約45万円の新型車が日本初公開! 安すぎる小型EV「宏光 MINI」 なぜ日本のイベントに展示された?
くるまのニュース / 2021年6月23日 18時57分
中国では「2025年までにEV化率20%前後」という方針により、さまざまな新エネルギー車が登場していますが、なかでも「宏光MINI EV」が、日本円で約45万円という安価なことなどを理由に注目されています。今回、その宏光MINI EVが日本の技術系イベントに出品されたといいますが、なぜ日本で見ることができるのでしょうか。
■中国の超格安EV「宏光 MINI EV」 日本のイベントで初公開!
昨今、日本でもたびたび話題となっている中国の格安EV「宏光MINI EV」が、2021年6月23日から東京ビッグサイト青海展示棟で開催されている「TECHNO-FRONTIER 2021(主催:一般社団法人 日本能率協会)」で日本初公開となりました。
宏光MINI EVは、中国の自動車メーカー「上汽通用五菱」が製造・販売している小型EVです。
上汽通用五菱は上海汽車とアメリカのゼネラルモータース(中国語名:通用汽車)などが設立した合弁会社です。2021年4月に配送大手の佐川急便が導入を発表したEVの生産のみを担当する「柳州五菱汽車」とは協力関係はあるものの、厳密には別法人となっています。
宏光という名前を聞くと今はこの格安小型EVを連想する人が多くなったかもしれませんが、元々は上汽通用五菱が展開するEVではない、普通小型ミニバンのラインナップを指します。
宏光シリーズ自体は中国で人気なミニバンで、近年は「微型バン」(乗用車カテゴリーに入る小型ミニバン)部門でトップに君臨しています。
2017年、2018年の2年間は販売台数50万以上を記録し、乗用車全体でも1位に輝きました。
その後は台数を減らしながらも、依然として販売好調なミニバンであることは確かです。
乗用車全体でも上位を維持しており、2020年は前年比10万台減の27万310台となりましたが、トップ10圏内に入っています(ちなみに1位は日産「シルフィ」)。
そして2020年8月に宏光シリーズ最新モデルとして格安小型EVの宏光MINI EVが発売開始となりました。
既存の7人乗りミニバンではなく、こちらは「MINI」の車名通り、4人乗り3ドアの超小型EVです。
全長2920mm×全幅1493mm×全高1621mmの小さなボディが特徴で、バッテリー容量は9.2kWh(航続距離120km)と13.8kWh(航続距離170km)の2種類が選択可能です。モーター出力は72馬力となっており、最高速度は100km/hにまで達します。
2020年8月に販売が始まったばかりですが、2020年の累計販売台数は4か月強で11万9255台を記録。
中国市場のみならず、全世界でもテスラ モデル3に次いで2番目に多く売れた電気自動車となりました。
さらに2021年1月には中国国内で2万5778台を販売し、中国製モデル3の1万3843台に1万2000台近い差をつけて、中国でもっとも売れた電気自動車の称号を手に入れました。
この人気の高さは、小型ミニバンの宏光同様に価格の安さにあります。3つのグレードが用意され、それぞれ2万8800元(約46万5000円)、3万2800元(約53万円)、3万8800元(約62万7000円)となっています。
これはライバルとなる超小型EVの宝駿「E100」(4万9800元~/約82万円~)、チェリー「eQ1」(5万9800元~/約99万円~)、欧拉「黒猫」(6万9800元~/約116万円)よりも安く設定された価格です。
■日本の「軽」市場は戦々恐々か? なぜ日本で展示?
宏光MINI EVは、現時点では日本では販売されていません。それが今回、日本で開催されるイベントで展示されることとなったのです。どういった経緯で展示されることになったのでしょうか。
今回、宏光MINI EVが展示されている「TECHNO-FRONTIER 2021」の主催団体一般社団法人日本能率協会によると、今回の展示はこのイベントの出展企業や上汽通用五菱は一切関与しておらず、主催者自体が企画したものです。
小さな電子部品が集まって作られる究極の完成体が電気自動車ということと、イベントのターゲットである日本のエンジニアに中国でもっとも売れている小型EVを見てもらうことで、何かのインスピレーションに繋がればという想いで展示されることになりました。
展示の企画自体は2021年2月、3月に立ち上がりましたが、実際に現実味を帯びたのはつい最近の5月、6月に入ってからとのことです。
展示車は現地のエージェントが一般のディーラーで購入し、そこから船で日本に輸送された形となります。
たびたび話題となっている中国製の格安超小型EVが日本で初公開されるということもあってか、来場者からの注目は高いそうです。実際、筆者が取材に訪れた際も多くの来場者に囲まれていました。
では肝心の質感はどうでしょうか。実際に運転はできないものの、ドアの開け閉めや、室内への乗車をおこなってみました。
クルマ自体は、超小型な車体を持ちながらも4人乗りとなっていますが、大人4人での長時間の移動となると少々厳しいところがあります。
しかし、左右のドア開口部は非常に広く、乗り降りがしやすい印象を受けました。これはリアシートへのアクセスをしやすくする狙いもあるでしょう。
筆者は身長187cmということもあり、運転席や助手席に座ってみると、リアモストでもわずかながら窮屈さを感じますが、大抵の人は問題ないでしょう。
質感はそれなり? 中国の激安EVはどれほどものなのか? (撮影:加藤ヒロト)
しかし、リアシートは座面の位置が高く、フロントシートとの空間もわずかなため、大柄な大人が座るには難があります。
そのかわり、後ろにはチャイルドシートを固定するためのISOFIXの金具があるため、リアシートには子供を乗せるのが理想的だと思われます。
トランクスペースは非常に狭く、大人4人フル乗車の状態での積載量にはあまり期待はできません。
ですが、リアシートはフルフラットにできるので、そうすることでより多くの荷物を積むことが可能です。
ちなみに、通常は車体底部に搭載されているバッテリーですが、今回の展示では安全上の理由により取り外された状態となっています。
車体自体のクオリティは、日本の一般的な軽自動車よりも簡素な作りとなっており、価格相応という点が感じられます。
この宏光MINI EVは今回のイベント終了後、名古屋大学の山本真義教授率いるパワーエレクトロニクス研究室が同大学のエネルギー変換エレクトロニクス研究館(C-TECs)にて、6月28日から7月末まで展示されるそうです。
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