高速道路で右車線を走るトラックがいるのはなぜ? ゆっくり追い越しするのには理由があった
くるまのニュース / 2021年5月2日 9時30分
高速道路でトラックは、基本的に1番左側の「第一走行車線」を走行するようにと看板が掲げられている区間があります。それでもときどき、右側の追い越し車線などを走行するトラックを見かけます。トラックが右側の車線を走ることがあるのはなぜなのでしょうか。
■トラックの走行区分 高速道路は左なのに一般道は右!?
高速道路では、トラックが描かれた標識を目にすることがあります。これは基本的にこの区間ではトラックは1番左側の「第一車両通行帯(以下、走行車線)」を走行するようにと指示されたものです。
それでもときどき、右側の追い越し車線などを走行しているトラックを見かけることがあります。しかもその追い越し速度がゆっくりで、後続車が詰まってしまうケースが多いものです。
高速道路でトラックが第二通行帯(右側の走行車線)を走行することは、違反ではないのでしょうか。
高速道路の走行区分ですが、道路の法律である「道路交通法」の第20条には「車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない」と定められています。
クルマやバイクは原則として1番左側の車線を走るというもので、法的には右側の車線(3車線以上ある場合は1番右側)は前走車の追い越しのための車線となり、「追い越しが完了したらすみやかに左側車線に戻らなければならない」ということになります。
とくにトラックの場合、「特定の種類の車両の通行区分」の標識が出ている区間はその車線しか走行できないことになっています。
また標識がなくても原則として左側車線を走行しなければいけないことになっており、右側車線を走行しているトラックはあくまで追い越し中ということです。
もちろん一般的な乗用車でも右側車線(追越車線)を走り続けることは違反で、最近では「通行帯違反」をメインに取り締まる覆面パトカーが増えているような印象も受けます。
※ ※ ※
高速道路ではトラックは1番左側を走るようにという標識が出ていますが、一般道では事情が違い、トラックなどの「特定の種類の車両の通行区分」の標識が右側車線についている一般道があります。
高速道路では左側なのに、一般道では右側を走るように指示されるのはどういうことなのでしょうか。
これは環境対策の一環だといわれています。トラックが右側(中央寄り)を走ることで、道路の沿線から騒音や振動、排ガスを少しでも遠ざける狙いがあります。
また歩道と車道の間にある街路樹などの接触から大型車両を遠ざける目的もあるでしょう。
左側車線と右側車線は僅かな差ですが、それでも騒音は数dB違うとの調査報告もあり、周囲の環境への影響がかなり違ってくるようです。
さらに、「特定の種類の車両の通行区分」によっては曜日や時間帯で通行禁止となる区間もあります。
たとえば東京の23区をぐるりと囲む環状7号線などは、土曜日の夜22時から日曜日の朝7時まで大型貨物・特定中型貨物・大型特殊の通行が禁止されています。これも、騒音や振動への対策のひとつです。
もちろん、トラックが左折するために車線を変更するのは合法です。少しでも先に行くために車線変更を繰り返したり、左側車線を使用しての追い越しなどは禁止されているということです。
■高速道路でトラックが右側車線を走るのには理由があった
さまざまな規制があるトラックですが、高速道路で右側車線を使って追い越しするケースがあるのはなぜでしょうか。
高速道路でトラックが左側の第一車両通行帯以外を走行する理由について、現役トラックドライバーS氏に話を聞いてみました。
高速道路などでトラックは一番左の「第一車両通行帯」を走行することになっている
「トラックのなかでも大型トラックは、高速道路では時速80kmまでと制限されており、搭載されるスピードリミッターによって出せても時速90kmです(総重量8t超の場合)。
荷物を含めると10t近くも重量があるため、1.5t程度の乗用車から見れば加速も鈍く、かなり遅く感じるかもしれません。
また、制動距離も数倍必要になります。デジタルタコグラフによって制限速度を遵守しながら、安全かつ正確に荷物を届ける必要があります。
ほとんどのトラックドライバーはできるだけ同じ速度で巡航したいと考えており、通常の左側車線でスムーズに走れるならそうしたいのが本音なんです」
ちなみに、トラックによっては運送会社独自の自主規制速度があり、搭載される「デジタルタコグラフ」という機器で速度などを常時記録されています。そのため、昔のような爆走トラックはほとんどいなくなったそうです。
そして、一定の速度で走行することで燃費を稼ぎ、無駄なブレーキも踏まずに走りたいトラックにとって、高速道路の高低差による速度変化もできれば避けたいところです。
しかし上り坂になって速度が低下していることに気がつかない乗用車ドライバーも多く、トラックとしては一定の速度を保ちたいがゆえに車線変更して追い越し車線に出るしかない、というのが実情なのだといいます。
「一度スピードが落ちてしまうと、重量が重いトラックが巡航しやすい速度に戻すまでに時間も燃料もかかってしまいます。また積荷のことを考慮しながら走行するので、急ハンドルや急制動は避けるために車線変更していると考えていただいて結構です」(トラックドライバー S氏)
ちなみに、トラックが別のトラックを追い越すのもこの巡航スピードを維持したいためであり、追い越し速度が遅く感じるのは乗用車のような加速ができないのとスピードリミッターが作動して速度が上がらないからなのだとか。
アクセルをベタ踏みしても時速90kmしか出ないのであれば、追い越しに時間がかかるのも当然です。
「昔と違ってドラレコも装着されて記録も残りますので、あおり運転のようなムチャな運転をするトラックドライバーはほとんどいないと思います。
もしトラックにあおられていると感じた場合は、勾配などによってご自身のクルマの速度が遅くなっている可能性もあります。
こちらも丁寧な運転を心がけているので、トラックの追い越しも優しい目で見ていただければ嬉しいです」(トラックドライバー S氏)
※ ※ ※
制限速度は時速80kmで、デジタルタコメーターで速度を監視されるなど制約の多いなかでトラックは走行しています。
右側車線を走るのは、あくまで一定の速度を保つためで、追い抜きが完了すれば左側の車線にできるだけ早く戻りたいのだそうです。
厳しい条件下でもプロとして走り続けているトラックが高速道路で右側に車線に出て追い抜きしようとしていたら、乗用車側は車間距離を空けて追い越しが完了するまで待つという心の余裕を持ちましょう。
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