スズキが国内販売2位に躍進! ホンダや日産とは異なる小型車戦略が勝因だった!?
くるまのニュース / 2021年5月22日 18時10分
2020年度の国産メーカーの販売ランキングにおいて、スズキが2位にランクインしました。軽自動車メーカーというイメージが強いスズキですが、小型車にも力を入れたことで、着実に販売を伸ばしています。なぜ小型車を積極的に販売するのでしょうか。
■スズキ国内販売2位に貢献したモデルは何?
2020年度(2020年4月から2021年3月)の国内乗用車メーカー別販売ランキングは、1位:トヨタ、2位:スズキ、3位:ホンダ、4位:ダイハツ、5位:日産、6位:マツダ、7位:スバル、8位:三菱でした。
このなかで、2020年(暦年)を含めて2位にスズキが入ったことが注目されます。
ちなみに2000年代中盤までの順位は、上位からトヨタ、日産、ホンダ、スズキ、ダイハツ、マツダ、三菱、スバルだったことから、近年のスズキは売れ行きを急速に伸ばしているといえます。
現在と10年前の国内販売総数を比べると、2010年の496万台から2020年は460万台に減っています。比率に換算すると7%減で、2020年は新型コロナ禍の影響もあったものの、スズキは62万台から63万台とわずかですが売れ行きを伸ばしました。
ほかのメーカーを見ると、ホンダは4%、日産は27%それぞれ減少。そのためにホンダは3位に、日産はダイハツも下まわって5位になった一方、スズキは2位に上昇したのです。これは消極的な結果のように思えますが、実際は相当な苦労を要するものでしょう。
2010年と2020年の国内におけるスズキ車の販売を比べると、意外なことに軽自動車の届け出台数が下がっていることがわかります。
2010年のスズキの軽自動車届け出台数は56万1492台でしたが、2020年は52万3604台で比べると4万台近く減少しました。
その代わり小型/普通車の登録台数は、2010年は6万3583台だったところ、2020年は10万7247台で4万台以上増加。スズキの国内販売ランキングを押し上げたのは、軽自動車ではなく小型/普通車だったのです。
では、どの車種が好調だったのでしょうか。
スズキの小型/普通車でもっとも登録台数が多いのは「ソリオ」です。2020年には4万342台を登録しました。
2010年のソリオは、同年12月のフルモデルチェンジまでは「ワゴンR」のワイド版だったこともあり、2200台程度にとどまっています。つまり10年前と比べて、2020年のソリオは年約4万台多く登録されています。
逆に「スイフト」は、2010年はフルモデルチェンジの効果で4万4589台が登録されましたが、2020年は2万8108台と減少しています。
ただし現在のスズキには、2010年には設定されていなかった「クロスビー」(2020年の登録台数は1万5546台)や「イグニス」(同2647台)などがあり、「ジムニーシエラ」(同1万6603台)も堅調。どちらかといえば地味な小型車が貢献しているのです。
そのためにスズキは、軽自動車を除いた小型/普通車の登録台数ランキングもスバルと三菱を抜いてマツダに次ぐ5位になりました。2010年は小型/普通車ランキングは7位だったため、順位を大きく上げたのです。
■軽に注力するホンダ・日産と小型車に力を入れるスズキ
なぜスズキは軽自動車ではなく、小型車に力を入れたのでしょうか。一番の理由は軽自動車市場の将来に不安を感じたからです。
軽自動車はもともと薄利多売の商品ですが、近年ではホンダや日産も本格的に力を入れています。
軽自動車2位を誇るスズキ「スペーシア」
とくに2010年以降は、国内で売られる新車の35%前後が軽自動車になりました。2014年にはスズキとダイハツの軽自動車販売合戦が激化した影響で、軽自動車比率が40%へと上昇。2015年には軽自動車税が増税され、軽自動車市場への不安はさらに強まっています。
このような事情から、スズキは2015年に発表した中期経営計画「SUZUKI NEXT 100」において、小型/普通車の国内年間販売台数が10万台以上、軽自動車のシェアは30%以上という目標を掲げました。
海外からの輸入車も含めて小型/普通車を充実させて販売に力を入れた結果、2016年には10万台を販売する目標を早々に達成。そのうえで軽自動車市場におけるシェアも30%を守っています。
いまのホンダの国内新車販売における軽自動車比率は安定的に50%を上まわっており、日産も40%以上を占めています。このふたつのメーカーが軽自動車に力を入れて、なおかつ国内の販売総数を減らしていくなかで、軽自動車が中心のスズキは小型/普通車を伸ばして販売総数も押し上げました。
軽自動車についても、スズキ「スペーシア」はホンダ「N-BOX」に次いで軽自動車の販売2位です。スズキ「ハスラー」は2020年1月に新型の販売を開始して、2020年度は前年度に比べて1.4倍売れました。
スズキ「ジムニー」はいまでも納期が1年と長いのですが、4万4824台を登録して国内販売を支える柱になっているなど、軽自動車を着実に売りながら小型/普通車に力を入れたことで、優れた相乗効果を発揮したというわけです。
※ ※ ※
クルマは1台当たりの単価が高いから、企業規模の割に車種数が少ないです。そのなかで売れ行きが特定の車種に偏ると、人気車が不調になれば販売総数を一気に下げてしまいます。例えば日産の国内販売は、わずか約5年の間に2位から5位まで下がりました。
安定を保つには、各車種を偏りなく堅調に売ることが大切です。スズキが国内2位になった背景にも、著しい不人気車を生み出さず、バランス良く販売してきたことが挙げられます。
結局のところ、自社の商品に対する愛情が成功の秘訣なのでしょう。
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