2000万円は妥当! もう二度と作れないニュルで鍛えたダッジ「バイパーACR」の本気度
くるまのニュース / 2021年5月17日 19時10分
ロングノーズショートデッキの典型的FRスポーツカースタイルで、見る者を圧倒する「バイパー」。なかでもニュルブルクリンクの最速タイムにチャレンジし続けた「ACR」の称号がついたモデルは別格の存在だ。
■「コルベット」と人気を二分する「バイパー」
2014年4月に発表されたサード・ジェネレーションの「バイパー」は、ダッジではなくSRTブランドからリリースされた。もちろん、バイパーがシボレー「コルベット」と並ぶ、アメリカを代表するもっとも過激なスポーツカーの1台であることは、SRTブランドにおいても変わらなかった。
●2017 ダッジ「バイパーACR」
最初に登場したSRTバイパーは、スタンダードな「バイパー」と、上級モデルの「バイパーGTS」の2種類であった。長いフロントノーズのなかに収められたエンジンは、いかにもアメリカン・スポーツらしく、8.4リッターという大排気量のV型10気筒OHVであった。
この基本スペックは前作から変更はないが、吸排気システムなどはこのフルモデルチェンジ時にさらに改良され、最高出力&最大トルクは640ps&813Nmにまで向上を果たしていた。
トランスミッションも変わらず6速MTを採用。ただしスタビリティコントロールやトラクションコントロールの搭載で、走行時の安定性は大きく高められた。ちなみに上級モデルのGTSでは、さらにアクティブサスペンションが標準装備化されたほか、軽量化も図られている。
今回RMサザビーズの「オープンロード」オークションに、ドイツから出品されたモデルは、2015年にラインナップに追加設定されたダッジ「バイパーACR」だ。
ブランド名がSRTから再びダッジへと戻っているのは、2014年に当時のクライスラーがSRTブランドの廃止を決定したためである。
出品車のバイパーACRは2017年式となるが、これはバイパーにとって最終年式となるモデルだ。2017年、アメリカの連邦安全基準における車外放出低減規定をクリアできないために、バイパーの生産は中止されたのである。
■「バイパーACR」は公道を走行可能なサーキットモデルだ
バイパーACRのコンセプトは、オンロード走行に必要な法規を満たしつつ、かつサーキットを走ることに強くフォーカスしたモデルということになるだろう。
実際SRT時代には、バイパーは2012年にアメリカ・ル・マンシリーズ、2013年にはル・マン24時間レースに参戦しており、ニュルブルクリンクのノルドシュライフェでも、7分1秒3というタイムを叩き出していた。その人気がアメリカを中心に爆発したのも当然のことだった。
●2017 ダッジ「バイパーACR」
ロングノーズショートデッキの典型的FRスポーツカースタイルの「バイパーACR」(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
さらにバイパーには、「1of1」プログラムと呼ばれるカスタマイズプログラムも導入されていた。現在では多くのスーパースポーツ&プレミアムブランドでも珍しくなくなったこのプログラムだが、バイパーでは実に8000のエクステリアカラー、2万4000のカスタムストライプカラー、10のホイールオプション、16のインテリアトリム、6つの空力パッケージ等々が用意されていた。
出品車をオーダーした、最初の所有者の趣味も素晴らしい。微妙な色調のカスタムレーシングストライプと「ブラスモンキー」ホイール、ボディカラーはメタリックフォレストグリーペイントで、それはあたかもグリーン・ヘル(ニュルブルクリンク)を象徴するかのような仕上がりだ。
さらにこのモデルには、バイパーACRにとってもっとも重要なオプションであるエクストリームエアロパッケージが装備されている。
このオプションには、調節可能なリアウイング、フロントダイブプレーン、フードルーバー、ブレーキダクト、ディフューザーなどの取り外し可能なパーツで構成されており、最高速域ではノーマル車と比較して799.5kgものエクストラ・ダウンフォースを得ることに成功している。これは、当時の生産車としてはもっとも大きな数字であった。
バイパーACRは、間違いなくアメリカの究極的なハイパフォーマンスカーだった。多くの自動車メーカーが次世代のパフォーマンスカーに電動化技術を採り入れようとするなかで、今後バイパーのようなモデルが誕生する可能性はほぼないだろう。
参考までに今回の2017年式ダッジ・バイパーACRの落札価格は、走行距離がわずかに6600kmということもあり、12万−14万ユーロ(邦貨換算約1560万−1839万円)のエスティメートを大きく上回る15万9500ユーロ(邦貨換算約2080万円)であった。その存在が貴重であることを、オークションの参加者は十分に知り得ていたというわけだ。
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