 また、EVをはじめとする電動車は、ガソリン車以上に整備が難しいというデメリットもあります。

 モーターをはじめとする基幹部品は、正規ディーラー以外で整備をするのはほぼ不可能と考えたほうが良いでしょう。

※ ※ ※

 ここまで、一般ユーザーにとってEVが普及しない理由を述べてきました。これ以外にも、EVの普及には数え上げればキリがないほどの課題があるでしょう。

 しかし、だからといってEVが普及しないとはいえません。日本でクルマが走るようになっておよそ100年、一般の人々に普及するようになっておよそ50年、これだけの時間を経て、いまのカーライフスタイルが成立しているのです。

 環境問題やエネルギー安全保障上の問題を考えると、電動化が進んでいくことは疑いようがありません。

 航続距離や充電環境、価格といった現時点での課題は技術の革新や法整備によってゆるやかに解決していくことでしょう。

 一方、ガソリン車もある日から突然無くなるということもありません。数十年という長い時間をかけて、ゆっくりと電動化社会へとシフトしていくと考えられます。

 したがって、現時点でガソリン車を好む人はガソリン車を買えばよく、EVに関心がある、あるいはEVのほうがメリットがあるという方はEVを買えばよいでしょう。

 こうした過渡期におけるわれわれ一般ユーザーは、さまざまな選択肢があるということをむしろ喜ぶことが大切なのではないでしょうか。

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