デビュー当初から優れたコンセプトを持っていた? 現行モデルのルーツとなる車5選
くるまのニュース / 2021年4月27日 6時10分
現在、新車で販売中のクルマのなかには、長い歴史のあるモデルがあります。そうしたクルマには当初のコンセプトから大きく変わっていないモデルも存在。そこで、現行モデルのルーツを5車種ピックアップして紹介します。
■初代から明確なコンセプトを示していたクルマを振り返る
現行モデルのなかにはトヨタ「クラウン」や「カローラ」、日産「スカイライン」など、50年以上もの歴史を刻むモデルがあります。
さらに20年、30年と継続して販売されているモデルもあり、そうしたモデルでは初代から明確を受け継いているケースも存在します。
時代によってニーズが異なることから、コンセプトも変わっていくのは当然なことですが、初代からコンセプトを受け継いでいるモデルは珍しいでしょう。
そこで、現行モデルのルーツを5車種ピックアップして紹介。果たしてコンセプトは受け継がれているのでしょうか。
●トヨタ「RAV4」
コンパクトなクロスオーバーSUVとして誕生した初代「RAV4」
現在、世界中で人気のSUVは、アメリカでピックアップトラックの荷台にFRP製のシェル(ハードトップ)を載せてワゴンのようなルックスにしたモデルが起源といわれています。
初期のSUVは本格的なクロカン車やそれに近い存在でしたが、現在はセダンやステーションワゴン、コンパクトカーをベースにSUV化し、日常での使い勝手も良いクロスオーバーSUVが主流です。
この現在に通じるSUVの先駆け的存在なのが、1994年に登場したトヨタ初代「RAV4」です。
外観はまだクロカン車の面影が強いですが、丸みをおびた都会的なデザインを採用。デビュー時は3ドア車のみでしたが、1995年には使い勝手の良い5ドアモデル「RAV4 V」(ファイブ)を追加しました。
ボディサイズは、全長3705mm(3ドア)/4115mm(5ドア)×全幅1695mm(1760mm:3ナンバー車)×全高1645mmから1660mmと、今の水準からするとかなりコンパクトだったといえます。
エンジンは2リッター直列4気筒を搭載し、駆動方式は前輪駆動ベースながらベベルギア式センターデフを持つ本格的なフルタイム4WDです。
初代RAV4はオンロード走行を重視した新しいタイプの4WD車で、一般の乗用車から乗り換えても違和感のない運転感覚と高い着座位置による取りまわしの良さから、女性からも支持されるなど、高い人気を獲得。
その後、RAV4は代を重ねましたが、4代目は日本で販売されず、2019年4月に現行モデルの5代目が国内で復活を遂げ、発売以来好調なセールスを続けています。
●ユーノス「ロードスター」
2シーターオープンスポーツカー市場を復活させた初代「ロードスター」
1960年代から1970年代にかけて、小型のオープンカーが多数存在しました。なかでもイギリスのメーカーから販売されたモデルは世界中に輸出されるなど、全盛期だったといえます。
しかし、1980年代になるとは小型オープンカーは次々と消滅し、国産メーカーでもスポーティなオープンカーはなくなってしまいました。
そうした状況のなか、1989年にマツダが初代(ユーノス)「ロードスター」を発売。
ロードスターはバブル景気という時代背景ながら安価な価格設定と軽快な走りによって、手軽に乗れるFRスポーツカーとして国内外で大ヒットを記録。
外観デザインは和のテイストも取り入れつつも往年のイギリス製スポーツカーの雰囲気もあり、コンパクトで1トンに満たない軽量な車体を実現し、4輪ダブルウイッシュボーンのサスペンションと相まって優れた運動性能を披露。
エンジンは120馬力を発揮する1.6リッター直列4気筒を搭載し、決してパワフルではありませんが1トン未満の車体では十分なパワーと評されました。
ロードスターのヒットを受けて世界中のメーカーからも同様なコンセプトのオープンカーが発売され、一大ムーブメントに発展したほどです。
その後、ロードスターは初期のコンセプトを継承し、現在の4代目へと続いています。
●スズキ「アルト」
47万円という当時でも驚異的な低価格を実現した初代「アルト」
日本独自の規格である軽自動車は、現在、国内市場でもっとも販売台数が多いジャンルです。
この軽自動車の基礎的なコンセプトを確立したのが、1955年に誕生したスズキ初の4輪自動車「スズライト」といわれ、以来スズキは軽自動車を主力車種として成長を遂げました。
そして、1979年には革命的な軽自動車である、スズキ初代「アルト」が登場。
アルトは税法上(物品税)で有利な商用バンとして開発され、さらに装備も極力簡素化しつつコスト削減をおこなうことで、47万円からという驚異的な低価格を実現しました。
外観も奇をてらうことなく加飾も最小限とした直線基調のベーシックカーといったところで、むしろ飽きがこない印象です。
エンジンは550cc直列3気筒2サイクル(後に4サイクルを追加)をフロントに搭載するFFで、最高出力はわずか28馬力(グロス)でしたが、短距離に特化すれば十分な性能だといえます。
初代アルトは「軽ボンネットバン(軽ボンバン)」と呼ばれる新ジャンルを確立したことから他社も追従し、1980年代は軽自動車が庶民の足として広く普及することに貢献しました。
現行モデルのアルトは2014年に登場した8代目で、装備が充実しながら86万3500円(消費税込)という低価格と610kgから700kgの軽量な車体を実現するなど、初代からのベーシックな軽自動車というコンセプトは変わっていません。
■新たなジャンルのミニバンを確立した2台のモデルとは
●ホンダ「オデッセイ」
ミニバン市場の確立に貢献した1台の初代「オデッセイ」
1980年代までは3列シートを装備した多人数乗車のワゴンといえば、1BOXタイプの商用バンをベースとしたモデルが主流でした。
その後、1990年代になると現在のミニバンに類するモデルが登場しますが、かつての1BOXタイプの名残でFR車が多く、室内の広さは特筆するほどではありませんでした。
そうしたなか1994年にホンダから初代「オデッセイ」が登場。5代目「アコード」のシャシがベースだったことからFFを採用し、低床の広い室内を実現。
6人乗りもしくは7人乗りの3列シートのミニバンとして、大ヒットを記録しました。
ボディは海外での展開も想定していたことから3ナンバー専用サイズのステーションワゴンタイプで、着座位置やドライブフィールはセダンからの乗り換えでも違和感が少なかったこともヒットの一因といえます。
発売当初に設定されたエンジンは2.2リッター直列4気筒のみで、トランスミッションは4速ATを設定し、コラムシフトを採用したことから前席から後席へのウォークスルーが可能でした。
また、後部ドアは1BOXバンのイメージと決別する意味でヒンジドアを採用。当時は電動スライドドアの普及以前だったからか、ユーザーからも不満はなかったようです。
オデッセイのヒットを受け他社も同様なFFミニバンを開発して追従し、ミニバンはファミリーカーの定番車種となりました。
なお、現行モデルは2013年にデビューした5代目で、さすがに時代の流れには逆らえず、シリーズ初の後部スライドドアを採用しています。
●三菱「デリカ スターワゴン4WD」
ミニバンながら本格的なクロカン車という新ジャンルを確立した初代「デリカ スターワゴン4WD」
前述にある近代的なミニバン登場以前の多人数乗車モデルの1台が、1979年に発売された三菱「デリカ スターワゴン」です。1BOXバンの「デリカ」をベースに、ワゴンに仕立てられました。
このデリカ スターワゴンに画期的な4WDモデルが追加されました。
1982年に登場したデリカ スターワゴン4WDは、手動でトランスファーギヤを切り替えるパートタイム式4WDで、シャシは本格的なクロカン車と同様の強度が高いラダーフレームを採用。
足まわりはフロントにトーションバースプリングのダブルウイッシュボーン、リアがリーフスプリングのリジッドアクスルとし、ストロークを長くすることで高い悪路走破性を実現しました。
外観は最低地上高が高められて大径のオフロードタイヤを装着し、フロントにはガードバーを装備するなど、本格的な4WD車であることを演出。
デリカ スターワゴン4WDはアウトドア派のファミリー層から絶大な人気を獲得し、他メーカーも追従しましたが、デリカほど悪路走破性に特化したモデルは確立できませんでした。
その後は代を重ねて実用的かつ洗練されたミニバンに進化した「デリカ スペースギア」となり、現行モデルの「デリカ D:5」にもコンセプトが受け継がれています。
※ ※ ※
今回、紹介した5車種のように、初代からのコンセプトが大きく変わっていないモデルがある一方で、まったく異なったモデルへと変貌したケースもあります。
たとえば、ホンダ「シビック」の初代はベーシックなコンパクトカーですが、現在はミドルクラスのセダン、ハッチバックです。ほかにもメルセデス・ベンツ「Aクラス」は、初代は小型トールワゴンでしたが現行モデルは背の低いスポーティかつプレミアムなコンパクトカーとなりました。
どちらのモデルもコンセプトの変化が成功したといえますが、実はコンセプトが変わらないことよりも変わることのほうが難しいのかもしれません。
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