67年の歴史で初の中止! 東京モーターショーは今後どうなるのか
くるまのニュース / 2021年6月10日 9時10分
日本自動車工業会の豊田章男会長が、2021年秋に開催予定だった東京モーターショー2021をについて、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に開催中止を発表しました。かつてに比べて来場者数や出展者数が減少し、東京モーターショーそのものの存在意義が見直されるなか、今後はどのようなものになっていくのでしょうか。
■新型コロナウイルスの影響により67年の歴史の中で初めての開催中止
2021年4月22日、日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長は、2021年秋に開催予定だった東京モーターショーについて、開催中止を発表しました。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて決定されたもので、オンラインでの開催もおこなわれません。
東京モーターショーは、国内最大級の自動車イベントとして、クルマやバイクの楽しさ、素晴らしさを伝えてきましたが、半世紀以上の長い歴史のなかで初めての中止となったことから自動車業界に激震が走りました。
第1回東京モーターショーが開催されたのは、戦後まもない1954年です。
当初は日比谷公園で開催されていましたが、モータリゼーションの発展にともない1959年より晴海へと会場を移して以降、マイカー時代の到来や完成車の輸入自由化の流れをとともに国際的なモーターショーへと発展。
1966年には来場者数150万人を数える国内有数のビッグイベントに成長しました。
石油ショックの影響などもあり、1973年開催の第20回大会以降は隔年開催となるなど停滞した時期もありましたが、国内自動車産業の発展に合わせて1985年の第26回大会では展示車両は1032台にまで増え、そのうち海外メーカーも40社229台が出展するなど、国際モーターショーとしての地位も確立しました。
入場者数でみると、会場を千葉・幕張メッセに移転して2回目の開催となる1991年がピークとなり、来場者数は201万人に達しました。
その後、入場者数は減少傾向となり、リーマンショック後の2009年には、61万人にまで落ち込んでしまいます。
しかし、第46回東京モーターショー2019では豊田章男会長が先頭に立って「来場者数100万人を目指す」と宣言。
東京オリンピック準備のために、会場となる東京ビッグサイトに制限があるなか、来場者数は目標を大きく超える130万人を達成しました。
「クルマに限らなくとも、みんながワクワクするような未来の生活を見せられるようにしたい」という豊田会長の宣言通り、キッザニアとのコラボのようなファミリーで楽しめるようなコンテンツや、高校生以下を無料にするなどの新しい取り組みが功を奏したといわれています。
そうしたなかで、第47回となるはずだった今回の東京モーターショーは中止となりました。
2021年4月22日の会見で豊田章男会長は次のように述べています。
「前回(2019年)のモーターショーでは、モビリティの楽しさを体感できるプログラムを数多く用意し、130万人を超えるお客さまにご来場いただきました。
今回(2021年)、オンラインも使ったより魅力ある企画を検討してまいりましたが、多くのお客さまに安全安心な環境でモビリティの魅力を体験いただけるメインプログラムの提供が難しいと判断し、開催中止を決定いたしました」
※ ※ ※
前回(2019年)の成功をうけて、2021年の東京モーターショーにも期待感が高まっていたなかでの中止となりますが、次回の開催がどのようなものになるのか自動車業界全体の行方も含めて期待が高まります。
■東京モーターショーは新たなる時代へ
一方、今回の新型コロナウイルスによる影響とは別に、モーターショーのあり方そのものにも変化が訪れています。
これまでの自動車業界の主役だった日欧米市場に代わって、年間販売台数が2500万台以上という巨大な市場を持つ中国市場の存在感が高まっており、日欧米の各メーカーも新型車のワールドプレミアの場に中国のモーターショーを選ぶケースが増えてきました。
また、自動車が単なる移動の道具ではなく、高度な電子機器を備えた技術の集合体となりつつあることを反映し、コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)などのような電子機器関連の大規模展示会のほうに注目が集まり、相対的にモーターショーの影が薄くなっています。
「デジタルが発達して、直接情報をお届けできるようになった今、車を展示して見に来て頂くというスタイルがどこまで効率的なのか考えてしまうのは事実」と、豊田章男会長自身も述べています。
これまでのような、メーカーのプロモーションの手段としてのモーターショーの意味合いはかなり薄れてきていることから、モーターショーのあり方にも変革が求められているのかもしれません。
しかし、東京モーターショーはもう「オワコン」なのかというと、そういうわけではなさそうです。
今回の中止に関する会見の締めくくりとして、「次回はさらに進化した東京『モビリティショー』としてお届けしたいと思っております」と、豊田章男会長自身が力強くコメントしています。
東京モーターショー2019では子供の職業体験の一環としてキッザニアブースが展開された
日本は、自動車販売市場としては今後爆発的な成長を遂げることを期待するのは難しいでしょう。
しかし、日本の自動車産業自体は今後も世界をリードしていけるだけの地力の強さを持っていることは間違いありません。
東京モーターショーは、今後「モビリティ」というより広いカテゴリーのなかで、日本の自動車産業の技術力を世界にアピールするようなショーへと進化していくことでしょう。
※ ※ ※
2021年秋に開催予定だった第47回東京モーターショー2021の中止は非常に残念なことですが、変革の時代を迎え、新たな形で提示されるはずの次回東京モーターショーを期待しておきましょう。
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