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ミニバン3列目から車外放出事故発生! 原因となる「ハイドロプレーニング現象」はどう対処すべきか

くるまのニュース / 2021年8月20日 9時10分

雨の日は事故が4倍に増加するといいます。実際に、雨の日にミニバンがスリップした結果として死亡事故が発生しており、これは「ハイドロプレーニング現象」が原因とされていますが、どのような状況だったのでしょうか。

■中央道(下り)で起きた悲惨な事故

 2021年の夏は、日本全国で大雨による被害が多発しています。また、雨の日は事故が4倍に増加するといいます。
 
 実際に、雨の日にミニバンがスリップした結果として死亡事故が発生しており、これは「ハイドロプレーニング現象」が原因とされていますが、どのような状況だったのでしょうか。

 8月14日夜に中央道(下り)で、20代から50代の男女7人が乗ったワゴン車(E51系日産エルグランド8名定員)が事故を起こしたのは中央道下り線、三鷹料金所を抜けた片側2車線のほぼ直線道路でした。(東京都調布市深大寺東町3丁目)

 事故の衝撃によって3列目に乗っていた3名が車外に放出され、うち2名が死亡。

 1名が頭蓋骨を骨折する重傷を負い、1列目と2列目に乗っていた4名は軽傷となっています。

 今回、現場で任務にあたった警視庁高速道路交通警察隊に話を聞くことができました。

――どのような事故だったのでしょうか?

 ワゴン車には7人が乗っていました。1列目2名、2列目2名、3列目3名。衝突の衝撃で3列目に乗っていた3名が車外に投げ出されました。

 水たまりでハンドルを取られてしまったので立て直そうとしたところ、クルマの左前が路肩側のガードレールにぶつかって反時計回りにスピンし、右後ろもガードレールに衝突。この衝撃で2名が後部ガラスから飛び出しています。

 クルマはさらに回転しながら反対側(中央分離帯側)のガードレールに衝突。ここで3人目が同じ後部ガラスから車外に放出されたと考えられます。

――後部ガラスとはどこのガラスでしょうか?

 クルマの真後ろのガラスです。リアゲートのガラス部分で側面の窓ガラスではありません。

――3列目の3名はシートベルトをしていなかったのでしょうか?

 はっきりとしたことはわかりませんが、2列目には夫婦が乗っており、現場で『私たちはシートベルトをしていたが後ろの3人はシートベルトをしていたかどうか不明』と話されていたので、3列目の3名はシートベルトをしていなかった可能性が高いとみています。

※ ※ ※

 今回のエルグランドは、片側2車線の道路の両サイド(路肩側と中央分離帯側)のガードレールに衝突しており、路肩側で2名、中央分離帯側で1名が同じ後部ドアのガラスを突き破って車外放出されたことになります。

 また、事故の原因は「ハイドロプレーニング現象による可能性が高い」(警視庁)とされています。

 ミニバンのリアゲートのガラスから3人が次々と投げ出されるような事故はどのように発生するのでしょうか。交通事故鑑定ラプター所長の中島博史氏に聞いてみました。

「3列目からの投げ出しは車両の損傷が極端にひどくない限り、後方に向かってだと思われます。

 今回のようにリアウインドウを突き破るか、衝撃で割れたところから飛び出すか、リアハッチが開いて飛び出すか…。

 ただ、側面最後方の窓は狭いので仮に割れても人が抜け出せる大きさではないものがほとんどですし、3人が続けざまに投げ出されることは無理です。

 フロントウインドウからの突き抜けは、車両前方が衝突したときに起こりますが、後席乗員が車外放出されるには衝突からある程度の間、(人体が)天井を滑るように動かなくてはならないので、考えにくいです。

 衝突時にリアの跳ね上げが起きるような形態ならありえないとはいえませんが、それほどの衝撃だとシートベルトをしていた乗員も無事(軽傷)程度では済まないとは思います」

■ハイドロプレーニング現象にはどう対応すべき?

 今回の事故の原因となった可能性が高いハイドロプレーニング現象とはどのような現象なのでしょうか。

 事故当時は雨が降っていて、路面がぬれており、エルグランドのドライバーは「水たまりでスリップしてガードレールにぶつかった」と話しています。

 ブリヂストンでは「雨天時運転のポイント」として公式サイトで以下のように説明しています。

「雨の日の運転は路面が滑りやすくなっているため、スピードは控えめに、車間距離を十分にとって、急ハンドル・急ブレーキを避けて運転することが重要です。

 ハイドロプレーニング現象(水上滑走現象)とはタイヤが水膜によって浮いてしまう現象のことで滑りの原因となります。

 新品タイヤでも速度を上げていくと発生、またタイヤの残り溝が浅くなると、より低い速度からその現象が発生することが試験によって確認できています。

 とくに雨の日の高速道路等では、タイヤと路面の間の水をかき出す力(排水性能)が低くなり、タイヤが浮く状態になることで、ハンドルやブレーキが効かなくなるハイドロプレーニング現象が発生しやすくなります。走行前にタイヤの残り溝をチェックしましょう。」

 溝が7.5mmある新品のタイヤであっても、速度が上がるにつれて路面との接地面積がどんどん少なくなっていくことが分かります。

 実際の試験では、時速80キロでは新品タイヤでも「一部浮いている」状態になり、残り溝1.6mmでは、「ほとんど浮いている」という状態になったといいます。

 雨の日の運転では残り溝と速度に十分な注意が必要ということがわかります。

 また、前出の中島氏は次のようにも説明しています。

「路肩側に車体後方が衝突して投げ出されたということは、その時点では車体がスピンして前後逆向きになっていたのでしょう。

 その前にスピンのきっかけとなる衝突がなかったとしても、ハイドロプレーニングが生じているときに滑っているタイヤの接地(グリップ力)の回復を待たずにブレーキを踏んでしまい、回復した途端に急ブレーキになると車体後部が振り出されるような動きになり、スピンが生じることはありえます。

 車両前部の左寄りに力が加われば(ガードレールや他車との接触)より容易にスピンが生じます」

ハイドロプレーニング現象が起こるイメージ(画像提供:Bridgestone Corporation)ハイドロプレーニング現象が起こるイメージ(画像提供:Bridgestone Corporation)

 では、雨天時の高速走行中にハイドロプレーニング現象に遭遇したらどうしたらいいのでしょうか。

「加速はせず、わずかに緩め気味でアクセルペダルを踏みます。ハイドロプレーニングといっても摩擦力は0ではないので、徐々に減速します。

 減速していくとどこかでグリップが回復しますが、そのときに加速も減速もしないようなタイヤ回転速度にしているのが理想です。

 アクセルを踏み込むと空転して回復が遅れますし、ポンと離してしまうとエンジンブレーキでのタイヤ回転低下が起きて回復時に急ブレーキになります」(中島氏)

 雨天時の高速道路では、ほとんどの場合、速度規制が実施されます。

 ハイドロプレーニング現象は速度が高いほど発生の危険が高まり、発生してしまうとタイヤのグリップ力が完全に失われるので、制限速度を必ず守って走行しましょう。

※ ※ ※

 また、今回の事故では1・2列目に乗っていた4名はシートベルトを正しく着用していたことで軽傷でした。

 事故後のエルグランドの写真を見てみると、ボディはそれほど大きな損傷を受けているわけでもなくしっかりと原形をとどめているようです。

「シートベルトを正しく装着していれば」車内の装備などで軽いケガを負うことはあっても車外放出はありえないと考えられます。

 乗員全員にシートベルトをさせるのは運転者の義務ですが、誰かに促されなくても、クルマに乗ったらすぐに自らシートベルトを着用しましょう。

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