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高齢者の免許返納が減少!? コロナ禍だけではない自主返納にブレーキがかかる訳とは

くるまのニュース / 2021年5月9日 9時30分

重大な事故を起こすリスクが高いとされる高齢ドライバー。運転免許を自主返納する件数が、2020年は減少しました。その背景には新型コロナ禍の影響もあるようですが、それ以外にも免許を返納しない理由があるようです。

■高齢者の免許返納が頭打ちから減少に転じた

 2019年4月19日に発生した、いわゆる“池袋暴走事故”から早くも2年が過ぎました。

 被告人である旧通商産業省工業技術院・元院長の飯塚幸三被告(89)に対して2021年4月27日、東京地裁での公判で被告人質問がおこなわれました。

 各種報道によると、飯塚被告は「アクセルペダルを踏んでいないのにエンジンが高回転になり加速して、クルマが制御できないと思いパニック状態になった」と答え、事故の根本的な原因は自分の運転ミスではなくクルマの異常だというこれまでの考えを変えていません。

 この裁判の行方が気になる人も多いと思いますが、この事件が起り、「運転免許の自主返納」に対する高齢者の意識、そして高齢者がいる家族の意識に大きな影響を与えたことは間違いないと思います。

 ところが、警察庁がまとめたデータによると、2020年の自主返納件数は2019年に比べて4万8641件減少。55万2381件にとどまっています。

 このうち75歳以上が自主返納全体の53%にあたる29万7452件なのですが、前年比で5万2976件も減っています。一方で、75歳未満では前年より4335件増えているのです。

 この75歳以上という年齢層は、交通死亡事故が発生する事案が多くあることなどから、その対処として2017年に道路交通法が一部改正され、運転免許更新時に「認知機能検査」が義務化されています。

 また、2020年の道路交通法改正では、運転技能の確認のための実車試験(2022年実施目途)が追加されるなどの対策が講じられています。

 そのほか、全国都道府県の各警察本部では、事故を未然に防ぐことを目的として、高齢者に対して免許の自主返納を検討してもらうための広報活動などもおこなってきました。

 こうした国や地方自治体のよる動きがあるのも関わらず、2020年は75歳以上の自主返納数が前年比で大きく減少したのはなぜなのでしょうか。

 各種報道によると、2020年といえば当然、新型コロナ禍の影響が考えられるという警察庁関係者の見方もあるようです。

 ただし、運転免許の自主返納件数にブレーキがかかる現象は、地域によってはじつは新型コロナ禍のだいぶ前に現れていました。

 たとえば、世帯当たりの自動車保有率が全国トップレベルの福井県の場合、県内での自主返納件数は2014年の1033人から2017年には約2.5倍となる2674人まで増加しましたが、2018年の時点で2609人と頭打ちになっているのです。

 その理由について福井県の関係者は、「クルマ社会のなかで運転免許がなくなると、高齢者のみの家庭では子供や近所の人などに買い物や通院などを頼みづらくなる」と指摘します。

■自治体が独自に取り組む「限定運転」とは?

 そこで福井県は、高齢者が自主返納した後の生活を維持するために、市町村と連携してさまざまな交通手段の確保を目指しています。

 たとえば、自宅近くまで送迎可能な「自家用有償旅客運送」と呼ばれる地域住民が運転手を務める公共交通や、社会福祉協議会や民間福祉施設による送迎サービスなどがあります。

クルマを運転する高齢者ドライバー(イメージ)クルマを運転する高齢者ドライバー(イメージ)

 それでも、家族や地域コミュニティに対する遠慮、また自分の好きな時間に自由に移動したいという移動に対する基本的な気持ちが優先し、運転を続けるリスクを高齢者自身が十分に承知しながらも自主返納しない人が大勢いるのが現実なのです。

 こうした地域社会における高齢者の生活実態を踏まえて、福井県が2019年から始めたのが「限定運転」という考え方です。

 この「限定」とは、運転免許での「AT車限定」や「眼鏡等」などの「限定免許」とは違い、運転者が自主的に宣言するもので、法的な拘束力はありません。

 具体的には、夜間や薄暮時、雨や雪の日、自宅近辺以外、通学時間帯、長距離運転、高速道路の運転、体調不良等という7つの項目があり、これらのなかから運転者が自主的にチェックマークを入れたカードを運転中に携帯することで、高齢者に安全運転の意識を高めてもらおうという試みです。

 こうした考え方は、福岡県の「補償運転」、また富山県では「やわやわ運転」として各県で独自の宣言内容を盛り込んでいます。

 国としては、「限定免許」として、アクセルとブレーキの踏み間違い防止装置などを装着した「サポカー限定」を2022年目途に導入しますが、全国各地で徐々に広がり始めた走行する時間や場所を限定といった細かい限定要件を盛り込むまでの判断には至っていません。

 免許所持者の年齢分布をみれば、今後は運転免許所持者の高齢化が進むことは明らかです。

 そうしたなかで、自主返納、または免許での限定要因の設定をどのようにバランスさせていくのか、解決に向けてはまだ多くの課題があると感じます。

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