300馬力にパワーアップ! ニュルFF最速のDNAを持つルノー「メガーヌR.S.」の走りの進化とは
くるまのニュース / 2021年5月6日 8時10分
2021年1月にマイナーチェンジ、搭載する1.8リッター直噴ターボエンジンがトロフィーと同じ300馬力にパワーアップしたルノー「メガーヌ ルノー・スポール(R.S.)」。その走りはどう進化したのか。モータージャーナリスト岡本幸一郎氏がレポートする。
■6速EDC(DCT)も洗練されスムーズなシフトチェンジを実現
ルノーの中核を担うCセグメントの量販モデルである「メガーヌ」をベースに、F1を頂点とするルノーのモータースポーツ活動を担うルノー・スポールの市販車部門がチューニングを手がけたスペシャルモデルが「メガーヌR.S.」だ。
2008年からは量産FF車として独ニュルブルクリンク最速の座をかけて、これまで幾度となくタイムアタックをおこない、日本の雄であるホンダ「シビックタイプR」、そしてドイツの代表的ホットハッチVW「ゴルフGTI」らとしのぎを削ってきた。
本稿掲載時点では、その宿命のライバルを上回る7分40秒1というタイムを達成しているのが、「メガーヌR.S.トロフィー」をベースに130kgも軽量化された「メガーヌR.S.トロフィーR」になる。
そのメガーヌR.S.が2021年1月にマイナーチェンジを実施した。
最大のポイントは、搭載される1.8リッター直噴ターボエンジンの最高出力が300psになったこと。これは走りに特化したメガーヌR.S.トロフィーと同じエンジンが搭載されたおかげだ。ちなみに最大トルクも420Nmと強力だ。
内外装や装備も改良された。エクステリアではロゴや灯火類のデザインが変わったほか、リアにシーケンシャルウインカーを採用した点がポイントになる。
インテリアでは上質なステアリングや、使いやすいダイヤル式のエアコンコントローラーを採用、また後席用にUSBポートをふたつ設定している。さらには先進運転支援装備もACCなどの機能を充実させるなど、多岐にわたり進化しているのが特徴だ。
その他、走りに関する変更は公表されていないが、試乗すると従来モデルに対して改良されている印象を受けた。
メガーヌR.S.の標準版は、「EDC」と呼ぶ6速DCT仕様となり、足まわりには「シャシースポール」という公道での走行を主体にサーキットまでカバーする位置づけのチューニングが施されている。
走り始めてほどなく、もともと悪くなかったEDCの制御が心なしか洗練され、半クラッチやシフトチェンジがスムーズになり、扱いやすくなったように感じられた。
ルノー「メガーヌR.S.」の走り
300psのエンジンは、ツインスクロールターボの軸受けに、F1マシンでも使用しているセラミックボールベアリングのおかげか、従来の280ps仕様のエンジンとはレスポンスの鋭さが違う。さらには踏み込んだときの吹け上がり方も、より伸びやかになっているようだ。
ドライブモードを選択できるルノー・マルチセンスには、「スポーツ」、「レース」、「セーブ」の各モードのほかに、さまざま要素を任意に設定できる「マイセンス」があり、細かくカスタマイズが可能。またアクティブバルブにより、排気音もアクセルオフ時にレーシングカーのような音を出すような演出も楽しめるようになった。
■4輪操舵「4コントロール」でオン・ザ・レールのコーナリング
メガーヌR.S.のハンドリングの特徴は、これまでどおりメガーヌならではの4輪操舵機構である「4コントロール」の搭載が挙げられる。これは約60km/h(レースモードでは100km/h)を境に、低速では最大で後輪が2.7度まで逆位相、高速では1.0度まで同位相で操舵、タイトなコーナーほど恩恵を実感する。
ルノー「メガーヌR.S.」のインパネ
これまでも俊敏なハンドリングが楽しめる半面、やや危なっかしい挙動を示すこともしばしば見受けられたのだが、それもなくなったように感じられた。小さな舵角でターンインできて、文字どおりオン・ザ・レール感覚でそのままアクセルペダルを踏み増すと、グイグイと曲がりながら加速していくことができるのは、まさしく「究極のコーナリングマシン」とアピールしているとおりだろう。
このドライブフィールには、持ち前の凝った足まわりも効いている。
キングピンを内側にオフセットすることのできる「ダブルアクシスストラットサスペンション」により、転舵時でもタイヤの中心寄りが接地してしっかり路面を捉えてくれ、いわゆるトルクステアも小さいことも感じ取れる。
さらには、ダンパーの中にセカンダリーダンパーを仕込んだ「ハイドロリック・コンプレッション・コントロール」により、大入力時でもリバウンドや振動を抑えてフラットな姿勢を保ち、接地性を確保してくれる。
かつてはFFだと最高出力が200ps以上あっても、空転して意味がないといわれてきた。それがいまや、こうした数々のテクノロジーにより、前輪だけで300psのパワーを余すことなく路面に伝えることのできるトラクション性能を実現できていることにも、あらためて感心させられる。
また、公道走行が主体のシャシースポールは、乗り心地の快適性も十分に確保されていて、今回の改良でよりしなやかになり、ダンピングが効いていながらもよく動き、ストローク感が増したように感じられた。
これまでも、メガーヌR.S.には触れるたびに感心させられてきたが、より完成度の高まった新型に乗り、さらにその思いが強まった。
これからの時代、こうした走りを全面的に訴求するクルマは今後ますます貴重になっていくことだろう。興味のある人は、いまのうちにぜひ乗っておくことをお勧めする。
ルノー「メガーヌR.S.」の走り
Renault MEGANE R.S.
ルノー・メガーヌR.S.
・車両価格(消費税込):464万円
・全長:4410mm
・全幅:1875mm
・全高:1465mm
・ホイールベース:2670mm
・車両重量:1460kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
・排気量:1798cc
・駆動方式:FF
・変速機:6速EDC(DCT)
・最高出力:300ps/6000rpm
・最大トルク:420Nm/3200rpm
・WLTCモード燃費:12.2km/L
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