新型車のイメージカラーはなぜ人気がないのか? 白や黒が売れるのにはワケがある?
くるまのニュース / 2021年5月6日 10時10分
CMやウェブサイトに登場する新型車のボディカラーは鮮やかな色だったり個性的な色だったりしますが、販売となると、必ずしもこれらのイメージカラーが売れ筋にはならないようです。どのような背景があるのでしょうか。
■メーカーの「こだわりの色」と人気の色は一致せず
クルマにはさまざまなボディカラーが設定されています。新型車が発売されると、テーマカラーなどと称して、個性的な色が用意されることも多いです。色を担当するデザイナーが、車両のコンセプトやデザイン、発売時期の流行なども考えて、こだわりのある色を生み出します。
ところがこの色が、売れ筋になるとは限りません。
例えばトヨタ「ライズ」の場合、カタログやホームページに掲載される外装色はターコイズブルーマイカですが、発売後1か月の時点で発表された販売データによると、ホワイトパールが30%、ブラックマイカが20%、ブライトシルバーが10%の比率でした。
日産「ノート」はビビッドブルー/スーパーブラックの2トーンをメインに掲載していますが、この外装色の販売比率は10%です。最も多い色はピュアホワイトパールで27%を占めます。
三菱「eKクロススペース」は、前面に打ち出される色は、オリーブグリーンメタリック/ホワイトソリッドの2トーンです。このシェアは発売直後で10%でした。最も販売比率が高いのは20%のホワイトパールで、次はチタニウムグレーでした。
このようにカタログやホームページに掲載される色はさまざまでも、売れ筋はホワイト系です。ほかの車種でも、一番人気はホワイト系の色で、次がブラックという順番が目立ちます。
ちなみにホンダ「N-BOX」の場合、発売時点では、標準ボディの外装色に特徴がありました。明るいプレミアムピンクパール、プレミアムイエローパールIIを用意していました。
それが発売直後の販売構成比は、プレミアムホワイトパールが31%、ミストブルーが17%、ブラックパールが14%です。この後にイエローは廃止されました。N-BOXの色についてホンダの販売店スタッフは次のように説明します。
「N-BOXの場合、ホワイトパールとブラックパールの人気が高いです。この2色は中古車市場でも人気色なので、数年後に高値で売却できます。そうなると在庫車も、ホワイトとブラックが中心になり、在庫車はなるべく早く販売したいので値引きなどの条件も好転します。
また、登録届け出までの期間を決めてディーラーオプションのサービスを実施する時も、納期の短い在庫車なら期間内に収まります。そうなるとホワイトパールとブラックパールはお客様の出費が効果的に節約され、台数も増えるのです」
■個性的なボディカラーは「売れなくてもいい」?
それならピンクやグリーンが欲しい時はどうなるのでしょうか。
「ピンクやグリーンは人気色ではないので、在庫車が少ないです。希望される色とグレードが在庫車では合わない場合、メーカーに発注するため、在庫車に比べて値引き額が下がります。
数年後に売却する時の金額も、人気色に比べて安くなるでしょう。在庫車でないと、納期は1.5~2か月なので、期間限定のキャンペーンに間に合わずディーラーオプションサービスなどを受けられない場合もあります」(ホンダの販売店スタッフ)
スバル「XV」
販売店でこのような説明を受けると、ピンクやグリーンに魅力を感じていても、多くのユーザーは在庫車に用意されるホワイトやブラックを選びます。
ホワイトやブラックは、個性的な色に比べると値引きが拡大してディーラーオプションのサービスも受けやすく、納期も短く、さらに売却時にも有利になるからです。逆に個性的な色は、不利な要素が多く、売れ行きも伸び悩みます。
一所懸命に個性的な色を生み出しているデザイナーがかわいそうに思えますが、某自動車メーカー商品企画担当者は「それでも良いのです」といいます。どういうことでしょうか。
「カタログやウェブサイトに大きく掲載されるボディカラーは、その車種の世界観を表現するものです。売れ筋になればうれしいですが、車種の価値を発信する役割を担うので、必ずしも多く売れる必要はありません。
これはテレビCMなどのイメージ映像に似ています。CMでは若い人達が仲間同士でアウトドアに出かけて、スポーツを楽しむ映像が流れたりします。これはフォーカスターゲット、つまり商品コンセプトに合ったユーザー像なので、実際に購入するお客様に合わせる必要はないのです」
以上のようにカタログやウェブサイトで取り扱われる色は、車両のコンセプトや個性の表現手段です。訴求色を売れ筋の色にすると、ホワイトとブラックばかりになって個性を表現できません。
テレビCMの話も納得できます。今は若い人達がクルマをあまり買わなくなり、例えばスバル「XV」の場合、受注段階の年齢構成比を見ると50歳以上が52%を占めました。
しかしXVのコンセプトは、50歳以上の中高年齢層をターゲットにしたシニア向けのクルマではありません。そこでCMでは、若い男女がスポーツを楽しむ映像と「好きに生きよう」というキャッチコピーが流れます。
このように新型車の訴求色もCM映像も、実際の人気色とは違っていて良いわけです。
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