自工会豊田会長 クルマの100%電動化に言及!「e-フューエル」が実現する日本らしいカーボンニュートラルとは
くるまのニュース / 2021年4月27日 19時10分
2021年4月22日おこなわれた日本自動車工業会の定例会見で、豊田章男会長は東京モーターショー2021の中止とカーボンニュートラルについて言及しました。日本におけるカーボンニュートラルは、どのように進めていくべきなのでしょうか。
■カーボンニュートラルに役立つ「e-フューエル」って何?
毎月おこなわれている日本自動車工業会(自工会)の会長の定例会見ですが、このところ豊田章男会長の本音トークが、メディアを通じてユーザーの間でも大きな話題になっています。
そうしたなか、2021年4月の定例会見では、ふたつの発表がありました。
ひとつは、2021年10月に開催を予定していた東京モーターショーの中止決定です。
新型コロナ禍の出口がいまだに見えないなか、開催における入場者の安全確保に対する不安が解消できず、オンラインなどでの開催も検討したといいますが、やはり2019年開催で入場者に好評だったリアルな体験の実施が難しいと判断したことで最終的に中止が決定しました。
そのなかで「次回の『東京モビリティショー』を期待して欲しい」(豊田会長)という表現があり、ショーの名称も含めて、今後モーターショーの在り方自体が大きく変化することを示唆しました。
そしてふたつ目の発表は、今回の定例会見での主要テーマである「カーボンニュートラル」についてです。
「カーボンニュートラルの本質を『正しく理解』し、みんなで対応することが必要」として、メディアやユーザー、そして日本の自動車産業界全体に対して訴えかけました。
そのうえで、日本は欧米や中国とは違うカーボンニュートラルを目指すべく「日本らしい方法として、カーボンニュートラル燃料の研究開発と利用促進を進めるべきだ」と主張したのです。
カーボンニュートラル燃料とは、「e-フューエル」のことを指し、CO2と水素から作られる合成燃料で、ガソリン、ディーゼル燃料、ジェット燃料の代替として使うことができます。
発電所や工場から排出されたCO2を再利用することで、カーボンニュートラルに役立つという考え方です。
e-フューエルを日本で利用するための方法は大きくみっつあります。
ひとつ目は、日本国内で排出されるCO2と、日本国内で生成した水素を使う方法。ふたつ目は、水素を海外から輸入する方法。
そしてみっつ目は、海外で製造したe-フューエルを国内へ輸入する方法です。海外から輸送時に使う船舶でも、e-フューエルを使います。
■政府の新車100%電動化宣言で新車販売店やユーザーに迷いも
世界がEVシフトへと大きく舵を取るなか、なぜ自工会はこのタイミングで「e-フューエル」の重要性を強調したのでしょうか。
カーボンニュートラルという考え方は、2010年代後半から世界各国で一気に広まり、国や地域での政策として達成目標を掲げるようになりました。
トヨタの新EVシリーズ「bZシリーズ」第1弾の「TOYOTA bZ4X」
そのなかで、運輸分野でのCO2排出の割合が多い自動車について「20XX年までにガソリン車やディーゼル車の新車販売禁止」という厳しい方策が目立つようになったのです。
日本では、2020年12月に経済産業省が「グリーン成長戦略」を公表し、自動車については「2030年代半ばまでに軽自動車を含めて新車100%電動化」という目標を掲げました。
さらに、年が明けて2021年1月の通常国会の施政方針演説で、菅義偉総理が「2035年までに」と新車100%電動化の年数を明示したのです。
そのため、メディアでは「日本でも今後、一気にEVシフトが進む」といった報道が目立つようになりました。
市場に対する影響は極めて大きく、例えば筆者(桃田健史)が複数ブランドの新車ディーラーの現場で話を聞くと「いまガソリン車を購入しても本当にいいのか?」という新車購入に対する迷いを示すユーザーが増えているといいます。
これに対して、ディーラーマンとしてもはっきりとした答えができず困っているというのです。
また「ガソリン車やディーゼル車の下取り価格が一気に低下するかもしれないが、いつ頃までに売ればいいのか?」といったユーザーからの問い合わせもあるといいます。
こうした声は、自動車メーカー各社を通じて自工会でも把握しているはずですので、今回の会見でも、カーボンニュートラルに対する正しい理解を広めるため、オンラインなどでカーボンニュートラルと自動車の関係についての専用コンテンツを近日中に公開するといっていました。
自工会によると、現在の日本市場は新車市場で約4割がハイブリッド車ですが、保有台数約7800万台でみるとハイブリッド車は1割程度に留まっています。
新車ライフサイクルが約15年であり、2021年現在の保有台数のすべてが電動化シフトするには、政府が掲げるカーボンニュートラル達成年の2050年より先になってしまうと、自工会では考えています。
そのため、重要なことは既存の保有車や、現在発売しているガソリン車やディーゼル車が今後中古車になって市場の残っていても、e-フューエルとして燃料がカーボンニュートラルになっていれば、日本全体としてのカーボンニュートラルにつながるはずだ、という考えにつながります。
こうした発表に対して、記者からは「世界のEVシフトの潮流に取り残されないのか?」という質問が出ましたが「大切なことは、ゴールがカーボンニュートラルであること。そのために(施策を実施する)順番を間違えないでいただきたい」と、豊田会長は政府やメディアに対して釘を刺しました。
この会見がおこなわれた4月22日は、日本時間の夜にアメリカのバイデン大統領が主体となる環境サミットがおこなわれる予定で、そのなかで各国は「20XX年までに新車100%電動化」について改めて強調する可能性があります。
日本の自工会としては政府に対して「出口戦略に対する意識を国民全員がしっかり持った、日本らしいカーボンニュートラル政策を望む」という強い意志を示したことになります。
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