小さな高級車に需要はある? トヨタ・ホンダ・日産で相次ぐ「上質」重視! 小型車市場の変化とは
くるまのニュース / 2021年7月21日 9時10分
近年の国内コンパクトカー市場では、「小さな高級車」ともいえる存在が登場しています。トヨタ新型「アクア」や日産新型「オーラ」、ホンダ「フィット」など共通するキーワードは「上質」です。これまで単なる移動の手段だったコンパクトカーにどのような変化が起きているのでしょうか。
■小さな高級車続出? 洗練された上質なコンパクトカーとは
高級車といえば「ロールスロイス」や「ベントレー」、「フェラーリ」、「ランボルギーニ」といったブランドをイメージする人が多いでしょう。
しかし、近年では多くの人にかなり身近な存在であるといえる国産コンパクトカーにも高級仕様が登場しています。
これまで日常の移動手段という印象が強かったコンパクトカーですが、なぜ「小さな高級車」ともいえるような「質感」にこだわるようになったのでしょうか。
前述で挙げた高級車に代表されるブランドのクルマを購入するには、多額の費用と維持し続けられる経済力が必要です。
一方で、これまで高級感や上質感といった印象とかけ離れていた国産コンパクトカーにも高級仕様が登場しています。
2021年7月19日にトヨタはコンパクトハイブリッド車となる新型「アクア」を発売。
新開発バッテリーや最新安全装備を搭載しているほか、レクサスなどで採用されるショックアブソーバーを採用するなど、これまでのコンパクトカーとは異なる低燃費と電動車らしい軽快で上質な走りを両立。さらに、クラスを超えた上質な内外装デザインを採用しました。
このように、これまでのコンパクトカーの印象を覆すような「上質」という特徴を持つ新型アクアですが、小さな高級車にはライバルも存在します。
2020年2月14日にホンダ「フィット」の上級グレードとして発売された「フィットリュクス」は、コンパクトカーながら高級感や上質感といった部分を重視して登場しました。
リュクスのボディサイズは全長3995mm×全幅1695mm、全高は駆動方式によって異なり、2WDでは1540mm、4WDでは1565mmとなっています。
パワートレインは、1.3リッターエンジンのガソリン車と、1.5リッターエンジン+2モーターを組み合わせたハイブリッド車(e:HEV)の2種類をラインナップ。
リュクスは優雅で心地よい時間が過ごせる空間がテーマで、フィットに設定される全5タイプのなかで洗練と上質のスタイリッシュなデザインを採用しています。
外装は、プラチナ調クロームメッキを多用しているほか、ホイールもリュクス専用デザインです。
内装は、質感や手触りのよさを追求した専用の本皮シート(ブラウン/ブラック)や本革ステアリング、アームレスト付きセンターコンソール+ワイヤレス充電、シートヒーターを搭載しています。
SNSでもリュクスについて「内装めちゃくちゃ良い!」「高級感がある」と絶賛の声が多数見受けられます。
リュクスの立ち位置について、ホンダは次のように説明しています。
「これまでセダンやSUVなどに乗られていた年配層のお客さまなどが、ダウンサイズしてコンパクトカーに乗り換えるということ想定した際、サイズは小さくても『上質感』などは保ちたいというニーズに応えるためにリュクスは設定しています」
一方で、リュクスがターゲットとしている層について、首都圏のホンダ販売店の担当者は「落ち着いた雰囲気や高級感を求めるお客さまをターゲットとしています。
残念ながら、知名度がそこまで高くはないのが実情ですが、以前までのフィットに比べ、シャープな印象があるのでかっこ良いとの声は多く見受けられます」
※ ※ ※
ホンダでは、ボディサイズを小さくする「ダウンサイザー」に向けた受け皿として小さな高級車こと、リュクスを設定しているようです。
■新たに登場した小さな高級車! 日産「オーラ」その概要は?
そんなフィットリュクスと近い立ち位置であるといえるのが、日産から「ノート」の上級モデルとして2021年6月15日に発表された新型「ノートオーラ」(以下オーラ)です。
キャッチコピーは「それは、上質をまとったコンパクト」と、これまでのコンパクトカーを超えたモデルといえます。
オーラのボディサイズは、全長4045mm×全幅1735mm×全高1525mmとなっており、ベースのノートとほぼ同等で車幅が若干広くなった程度です。
駆動方式は2WDと4WDの2種類から選ぶことができ、搭載されるパワートレインは1.2リッターエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド車(e-POWER)のみとなっています。
ただし、新型オーラではe-POWERシステムに専用チューニングを施し、よりパワフルな走行性能を可能とすることで、ノートの最高出力85kW/最大トルク280Nmに比べて、新型オーラは最高出力100kW/最大トルク300Nmとパワーアップ。
これにより、アクセルを踏んだ瞬間からスムーズかつ力強い加速でひとクラス上の走り実現し、高速道路での加速や追い越しもゆとりをもった走行フィールが体感可能です。
まさに小さな高級車の新型「オーラ」(手前)。ベースの「ノート」(奥)とは随所に違いが存在
外観こそ、ノートとの区別は付きづらいものの、内装はまさに小さな高級車といえます。
内装は、肌で感じられる心地よさが広がる快適な室内空間をテーマに「レザーエディション(ブラック/エアリーグレー)」とブラックの3種類をラインナップ。
随所に木目調フィニッシャーやツイード調織物(ステッチ付)を多用することで高級感のある空間を演出しているほか、本革ステアリングを採用しています。
ドライバーには「アドバンスドドライブアシストディスプレイ(12.3インチカラーディスプレイ)」が採用されることで、目線移動を少なく必要な情報を確認することが可能です。
居住性では、人間工学に基づき疲労が軽減するように設計した「ゼログラビティシート」を全席に採用。後席にはリクライニング機構を設定することで快適に移動が出来ます。
また、オーディオにはBOSEと日産の共同開発により誕生した、コンパクトカー唯一の「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」が採用され、運転席と助手席シートにスピーカーが設置されています。
ノートとオーラでは、どのような部分が異なるのでしょうか。日産は次のように説明します。
「ノートは、ほかのコンパクトカーや、軽自動車から乗り換えるアップサイザー層をターゲットとしています。
一方で、オーラはこれまで大きなクルマに乗っていた人などが小さなクルマに乗り換えるダウンサイザーをターゲットとしています。
そのため、これまでのコンパクトカーとは異なる『つくり込んだきめ細かさ』や『上質な素材の肌触り』、『空間の心地よさ』、といった感性品質にこだわりつつ、『美しさ』と『考え抜かれた機能性』を両立されました」
※ ※ ※
このように、アクア、フィットリュクス、ノートオーラはそれぞれメーカーを代表するコンパクトカーです。
そんな3台が揃ってコンパクトカーの印象を刷新する小さな高級車路線に進むということは、ユーザーのニーズがボディサイズに縛られない「高級感・上質感」という部分に価値を見出しているからなのかもしれません。
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