今では実現できない? シャープなフロントノーズの車5選
くるまのニュース / 2021年6月3日 6時10分
クルマの外観デザインや売れ筋となるボディタイプは、時代によっての流行であったりニーズで変化しています。かつてスポーツカーといえば、空気を切り裂くようなシャープなフロントノーズの3ドアハッチバッククーペが定番でした。そこで、両方を兼ね備えた往年のスポーツカーを、5車種ピックアップして紹介します。
■トレンドの変化だけでなく、法律の壁もデザインに影響?
クルマの外観デザインにはその時代の流行があり、時間の経過とともに変化しています。また、ボディタイプもニーズが変わることで、人気のモデルは何年かのサイクルで変化してきました。
なかでも1980年代から1990年代は、スポーツカーというと空気を切り裂くようなフロントノーズの3ドアハッチバッククーペというのが定番でした。
3ドアハッチバッククーペはニーズ少なくなったことで数が激減しましたが、低いフロントノーズのクルマが消えたのは、法律の改正も関係しています。
現在は歩行者保護を目的とした法改正によって、フロントエンジンのクルマでは低いボンネット実現することが非常に難しい状況となったことから、近年のモデルはフロントノーズを厚くせざるを得ないということです。
そこで、いまではほとんど見られなくなったシャープなフロントノーズの3ドアハッチバッククーペを、5車種ピックアップして紹介します。
●マツダ「サバンナRX-7」
オールドスポーツカーのなかでも秀逸なデザインの「サバンナRX-7」
1967年に発売されたマツダ「コスモスポーツ」は、世界初の量産ロータリーエンジン車であり、本格的なスポーツカーとして、いまも語りたがれる名車です。
その系譜を受け継いだといえるのが、1978年に登場した初代「サバンナRX-7」(SA22C型)といえるでしょう。
トヨタ「2000GT」に続いて国産車では2例目となるリトラクタブルヘッドライト採用し、小型軽量なロータリーエンジンをフロントミッドシップに搭載することで、低くシャープなデザインのフロントノーズを実現。
また、全体のデザインも空気抵抗を考慮したクサビのようなフォルムの3ドアハッチバッククーペで、実際に空気抵係数のCd値は0.36を達成しました。
エンジンは先代の「サバンナGT」から継承した573cc×2ローター自然吸気ロータリー「12A型」を搭載し、最高出力130馬力(グロス)を発揮。
さらに、1982年には12A型にターボチャージャーを追加した「RX-7ターボ」が登場。最高出力165馬力(グロス)を発揮し、1020kg(GTターボ)という軽量な車体によって、名実ともに生粋のスポーツカーへと進化したといえるでしょう。
1985年には2代目サバンナRX-7(FC3S型)にスイッチし、1991年には3代目にあたるアンフィニ「RX-7」がデビュー。どちらも初代サバンナRX-7のコンセプトを受け継いだスポーツカーとして、高い人気を誇りました。
●ホンダ「クイントインテグラ」
まさにノミで削ったようなシャープなフォルムが特徴の「クイントインテグラ」
かつてホンダは「クリオ」「プリモ」「ベルノ」という3つの販売チャネルを展開。なかでもベルノはスポーティなモデルを中心に取り扱う販売チャネルで、初代「NSX」もベルノ店で販売されました。
このベルノ店から1980年に発売された「クイント」は、「シビック」と「アコード」の間に位置するモデルで、欧州テイストの5ドアハッチバックボディを採用。
しかし、クイントの販売は低迷したことから、1985年に2代目にあたる「クイントインテグラ」を発売しました。
全グレードともDOHCエンジン搭載した3ドアハッチバッククーペとなり、スタイリングから走りまですべてを一新。
外観は、リトラクタブルヘッドライトを採用したショートノーズと低ボンネットが特徴で、リアではサイドに回り込んだラップラウンド・リアウインドウとハイデッキを採用し、見るからにスポーティなウェッジシェイプを実現しています。
数か月遅れで追加された4ドアセダンと5ドアハッチバック(SOHCエンジンを設定)も直線基調のクーペスタイルとされ、シビック以上にスポーティなモデルとして人気を獲得。
その後、クイントインテグラは次世代から「インテグラ」となり、FFスポーツカーとしての地位を確立していきました。
●日産「180SX」
パワフルなエンジンを洗練されたボディに搭載した「180SX」
1988年にデビューした日産5代目「シルビア」は、美しいフォルムの2ドアクーペボディに高性能なエンジンを搭載したFRスポーツカーというコンセプトから、大ヒットを記録。
そこで、日産は次の一手として、1989年に3ドアハッチバッククーペの姉妹車「180SX」を発売。同じくFRのスポーツカーとして人気を博しました。
両車は主要なコンポーネンツを共有していましたが、シルビアが固定式ヘッドライトだったのに対して180SXはリトラクタブルヘッドライトを採用。ノッチバックとハッチバックという全体のフォルムも完全に分けられています。
180SXは当初、最高出力175馬力を発揮する1.8リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載していましたが後に205馬力の2リッターターボと140馬力の2リッター自然吸気に換装。
その後、1993年にシルビアは6代目が登場しますが、180SXは従来型のまま継続して販売され、改良が加えられながらフルモデルチェンジすることなく1999年に7代目シルビアの登場をもって生産を終了しました。
なお、日産のリトラクタブルヘッドライト車は、180SXが最後のモデルでした。
■リトラクタブルヘッドライトでなくても、シャープなフロントノーズのモデルとは?
●三菱「GTO」
よりアグレッシブなフォルムへと変貌した後期型の「GTO」
1990年に誕生した三菱「GTO」は「スタリオン」の実質的な後継車で、北米市場をメインターゲットとするGTカーとして開発されました。
ボディは全長4555mm×全幅1840mm×全高1285mmという堂々としたサイズの3ドアファストバッククーペで、グラマラスで迫力あるフォルムは、新時代のスポーツカーにふさわしいものでした。
デビュー当初はリトラクタブルヘッドライトを採用したフロントノーズでしたが、1993年のマイナーチェンジで固定式ヘッドライトに変更。さらに、1998年にはフロントバンパーのデザインを一新して、よりアグレッシブな印象のフロントノーズとなります。
搭載されたエンジンは3リッターV型6気筒DOHCで、最高出力225馬力の自然吸気と最高出力280馬力を誇るツインターボが設定され、駆動方式は全車フルタイム4WDを採用。
当時、ライバルに対して車重が重いGTOは運動性能では不利でしたが、スタイリッシュなフォルムと4WDによる安定した走りなど、GTカーとしてのポテンシャルは高かったといえます。
そして、2001年に生産を終了し、後継車はありませんでした。
●トヨタ「セリカ」
ハンドリングを重視した最終モデルの7代目「セリカ」
かつて、トヨタの小型スペシャリティカーとして誕生した「セリカ」は、36年という長い歴史を刻むなかで、大きく様変わりしたことがあります。
とくに大きく変貌したのは1985年に発売された4代目で、全車FFとなり、さらに1986年には高性能なターボエンジンにフルタイム4WDを組み合わせた「GT-FOUR」が登場。
ラリーで勝つことも目的としたGT-FOURは、その後6代目まで継承されました。
そして、1999年にデビューした7代目は再び大きくコンセプトが変わり、全グレードがFFとされ、エンジンもすべて自然吸気となります。
ボディは3ドハッチバッククーペのみでコンバーチブルは廃止。縦長のヘッドライトと空気を切り裂くようなシャープなフォルムが特徴です。
エンジンは前述のとおり全グレードとも1.8リッター直列4気筒自然吸気で、トップモデルの「SS-II」には高回転型の「2ZZ-GE型」を搭載し、最高出力190馬力を発揮。トランスミッションは6速MT(SS-II)、5速MT、4速ATがラインナップされました。
足まわりはフロントにストラット、リアにダブルウイッシュボーンを採用した4輪独立懸架となっており、1トン少々の軽量な車体と相まってFFスポーツカーとしてのハンドリング性能を重視。
しかし、すでにクーペの需要は低下しておりセリカの販売台数も好調とはいえず、2006年に生産を終え、歴史に幕を閉じました。
※ ※ ※
現行の国内モデルで3ドアハッチバッククーペというと、トヨタ「スープラ」と日産「フェアレディZ」の2シーター車2台のみです。
かつては5シーター、4シーターの3ドアハッチバッククーペは、さまざまなモデルが各社から販売されていましたが、ニーズの変化にはあらがえずに姿を消しました。
そもそもスポーツカーの需要も低迷している状況ですから、もはや3ドアハッチバッククーペの復活は難しいでしょう。
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