【公道走行可】F1のような「ヴァルハラ」はアストンマーティンの新スーパーカーだ
くるまのニュース / 2021年7月15日 20時30分
アストンマーティンが以前からアナウンスしていたハイブリッド・スーパーカー「ヴァルハラ」がついにヴェールを脱いだ。エンジンなどのスペックをレポートする。
■950psのモンスターマシン誕生
アストンマーティン初の量産ミッドエンジン・ハイブリッド スーパーカー「ヴァルハラ」の市販モデルの概要が明らかになった。
ヴァルハラの合計出力は950psで、このときの0-100km/h加速はわずか2.5秒、最高速度は330km/hだ。ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(北コース)のラップタイム目標は、6分30秒に設定されている。
EV専用モードで走行する場合の最高速度は130km/hで、航続距離は15km、予測されるCO2排出量(WLTP)は200g/km未満だ。
ステアリング位置は左ハンドルと右ハンドルの両方から選択可能となっている。
●パワートレインとトランスミッション
パワートレイン・エンジニアリング責任者であるラルフ・イレンバーガーは、次のように説明している。
「ヴァルハラは、私たちがプロダクションカーで何ができるのかを実際に示す最初の機会となります。私たちはV8エンジン用に、専用のインタークーラー、フラットプレーンと呼ばれるクランクシャフトを開発し、強力なハイブリッドシステムと組み合わせました。
そしてもちろん、アストンマーティン初となる専用のデュアルクラッチ・トランスミッションも搭載しています。これらは、ヴァルハラだけでなく将来のアストンマーティン・モデルにとっても不可欠なコンポーネントです。その結果、効率的で超高性能なスーパーカーのための、世界最高レベルのパワートレインが実現しました」
* * *
エンジンはヴァルハラ専用の4.0リッターV型8気筒ツインターボで、エンジンの最高出力750ps/7200rpmをリアアクスルのみに伝達する。これに、2基の電気モーターを備えた150kW/400Vのバッテリー・ハイブリッドシステムによって補完される。
電気モーターは合計3基。フロント・アクスルとリア・アクスルにそれぞれ1基ずつ搭載されており、合計出力950psに対して、さらに204psのパワーを上乗せすることが可能だ。
トランスミッションは、まったく新しい8速DCTを採用。この新しいパドルシフト・ギアボックスは、ハイブリッド時代に対応するために特別に開発されてきた経緯がある。
e-リバース(PHEVの電気モーターを利用し、従来のリバースギアの必要性をなくすことで重量を削減)を備えたトランスミッションは、リア・アクスルにエレクトロニック・リミテッドスリップ・デファレンシャル(e-デフ)を備え、最大のトラクションと俊敏なハンドリングを実現。
電気モーターのパワーは、低速走行時のコントロールとレスポンスを強化し、リバース(後退)時にも使用される。さらに、電気モーターの瞬時に立ち上がるトルクにより、このハイブリッドシステムはV8エンジンをサポートして、センセーショナルな発進加速とレスポンスを提供。
電気モーターとV8エンジンは、DCT内で異なるギアを同時に選択できるため、パフォーマンスがさらに向上し、1000Nmの最大トルク伝達が可能になっている。
●F1譲りのシャシ
ヴァルハラのボディ構造は、新しいカーボンファイバー製コンポーネントを中心にして構築されている。このカーボン・タブの優れた剛性により、サスペンション負荷を絶対的な精度で制御することが可能になった。
サスペンションは、フォーミュラ1スタイルのプッシュロッド・フロントサスペンションが特徴で、インボードに取り付けられたスプリングとダンパーがバネ下重量を減らし、優れたパッケージングを実現している。
リアエンドのマルチリンク・デザインとともに、マルチマチック・アダプティブスプリングおよびダンパーユニットを使用し、走行時の不快な振動を調整して、公道およびサーキットにおける卓越したパフォーマンスを実現した。
サーキット・モードを選択すると、ダウンフォースを最大化するために車高が大幅に低下。公道走行用のモードでは、フロントアクスル・リフトシステムがノーズを持ち上げて、アプローチ・アングルを確保してくれる。
ブレーキは、カーボンセラミック・マトリックスブレーキ(ブレーキ・バイ・ワイヤー・テクノロジーを採用)となり、特別に開発された特注のミシュラン・タイヤ(フロント20インチ、リア21インチ)がセットされる。
■「ヴァルハラ」は、まるで公道走行可能なF1だ
●内外装のデザイン
F1マシンにヒントを得た「ヴァルキリー」の空力哲学がフィードバックされたヴァルハラは、アクティブ・エアロダイナミクス・サーフェイス(とくにフロント・サーフェイス&リア・ウイング)、ベンチュリ・トンネルを通過するアンダーボディのエアフローを巧みに管理することによって優れた空力特性が発揮される。
細心の注意を払ってデザインされた造形により、ヴァルハラは150mph(約241km/h)時に600kgのダウンフォースを発生し、卓越した高速コーナリング性能と安定性を実現する。
「ヴァルハラ」から、アストンマーティンの公道可能なリアミッドモデルの歴史が始まる
ドアは、前方に跳ね上がるようにして開閉し、ルーフにまで延長された形状によって乗降性が向上している。特徴的なルーフ・スクープがV8エンジンのインテークに直接エアを送り込み、追加のサイド・インテーク、リア・インテーク、ベントは、ボディ全体のデザインにスムーズに統合されており、オリジナルでありながら間違いなくアストンマーティンでわかるデザインだ。
コックピットは、ヴァルキリーに比べるとゆとりのある空間となり、クリアでシンプルなエルゴノミクスを備えたペアー・バックコックピット・デザイン、ドライバーに焦点を当てたレイアウトなど、フォーミュラ1に触発されたエレメントはそのまま維持されている。
アストンマーティンHMIシステムは、中央にタッチスクリーンディスプレイを備え、Apple CarPlayとAndroid Autoに対応。調整可能なペダルとステアリングコラムを採用したことにより、シートベースはシャシ構造に固定され、フットウェルは、F1マシンと同様に着座位置よりも高い位置に設置されている。
* * *
アストンマーティン取締役会会長のローレンス・ストロールは、F1との関係も踏まえて次のようにコメントしている。
「アストンマーティン初の量産ミッドエンジン・スーパーカーであるヴァルハラは、ラグジュアリー・ブランドのアストンマーティンにとって、真に変革の瞬間を表すクルマです。ヴァルハラの発売は、当社の製品ラインナップの拡大における重要な次の段階である、ドライバーに焦点を合わせた一連のミッドエンジン・カーを製造するというアストンマーティンの取り組みを示すものです。
モータースポーツの聖地であり、アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラ1チームの本拠地である英国において、このサーキット走行を念頭に置いたスーパーカーを発表することは当然の流れでした。
アストンマーティンは、60年以上の歳月を経てF1世界選手権に参戦し、週末には伝統のイギリスGPに復帰を果たします。これは、アストンマーティンにとって真のマイルストーンとなる出来事です」
アストンマーティン最高経営責任者(CEO)のトビアス・ムアースは、ヴァルハラを次のように評している。
「コンセプトカーの本質を維持することは、それを生産する際に直面する、さまざまな課題に対処する際に不可欠です。ヴァルハラにより、私たちは世界をリードするスーパーカーを製造するという私たちの約束を忠実に守っただけでなく、当初の目標を超えるクルマを製作することに成功しました。
その結果、純粋なドライビングマシンが誕生しました。ヴァルハラは、最先端のパフォーマンスとテクノロジーを実現し、ドライバーとクルマが一体となって、スリリングな走りを楽しむことができるクルマです」
* * *
ヴァルハラは、「ヴァルカン」やヴァルキリーと異なり、最初から公道走行可能なクルマとして開発されている。サーキットでしかドライブできないハイパーカーはハードルが高いという人にも、ヴァルハラならば受け入れられるに違いない。コレクターズアイテムとしても注目の1台だ。
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