日本でいま、EVってどうなの!? 代表的モデルに見る後悔しない選択とは
くるまのニュース / 2021年5月4日 16時10分
欧州市場や中国、そして北米市場では確実にEV(電気自動車)シフトが起きているが、ここ日本においては、さまざまな理由で「シフト」と呼ぶほどはEVの販売台数が伸びているということはない。ただ日産の初代「リーフ」は、世界初の量産型EVとして2010年に登場するなど、その素地はあるのかもしれない。そこでEV連載第2回は、日本で購入できる代表的なEV3台を紹介、それぞれ日本の道路事情においての長所と短所を考えてみた。
■日本を代表するEV 日産「リーフ」
EV連載の第2回は、日本国内で購入できる3台の代表的なEVを取り上げ、その特徴を比較することにしたい。
トップバッターは日産「リーフ」である。
初代リーフは世界初の量産型EVとして2010年に発売。現在、販売されているのは2017年に発表された2代目で、バッテリー容量は40kWhと62kWhの2タイプが用意されている。ここでは航続距離が長い62kWhモデルを中心に紹介しよう。
リーフは、いわゆるCセグメントのハッチバックボディで、全長はおよそ4.5mとコンパクト。日本のファミリーカーとして代表的なサイズといっていいだろう。モーターは最高出力218ps、最大トルク340Nmのものを1基搭載し、前輪を駆動する。車重が2トンを切ることもあって、エンジン車の燃費に相当する電費は161Wh/km(WLTC)と比較的良好で、このため62kWhのバッテリーで458km(WLTC)の航続距離を実現している。価格は441万7600円から499万8400円だ。
リーフの最大の強みは、やはり日産の製品であるという点だろう。全国にディーラーネットワークが張り巡らされているので、トラブルなどが起きても安心。使い勝手の面でも多くの日本人ユーザーにとって馴染み深く、日本の道路事情を考慮したクルマづくりがなされていると見ていい。
ただし、内外装の質感や走行性能、快適性などの面でヨーロッパの高級車に及ばない点があるのも事実だ。また、充電仕様が日本のCHAdeMOを基本としているのも、有利な点と不利な点がある。
まず、リーフの有利な点は日本全国におよそ8000か所あるといわれるCHAdeMOの急速充電施設を使える点。一方で、実際に運用されているCHAdeMOの急速充電は充電出力が20kWないし50kWが大多数。このため、62kWhのリーフに50kWの急速充電器をつないでも、1時間でおよそ80%までしか充電できない。
しかも、公共の急速充電施設では30分経過したら一旦充電を終了する30分ルールが適用されるので、1時間連続の充電は基本的にできないし、ほかに待っているユーザーがいればその人に順番を譲らなければならない。
結果として待ち時間が長くなり、充電にまつわるストレスはどんどん増大していってしまう。この辺はリーフだけでなく、CHAdeMOもしくは日本の公共充電施設事情に起因する弱点なので、こうした不便はCHAdeMOを使う限り、今後もつきまとうと考えたほうがいいだろう。
■テスラとアウディ「e-tron」それぞれの長所と短所
そんな不便を軽々と乗り越えたのが、世界最大のEVメーカーであるテスラだ。
テスラ「モデル3」
テスラ車もアダプターを使えば全国にあるCHAdeMOを利用できるが、それだけでなく彼らは独自規格の急速充電「スーパーチャージャー」を用意。現在、全国28か所で稼働中だ。しかも、その充電出力はほとんどが120kW。まだごく少数だが、250kWの最新仕様も実用化されている。これはCHAdeMOの2倍から5倍に相当するパワーだ。
スーパーチャージャーは利便性も高く、コネクターをクルマに接続しただけで決済手続きも完了する。充電する前にカードで決済手続きをしなければいけないCHAdeMOの充電施設とは便利さがまるで違う。しかも、CHAdeMOにつきまとう30分ルールも存在しない。
そもそも120kWのパワーでも30分充電でおよそ300km走行分(「モデル3」の場合)の充電が可能だから、かりに30分ルールがあったとしても実際の利便性にはあまり影響しないことだろう。
そんなテスラのベストセラーがモデル3だ。テスラは最近、車両のスペックをあまり詳細に公表しなくなったが、モデル3のロングレンジと呼ばれるグレードは580kmの航続距離(WLTP)を誇り、最高速度は233km/h、0-100km/h加速は4.4秒で駆け抜ける。価格も509万円で、62kWhのリーフと大差ない。
加えて内外装のデザインは未来感に溢れているほか、操作系はダッシュボード上の巨大なタッチスクリーンでほぼ完結しており、ステアリング周辺には2本のレバーとふたつのスイッチしか装備されていないというシンプルさを誇る。
そして、テスラのもうひとつの特徴がオートパイロットと呼ばれる運転支援装置だ。
先に誤解のないように付け加えておくと、オートパイロットは他の量産車と同じように、あくまでもレベル2であり、事故が起きた際の責任はすべて運転者が負わなければいけない。一般的な運転支援装置に比べて作動条件が緩く、また機能性も高いことから、ときに自動運転と呼ばれることもあるが、これは大きな誤解。あくまでも安全確認はドライバーがおこない、常にドライバーが運転可能な状態でなければいけないことを、ここでもう一度、確認しておきたい。
テスラの製品が先進的な思想や傑出した利便性を備えているのは事実だ。しかし、それらが通常の自動車と同じ信頼性で実現されているのかと問われると、私には自信を持って「イエス」と答えることができない。基本的にディーラネットワークを持たないことを含め、テスラには優れた先進性と、それに伴うリスクが併存している。テスラを購入するなら、その点を深く理解しておくことが必要だろう。
3台目として紹介するのはアウディ初の量産型EV、「e-tron」である。
アウディ「e-tronスポーツバック」の走り
アウディと同じプレミアムブランドのEVとしてはジャガー「iペイス」、そしてメルセデス・ベンツ「EQC」などが挙げられるが、SUVであることを筆頭に、価格、性能、さらにはCHAdeMOの使い勝手などはe-tron、Iペイス、EQCの3台についてほとんど共通と考えてもらっていい。
e-tronの良さ、それはアウディの魅力がそのまま受け継がれている点にある。
デザインの良さ、作り込みの丁寧さなどはその代表。乗り心地は極めて快適で静粛性は恐ろしく高い。また、アウディが長年開発してきたフルタイム4WDシステムであるクワトロのノウハウもそのまま受け継がれており、前後のモーターを独立して制御することにより、高い走破性や優れた操縦性を実現している。
95kWhという大容量バッテリーを搭載しているおかげで、航続距離は400km(WLTP)と十分。しかし、同じ理由から車重はおよそ2.5トンと重く、したがってカタログ上の電費も245wH/kmと決してよくない。価格が1300万円オーバーと高い一因も、このバッテリー容量の多さにあるといっていい。
しかも、CHAdeMOを利用している関係で、この大容量バッテリーの良さをなかなか享受しにくいのも弱点のひとつ。一例を挙げると、e-tronの充電容量は最大で50kWなので、30分で充電できるのはせいぜい25kWhほど。したがってもしも電費が245wH/kmだとすれば、30分の急速充電でも100kmしか走れないことになる。したがって長距離走行には不利と言わざるを得ない。
* * *
ここまで見てきたように、3台にはそれぞれの長所があり、短所がある。この辺をしっかりと見極めることが、後悔しないEV選びの第一歩といえるだろう。
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