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水に浮く車!? 全長3m未満の軽ナンバー車「フォムワン」 災害対応の切り札? 3.11が発端で開発

くるまのニュース / 2021年7月10日 9時30分

最近では、さまざまな小型EVが登場していますが、神奈川県にあるベンチャー企業では水に浮く超小型電気自動車「FOMM ONE(フォムワン)」を販売しているといいます。どのようなクルマなのでしょうか。

■なぜ水に浮く小型EVを開発? きっかけは3.11だった

 昨今では、軽自動車が爆発的に普及しており、幅広い世代から支持を得ています。
 
 そんななか、あるベンチャー企業が水に浮くことのできる超小型電気自動車を開発しました。

 超小型電気自動車の「FOMM ONE(フォムワン)」開発したのは、神奈川県川崎市のベンチャー企業FOMM(フォム)です。

 すでに、埼玉県さいたま市内で、2021年3月下旬にカーシェアサービスの実証実験もおこなっています。

 この実証実験は、小型な車体でより限られたスペースでの有効活用や広い車内空間を生かしての買い物や子どもの送迎など、さまざまなニーズに対応を検討した利便性向上を図るために実施されました。

 また、「ENEOSホールディングス」もこの実証実験の協定を締結しており、各車両に利用する電力の一部を再生可能エネルギーで供給し、低炭素社会の実現を目指しています。

 フォムワンの航続可能距離はNEDC基準で166km、時速は最高速度80km/hで走ることができます。

 軽自動車としてナンバー取得(届出)しているため、高速道路や自動車専用道路を走ることも可能としています。

 製造元のフォムは、自動車メーカーのスズキでエンジン、車体と多岐にわたる設計を担当し、その後、アラコを経てトヨタ車体に移り、ひとり乗り電気自動車「コムス」などの開発に携わった鶴巻日出夫氏が、2013年に立ち上げたベンチャー企業です。

 フォムワンの原型となる「FOMM Concept One Phase I」を2014年に発表し、2018年11月に市販モデルとなるフォムワンを発表して、翌年3月からタイでの量産を始めました。

 フォムのCEO、鶴巻日出夫氏はフォムワン開発の経緯や今後の課題について以下のように話します。

「フォムを立ち上げたのは、2011年3月11日の東日本大震災がきっかけでした。

 避難しようとした人たちが津波に巻き込まれ、多くの命が失われました。
 高齢者や足の不自由な人は自分の足で避難できず、クルマで逃げようとした人たちもいましたが、次々と津波にのみ込まれ、海底に沈んでいきました。

 水面に浮かび、移動することができるクルマがあれば、こうした命を助けることができたのではないかと思い、水に浮かぶ自動車を開発するためにフォムを立ち上げました」

 また、フォムは水に浮かぶことのできるEVの開発、普及を日本国内ではなく、タイで進めているといいますが、その理由について鶴巻日出夫氏は次のように話しています。

「タイは雨期と乾期があり、雨期には洪水など水害も多発します。

 こうした課題を解決するため、最初の販売ターゲットをタイに定めました。

 現地で首相に直談判するなどしてタイで走行できる認可を得ることができ、2019年3月から販売を開始しました。

 タイは自動車の関連企業が多く、部品の調達コストが安いので、クルマづくりにも適しています。販売も好調で一時は生産が追いつかない状態でした」

■水に浮く! 超小型EV「FOMM ONE」の価格はいくら?

 フォムワンは、4人乗りのEV(電気自動車)です。ボディサイズは、全長2585mm×全幅1295mm×全高1550mmと、同じく軽自動車のホンダ「N-BOX」が全長3395mm×全幅1475mm×全高1780-1800mmなので、かなりの小型サイズといえるでしょう。

 バッテリーは、リチウムイオン電池を採用しており、容量は11.84kWhとなっています。

 車重は620kgと軽く、欧州の基準となるNEDC基準では、交流電力量消費率78.4Wh/km。

 交流電力量消費率は数値が少ないほうが、ガソリン車でいう「燃費」が良いとされており、国内のEVが一般的に100Wh/kmを超えることを考えると、比較的良い数値といえそうです。

 なお、駆動用バッテリーは、4個のカセット式を採用。フォムではバッテリー用の充電スタンドの開発もおこなっています。

 そんなフォムワンにはどういった特徴があるのでしょうか。

 フォムワンの最大の特徴は水に浮くことが挙げられ、浮くだけでなく低速で水面を移動することができます。

 通常のガソリンエンジンは空気の吸入口から水が入ると止まってしまいますが、電気モーターであれば、本体の防水さえしっかりとしておけば、水の中でもモーターを動かすことができます。

 また、フォムワンは駆動輪のすぐ近くに左右ふたつのモーターを配置し、タイヤを直接駆動するインホイールモーターを採用しています。

 水面を移動する際には、ホイールがフィンのような役割を果たして、ホイール内部に水を引き込み、インホイールモーターの力強い動きで、水を後方に押し出すことで前に進む仕組みとなっています。

 方向転換をする際には、前輪駆動になっているので、ハンドルを切ると水を押し出す方向が変わり、曲がることができます。水面では人がゆっくりと歩く程度のスピードで移動が可能です。

軽自動車ナンバーが取得できる超小型電気自動車を「FOMM ONE(フォムワン)」軽自動車ナンバーが取得できる超小型電気自動車を「FOMM ONE(フォムワン)」

 さらに、運転席の床部分にはブレーキペダルしかない点も特徴のひとつです。

 アクセルはステアリングの両側にあるパドルで操作し、手前に引くと加速して、パドルを放すと回生ブレーキが機能します。

 さらに足元にブレーキペダルしかないので、アクセルとブレーキの踏み間違えといった運転操作のミスをなくすことにも役立つといえるでしょう。

 こうしたさまざまな特徴を持つフォムワンに関してSNSでは「フォムワンほしい」「昨日試乗してきた。ハンドルのパドルがアクセルというのが未来的。とにかく静か!静かすぎる!」といった好印象の声が見受けられました。

 なお、購入者からの評判も良く、鶴巻社長によれば「小さなクルマなので、狭い路地裏でも運転することができました」などの反響を得ているといいます。

 フォムワンの価格や納期について、前出の鶴巻氏は、次のように話しています、

「フォムワンの価格は275万円です。ほかの大手自動車メーカーのような販売網を持っていないので、詳細や購入の流れなどは、直接問い合わせていただく必要があります。

 納期については、注文から納車までは2か月から3か月程度となっています。

 今後もさまざまな人にフォムワンに乗ってもらいたいので、タイや日本、欧州で生産台数を増やし、日本での価格が200万円を切ることを目標にしていきたいと思っています」

※ ※ ※

 水に浮かぶことができるフォムワンですが、あくまで緊急時の対応でボートのように使うことはできないといいます。しかし、豪雨災害が多い日本では、水没する心配が無いのは画期的なことといえます。

 今後、日本で水に浮く軽EVは見かけることが増えていくかもしれません。

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