上陸直前! VW新型「ゴルフ」に搭載の48Vハイブリッドって何? プリウスとはどう違う?
くるまのニュース / 2021年6月8日 8時10分
最近、ヨーロッパ車を中心によく搭載されているシステムが「48Vマイルドハイブリッド」だ。まもなく日本上陸するVW新型「ゴルフ」にも搭載されるなど、いま注目となっている。このシステムはどんなものなのか。あらためて調べてみた。
■日本上陸するVW新型「ゴルフ」はすべて48Vマイルドハイブリッドを採用
近年、登場する欧州メーカーの新型車には、お約束のように採用されている技術がある。それが「48Vマイルドハイブリッドシステム」だ。
まもなく日本にやってくる、今年注目の輸入車がVW新型「ゴルフ」だ。この新型ゴルフも48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載している。
新型ゴルフはすでに同年2月に先行受注を開始しており、日本上陸時に登場するグレードが発表されている。1.0リッター直列3気筒ターボの「eTSI Active Basic」「eTSI Active」、および1.5リッター直列4気筒ターボエンジンの「eTSI Style」「eTSI R-Line」と、まずはこの4グレードで展開する。
この1.0リッター、および1.5リッターエンジンはともに「eTSI」、つまり新型ゴルフは、すべてのグレードで48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載して日本にやってくる。
日本にもマイルドハイブリッドと呼ばれるクルマは存在するが、欧州メーカー製はひと味違う。
まず大きな違いは、48Vマイルドハイブリッドは、どこかのメーカー1社だけの技術ではないということだろう。
日本車の場合は、どこの自動車メーカーも自社で開発したハイブリッドを使うのが基本だ。トヨタのハイブリッドシステムである「THS II」がマツダやスバルのクルマに搭載されることはあるが、あくまでも「トヨタが提供した」という形だ。
一方で48Vマイルドハイブリッドは、「LV148」という標準規格があり、複数のサプライヤーがシステムを開発・販売している。欧州では、「ハイブリッドの規格があって、それを複数のサプライヤーが生産していて、自動車メーカーは好きなサプライヤーの製品を選べる」のだ。
日本の場合、自動車メーカーと部品を作るサプライヤーは主従関係的な色合いが強く、しかもメーカーごとに「トヨタ系列」「日産系列」などと呼ばれるようなグループ化が過去に形成されてきた。
最近は、脱系列の動きも見えてきたが、まだまだ完全自由化とはいえない。
一方、欧州の事情は大きく異なる。欧州のサプライヤーは、近年、他企業の合併吸収に熱心で、規模や技術範囲が拡大しているため、「メガサプライヤー」と呼ばれることもある。巨大で技術力もあるため、どこかの自動車メーカーにべったりすることはなく、日本よりも強い発言権を持っているのだ。
そうした自動車メーカーとサプライヤーの関係を背景に、48Vマイルドハイブリッドは生まれてきた。
経緯でいえば、最初にアウディ、VW、ポルシェ、ダイムラー、BMWの5社が48Vマイルドハイブリッドを共通化することを2011年に合意し、2013年に標準規格「LV148」を策定。それをもってサプライヤーに協力を呼び掛け、2016年から量産車が登場するようになった。
自動車メーカーとしては、独自でハイブリッドを開発する手間がかからないというメリットがあり、サプライヤーも上手に作れば複数の自動車メーカーに納入することができるというわけだ。
技術的な内容は、割合にシンプルである。そのシステムは、エンジンスターターと発電機を兼ねるスターター・ジェネレーターと、48Vの二次電池(リチウムイオン電池)、そして電圧を変化させるDC/DCコンバーターで構成されている。
スターター・ジェネレーターはエンジンとベルトでつながっており、減速時のエンジンの回転力を利用して発電する。その電流を二次電池に貯める。そのときの電圧が48Vであるため「48Vマイルドハイブリッド」という名称になった。
もちろん、従来からある12Vの車載バッテリーへの充電もおこなうために、DC/DCコンバーターが48Vから12Vへ電圧を変換している。従来のクルマの電力は12Vだが、それよりも高電圧の48Vにすることでパワーアップと効率アップが見込める。
貯めた電力は、エンジンの始動とアシストだけでなく、幅広い用途が用意されている。たとえば、アクティブ・スタビライザーなどを動かす電力に使ったりもするのだ。どのような便利な使い道ができるのかが、サプライヤーの競争領域ともいえるだろう。
■圧倒的な低コストがメリットだが…
国産メーカーのハイブリッドシステムと欧州メーカー中心の48Vマイルドハイブリッドを比較すると、それぞれにメリットとデメリットがある。
トヨタ「プリウス」などに搭載されているハイブリッドシステム「THS II」や日産の「eパワー」、ホンダの「e-HEV」は、どれもストロングハイブリッドと呼ばれるもの。モーターの出力が大きくてEV走行できる領域が広く、しかも燃費性能も優れるのがメリットだ。
メルセデス・ベンツの「ISG」電気モーター部分
一方で、高出力モーターや高性能な二次電池が必要なため、コスト的にはどうしても割高になる。また自動車メーカーごとに別々にシステムを開発・採用しているので、量産効果が得られにくいのもデメリットとなる。
欧州車の48Vマイルドハイブリッドとほぼ同様のシステムを採用するのがスズキだ。「Sエネチャージ」と呼ぶスズキの方式は、運用電圧が12Vなのが特徴。そのためパワーと効率では48Vマイルドハイブリッドにかなわないし、1社だけの技術ということでコスト面でも、それほど有利なわけではない。
一方48Vマイルドハイブリッドのメリットは、とにかく低コストという点だ。
複数のサプライヤーが製造し、複数の自動車メーカーが採用する。生産数も多く、競争原理も働く。また、減速エネルギー回収とエンジン・アシストという燃費性能だけでなく、シャシ系の制御にも利用できるという応用範囲の広さも魅力となる。
システムが比較的シンプルで、どんなクルマにも採用しやすいということもあって、これから登場する欧州車にはほぼ標準仕様のようになるのではないだろうか。
* * *
メリットの多い48Vマイルドハイブリッドだが、デメリットがないわけではない。というか、非常に大きな問題を抱えている。
それは燃費向上率がそれほど大きくないことだ。じつはこれが大きな問題で、日本式のストロングハイブリッドには燃費性能ではかなわない。
また、これから年々厳しくなる燃費規制をクリアするには、48Vマイルドハイブリッドだけでは到底不可能といえる。
そのためには、新たなストロングハイブリッドやEV化など、さらなる電動化技術を採用するしかない。手軽で便利なシステムだが、あくまでも本命が登場するまでのつなぎという役割なのだ。
そういう意味では、すでにストロングハイブリッドが本流となっている日本車のほうが、ハイブリッド技術に関しては先をいっているといえるのではないだろうか。
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