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その走りは紛れもなくポルシェ!! 初の量産EVとは思えない完成度の高さを誇る「タイカン」

くるまのニュース / 2021年5月10日 11時10分

自動車の環境規制がますます厳しくなってきた現在。普通車のEVだけでなくスポーツ志向の強いEVも、数々の車メーカーが発売を始めている。ポルシェも量産EVとしては初めてのスポーツセダンEV「タイカン」を発売。ポルシェらしいというフィーリングとは一体なんだろうか。

■タイカンのクルマとしての魅力に迫る

 なぜ今、EVが注目されるのか。答えはシンプルだ。それが目新しいからである。

 地球環境を考えて脱炭素社会を目指したいから? もちろん大義としてはそうだ。けれどもひとたび己の頭にEVの存在が大義とともにインプットされたのち、そこからさらに買おうという動機付けになっていくためには、特に日本の場合は欧米と違って個人の環境意識に頼るだけでは難しい。商品が見るからに新しい魅力を発していなければならないし、実際に乗っても新しさを十分に感じさせるようなナカミでなければならない。

 名実ともに目新しい品物でないのであれば、趣味的もしくは嗜好品的な性質の強い高級ブランドからBEVが出てくる理由もまた見当たらないと思う(もちろん、二酸化炭素の排出規制という大義もあるが)。

 マイクロモビリティ(シティカー)領域と高級ブランド車領域という両極がBEVとの親和性が高いというのが昔からの筆者の見立てで、BEVには現状においてなお様々な制約(充電インフラ、航続距離、バッテリーの危険性とリサイクル、電力事情など)がある以上、そういう制約の影響を最小限に抑えることのできる小型車か、制約を経済パワーで乗り越える高級車のいずれかからBEVは一般化していくのだと思う。もちろん、国家の強力な後押しと電池の進化と価格の低下があって、ユーザーコストが劇的に下がるのであれば個人ユースの小型車クラスまで一気にBEV化が進むと思われるが。

 というわけでポルシェ初のBEV、「タイカン」である。既に詳しい解説と試乗リポートはひととおり出回った。実際にディーラーで試乗したというポルシェオーナーやEVファンも多いことだろう。さらには本命というべき「クロスツーリスモ」の予約も始まっている。今回は純粋にタイカンという“クルマ”の商品力に迫ってみたい。

 日頃からありとあらゆるブランドのクルマに試乗する機会のある筆者は、ポルシェらしさの枠組みというものを、歴戦の911マニアたちよりは間違いなく広く、さりとてポルシェをまったく知らない人よりは確実に狭く掴んでいると自負している。ポルシェに限らず、秀でたブランドには必ず“らしさ”がある。その境界線をどこで感じるか。それは経験が決めることでもあった。

■加速だけじゃない全方面でEVの魅力を発揮

 京都の街中からワインディングロード、高速道路をひととおり「タイカンターボS」で走ってみての結論は、紛れもなくポルシェであるということだった。もちろん、その感じ方は先ほども書いたとおり人それぞれで、普段から「911」の「GT3」あたりに慣れ親しんでいる方(マニア)にとっては同じポルシェというには“ほど遠い存在”だろうし、逆にSUVやパナメーラに乗っている人で911の乗り味を知っている方であればタイカンは“紛れもなくポルシェ”ということだろう。

 そう、少しだけサイズの大きい、けれどもクルマとしての商品性が似通った「パナメーラ」と比べると、タイカンの方が911に近い(SUVとの比較ではいわずもがな)。どのようなシチュエーションでも路面に近いところでフラットに駆け抜けるドライブフィールなどは確実に911寄りである。実はタイカンでホームワインディングの嵐山高尾パークウェイを駆けた一週間後に今度は「911ターボS」で走ったのだけれど、目を三角にしない程度で駆け抜けるドライブフィール(と速さ)は実によく似ていた。

 流石にここイッパツの加速は凄まじい。特にローンチコントロールを使っての発進では、ブガッティで経験して以来の、脳の血液が後頭部に寄ってしまうような加速を味わった。テスラ「モデルSプレイド」なら一層凄まじい加速を味わうこともできるのだろうが、タイカンターボSのそれはより確実で安定しており、しかも何度もトライ可能である。そういう意味ではテスラの方がスリリングだったということもできるが。

 もっともタイカンの魅力を加速のみで語ること、つまりはテスラとの比較で語ることは、あまり意味があるとは思えない。なぜならポルシェはテスラに勝つためにBEVのタイカンを出したわけではないと思うからだ。

ルーフ形状などはパラメーラと同じくクーペ風4セダン。アクティブエアロダイナミクスシステムには可動式リアスポイラーも含まれ、3段階で展開される(C)橋本玲ルーフ形状などはパラメーラと同じくクーペ風4セダン。アクティブエアロダイナミクスシステムには可動式リアスポイラーも含まれ、3段階で展開される(C)橋本玲

 結論からいうとポルシェはただただEVのポルシェを作りたかっただけであった。結果、現時点で到達したベストミックスがこのスペックであり、この価格帯のBEVだったのだ。それをテスラと比較すること自体、ナンセンスであろう。

 要するにポルシェは最低でもパナメーラと同じ程度にはポルシェらしく振る舞い、らしく評価されるようなEVを作りたかった。実際に出来上がったタイカンは最新の911に勝るとも劣らぬ総合パフォーマンスを発揮するクルマに仕上がっている。

 総合パフォーマンスにおいて、ポルシェらしくないEVなど必要ない。たとえそれが0−100km/h加速2秒以下で走ったとしても、パイロンスラロームの途中で姿勢を崩すようなクルマなどポルシェでないのだ。吊るしでニュルをまともに走れないようなクルマにもポルシェのクレストをつけるわけにはいかない。街中での乗り味から高速クルージングの信頼感まで、すべてがポルシェでなければならなかった。

 わかりやすい数字だけでは比較などできない哲学がありとあらゆる性能や機能に含まれている。それがポルシェらしさとなって、乗り手に訴えかけてくる。タイカンはBEVだから感動的だったのではなく、それがポルシェらしく新しさをアピールしていたからこそ良いクルマだと思えたのだった。

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