実用的なだけじゃなくユニーク! 異色のトールワゴン5選
くるまのニュース / 2021年7月11日 6時10分
3列シートは必要ないけれど室内が広くて良好な居住性に、荷物もそこそこ載せられるクルマというと、トールワゴンが挙げられます。そんな実用的なトールワゴンのなかにはユニークなモデルも存在。そこで、異色のトールワゴンを5車種ピックアップして紹介します。
■おもしろいトールワゴンを振り返る
比較的全高が高いショートボディのモデルとして、トールワゴンがあります。軽自動車ではトールワゴン/ハイトワゴンが主流ですが、登録車にも数多くラインナップされてきました。
トールワゴンはミニバンのような3列シートではないけれど、広い室内で居住性や積載性が良好。さらに取り回しが良くて経済的なコンパクトモデルが主流なため、一定の人気を長く保っているといえるでしょう。
そんな実用的なトールワゴンですが、なかにはユニークなモデルも存在。そこで、異色のトールワゴンを5車種ピックアップして紹介します。
●三菱「ミラージュディンゴ」
斬新すぎるフロントフェイスが特徴ながら仇となった「ミラージュディンゴ」
1999年にデビューした三菱「ミラージュディンゴ」は、同社のコンパクトカー「ミラージュ」の名を冠していますが派生車ではなく、独立したトールワゴン専用車として登場しました。
ミラージュディンゴはトールワゴンの王道をいくフォルムで、コンパクトなサイズと広い室内で実用的なモデルです。
また、発売当初は新開発の1.5リッター直列4気筒直噴エンジン「GDI」を搭載するなど、技術的にも先進性がありました。
一方、大いにユニークだったのがフロントフェイスで、ターンシグナルを内蔵した縦型異型ヘッドライトを採用。テールライトもヘッドライトと同様に縦基調のデザインを採用していました。
振り返るとかなりアグレッシブなデザインですが、このフロントフェイスが不評だったためか、販売は徐々に低迷。そこで、三菱は2001年にマイナーチェンジをおこない、フロントとリアのデザインを刷新します。
とくにフロントフェイスはまったくの別物となるほど大きな改変がおこなわれ、ヘッドライトは一般的な横基調のスクエアな形状とされるなど、かなりオーソドックスなデザインを採用しました。
そして、販売台数の好転が期待されましたが、マイナーチェンジ後も販売台数は伸び悩み、2002年に生産を終了。ミラージュディンゴは三菱の新たなジャンルを切り開く意欲作でしたが、短命に終わりました。
●トヨタ「bB オープンデッキ」
トヨタ車のなかでも異端な存在の1台だった「bB オープンデッキ」
1999年に発売されたトヨタ初代「ヴィッツ」のプラットフォームやコンポーネンツは、トヨタのコンパクトカーラインナップの中核となるように開発され、複数の車種を展開。
そのなかの1台が若者層をターゲットとした開発されたトールワゴンの初代「bB」です。
2000年にデビューした初代bBはボクシーな外観で広い室内もポップなデザインとされ、トールワゴンとしての使い勝手の良さや手頃な価格が相まってヒットしました。
そして、2001年には非常にユニークな派生車「bB オープンデッキ」が追加ラインナップされました。
bB オープンデッキは荷室部分がピックアップトラック状のオープンな荷台となっており、キャビンの荷室部分の上半分を切り取ったようなフォルムです。
なお、コンパクトなトラックに見えますが商用車ではなく、あくまでも5ナンバー登録の乗用車です。
荷台のデッキは長尺物を収納できるほど大きくないため、キャビンとデッキを隔てるドアを開けて室内とデッキを一体化できるアイデアを採用しています。
また、bBが一般的な4ドアだったのに対し、bB オープンデッキでは右側がワンドア、左側はセンターピラーレスの観音開きの変則3ドアで、リアシートへの乗降性や積載性が考慮されていました。
ベースのbBに対してフロントセクション以外のボディパネルがほぼすべて新作されており、かなりの開発費がかかっていたと予想できますが、価格は169万円(消費税含まず)と、bBの中間グレードほどの価格を実現。
アクティブなユーザーをターゲットとしたbB オープンデッキでしたが、やはりトラックのような荷台はユーザーが限定されてしまい、販売は低迷。登場からわずか2年後の2003年には、ラインナップから消滅してしまいました。
●ホンダ「S-MX」
パワフルなエンジンでトールワゴンながら走りも良好だった「S-MX」
前述のbBよりも早く、ホンダは若者をターゲットとしたトールワゴン「S-MX」を発売しました。
1996年にデビューしたS-MXは、当時のホンダが提唱した「クリエイティブムーバー」というコンセプトのもと、「オデッセイ」「CR-V」「ステップワゴン」に続く第4弾です。
S-MXのベースとなったのはステップワゴンで、外観はまさにショートミニバンといえるボクシーなフォルムがユニークかつ斬新でした。
ドアは運転席側が1ドア、助手席側が2ドアの変則4ドアハッチバックとなっています。
ボディサイズは全長3950mm×全幅1695mm×全高1750mmとコンパクトで、さらに全高を1735mmとした「ローダウン」グレードを設定。
内装は前後ベンチシートの4人乗り(後に5人乗り仕様を追加)で、完全にフルフラット化できるシートアレンジを採用し、フルフラット時は一般的なセミダブルベッドと同等のサイズを実現しています。
スタイルやユーティリティに優れたS-MXですが、実は意外だったのが全グレードに最高出力130馬力を発揮する2リッター直列4気筒DOHCエンジンを搭載していたことで、トールワゴンらしなからぬパワフルな走りか可能なところがホンダらしいといえるでしょう、
発売当初は期待どおり若いユーザーから高く評価されてヒットしましたが、次第に、より広い室内で多人数乗車も可能なミニバンへと人気が集中したことから、2002年にS-MXは一代限りで生産を終了しました。
■欧州にもあったユニークなトールワゴンとは?
●メルセデス・ベンツ「Aクラス」
トールワゴンとして登場したことがインパクト大な初代「Aクラス」
高級車ブランドとして世界的に認知されていたメルセデス・ベンツが、1982年にコンパクトセダンの「190E」を発売して、新規顧客獲得の大きな転機を迎えました。
190Eは欧州のみならず日本でもヒットし、その後継車である「Cクラス」も同様にヒット作になります。
そして、メルセデス・ベンツはさらなる顧客獲得のため、1997年には初代「Aクラス」を発売。それまでのメルセデス・ベンツでは考えられないほど奇抜なモデルでした。
ボディはBセグメントの5ドアハッチバックで、同社初のFF乗用車でありトールワゴンです。当時はメルセデス・ベンツがFF車でしかもコンパクトなトールワゴンを出すなど想像できず、かなりインパクトがありました。
全体のフォルムもユニークで、ボンネット部分が極端に短く、ボンネットの傾斜がフロントウインドウに続く全高が高いウェッジシェイプを採用。
1998年にAタイプが日本で発売されると、道路環境にマッチしたサイズや使い勝手の良さ、そして200万円台から設定された価格が相まって、一躍人気車となりました。
その後、2005年には初代からキープコンセプトとした2代目にフルモデルチェンジし、引き続き好調なセールスを維持。そして2012年に3代目へとフルモデルチェンジされたAクラスは、スポーティなフォルムのCセグメント・5ドアハッチバックに一新される大変化がありました。
2018年に登場した現行モデルの4代目では完全にプレミアムコンパクトカーのポジションを確立し、さらにシリーズ初の4ドアセダンが追加されるなど、もはや初代の面影はまったくありません。
●プジョー「1007」
斬新なアイデアを採用した欧州流トールワゴンの「1007」
欧州の多くの国では古くから、日本と同じくコンパクトなクルマが日常の足としてこの好まれてきました。とくにAセグメントやBセグメントのモデルが、現在も数多く販売されています。
そのなかでも異色のモデルといえるのが、2004年に発売されたトールワゴンのプジョー「1007」です。
外観は日本車でもおなじみの背が高いショートワゴンタイプのフォルムですが、ユニークなのは両側のドアが電動スライドドアを採用していたことです。
日本でもトールワゴンのトヨタ「ポルテ」が助手席側にスライドドアを採用していましたが、両側というのはかなり斬新といえるでしょう。
1007もポルテと同じく狭い場所での乗降性を考慮した結果、スライドドアの採用に至りました。
日本でも2006年3月に200万円を切る安価な価格で発売されましたが人気とはならず、2008年12月で販売を終了。プジョーのコンパクトカーに対するイメージがスポーティだったことも、日本で苦戦した理由のひとつではないでしょうか。
1007の後継車はありませんでしたが、間にゼロがふたつ入る車名は現在も「2008」「3008」「5008」と、SUVのシリーズで使われています。
※ ※ ※
日本で人気のトールワゴンですが、近年はアジア圏でも人気があり、なかもインドではマルチスズキ「ワゴンR」が大ヒットしています。
現行モデルは2019年に登場した3代目で、車名はワゴンRですが日本の軽自動車とは別モノです。
インド国内だけでも販売台数はコンスタントに年間15万台前後を推移しており、やはり使い勝手の良さや経済性などが高く評価されています。
日本で確立されたトールワゴンですが、いまやグローバルに展開される存在となりました。
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