働く車なのに超個性的! かなりイケてる商用バン3選
くるまのニュース / 2021年9月12日 6時10分
私たちの物流を支える存在といえば商用車です。国内ではかつて各メーカーから多数の商用バンやピックアップトラックが販売されていましたが、今ではだいぶラインナップが少なくなってしまいました。そこで、古今東西の商用バンのなかから、ユニークなモデルを3車種ピックアップして紹介します。
■国内外の新旧モデルから厳選したユニークな商用バンを振り返る
私たちの生活に欠かせない存在なのが商用車です。物流や農業、建築、インフラ整備など、さまざまなシーンで活躍し、軽自動車から大型トラック、特殊車両までさまざまな種類が存在します。
なかでも小型の商用バンやピックアップトラックは、かつて各メーカーから販売されていましたが、近年は生産するメーカーも限られており、すでに市場から撤退してしまったメーカーもあります。
一般的に商用車は文字どおりビジネスで使われるものですが、日本では税金など維持費の面で優遇されていることから、クロスカントリー車や軽ボンネットバンなど、乗用車と同じ使い方を前提とした商用車も数多く販売されていましたが、今はそうしたモデルもほとんど淘汰されてしまいました。
一方で、働くクルマでありながら、凝ったデザインやメカニズムを採用したモデルも存在。
そこで、古今東西の商用バンのなかから、ユニークなモデルを3車種ピックアップして紹介します。
●日産「スカイライン バン」
凝ったデザインでスタイリッシュな商用バンである「スカイライン バン」
昭和の時代には、1車種で複数のボディタイプをラインナップするのが一般的で、大衆車でも高級車でもセダンを軸に2ドアクーペ、ステーションワゴン、ライトバンの設定が定番でした。
日産「スカイライン」もそんななかの1台で、1972年に発売された4代目(通称「ケンメリ」)では4ドアセダン、2ドアハードトップ、5ドアステーションワゴン、5ドアバンを設定し、ステーションワゴンとバンは4気筒エンジンを搭載したショートノーズのモデルに限定されていました。
スタイルは、フロントからリアにかけてなだらかな角度でボディライン上がっていく「クラウチングフォルム」で、強く傾斜したリアゲートと相まってスポーティな印象です。
また、ボディサイドの「サーフィンライン」もクーペやセダンと同じく再現されており、ライトバンながらスピード感のあるサイドビューを演出。
さらに、後部ピラー部分に窓はなくボディと一体のパネルとされたことで、左斜め後ろの視界は悪化しますが、デザインのアクセントとなっています。
内装は4気筒モデルのセダンやハードトップよりもさらにシンプルで、とくにインパネまわりはいかにも商用車といった印象です。
なお、1977年に5代目へフルモデルチェンジしましたが、ステーションワゴンとバンも同じく設定され、4代目のスタイリッシュなフォルムが好評だったためかデザインコンセプトが踏襲されました。
●ホンダ「パートナー」
まるでスポーツカーなサスペンションを採用したライトバンの初代「パートナー」
現在、ホンダのラインナップで商用車は軽バンの「N-VAN」のみとなってしまいましたが、かつては初代「シビック バン」や、「シティ PRO」「シビック PRO」など複数のライトバンを展開。
そのなかの1台が、1996年に登場した初代「パートナー」です。
初代パートナーはステーションワゴンの「オルティア」をベースにつくられ、外観はオルティアに準じているものの、無塗装で素地のバンパーや、リアゲートの加飾を省略するなど、コストダウンが図られてシンプルさを強調。
エンジンは1.3リッター、1.5リッター、4WD専用の1.6リッターと3種類の直列4気筒エンジンが設定され、トランスミッションは5速MTと一部グレードを除き4速ATが選択できるなど、他メーカーのライトバンと大きな違いはありません。
しかし、初代パートナーがほかのライトバンと大きく異なるのがサスペンションで、商用車でありながら4輪ダブルウイッシュボーンを採用していたことです。
ダブルウイッシュボーンは路面の追従性や走行安定性に優れており、一般的には高性能車に採用される形式で、4輪ダブルウイッシュボーンといえばもはやスポーツカーと変わりません。
なぜライトバンのパートナーに4輪ダブルウイッシュボーンを採用したかというと、当時のホンダ車の多くはダブルウイッシュボーンを採用しており、オルティアは6代目シビックのプラットフォームを流用していたことで、パートナーも必然的にダブルウイッシュボーンになったという単純な理由です。
この優れた足まわりに加え、1.5リッターの5速MT車では車重1040kgと軽量なのも大いに魅力的です。
その後、2006年にステーションワゴンの「エアウェイブ」をベースとした2代目パートナーが登場すると、サスペンションはフロントがストラット、リアが車軸式となり、本来のライトバンの姿となりました。
ちなみに、ホンダが1965年に発売した同社初のライトバン「L700」は、スポーツカーの「S600」に由来する700cc直列4気筒DOHCエンジンを搭載し、ホンダらしさあふれるライトバンでしたが、商用車にはふさわしくない精密なエンジンとあって短命に終わりました。
●ランドローバー「ディフェンダー ハードトップ 90/110」
プレミアムなSUVながら商用バンに仕立てられた「ディフェンダー ハードトップ」
英国のランドローバーといえばラグジュアリーSUVに特化したメーカーで、そのなかでも長い歴史があるモデルが「ディフェンダー」です。
ディフェンダーの前身にあたるモデルは「ランドローバー」の車名で1948年に誕生。その後ディフェンダーに改名されますがフルモデルチェンジされることなく改良が重ねられ、2015年まで生産されていました。
そして、2020年4月に2代目となる新型ディフェンダーがデビュー。外観は初代をオマージュしながら、最新のデザインエッセンスを取り入れており、クロスカントリー車にふさわしいボクシーなフォルムです。
また、ボディタイプも先代を継承して3ドアショートホイールベースの「90」と、5ドアロングホイールベースの「110」をラインナップしています。
この2代目ディフェンダーは高級なクロスカントリー車ですが、欧州では商用モデルが存在。車名も「ディフェンダー ハードトップ 90/110」と独立しています。
外観は乗用モデルのディフェンダーから大きく変わっておらず、リアサイドウインドウがパネルで暗窓化されているくらいです。
一方、内装はリアシートが撤去されており、前席のスペースから後ろはすべて荷室となってパーティションで仕切られています。
そのほか、エンジンやドライブトレインは乗用モデルに準じており、悪路走破性の高さは変わっていません。
こうした商用車モデルは欧州では昔から一般的で「ライトコマーシャルヴィークル(LCV)」呼ばれ、ランドローバーでは「ディスカバリー」にも設定されており、トヨタ「ランドクルーザー」(日本名「ランドクルーザープラド」)と「ヤリス」、スズキ「ジムニー」(日本の「ジムニーシエラ」に相当)にも、2シーターでリアがすべて荷室のモデルが存在します。
ライトコマーシャルヴィークルは税金などが優遇されているだけでなく、燃費規制対策の面もあるといわれ、近年、増えてきました。
ちなみに、ディフェンダー ハードトップ 90の英国での価格は日本円で約560万円から、110は約660万円からと、商用モデルながらやはり高級車です。
※ ※ ※
ライトバンといえばいかに荷室を広くするか、同時に耐久性が重視されるものですが、今回、紹介したような3車種は遊び心も感じられて非常に面白いクルマです。
また、かつてはトヨタ「クラウン」や日産「セドリック/グロリア」といった高級車にもライトバンが設定されており、個人商店のユーザーが仕事に使うだけでなく、休みの日にファミリーカーとしても使うというニーズもあったようです。
今ではそうしたニーズは無く淘汰されてしまいましたが、高級車の形をしたライトバンというのも魅力的ではないでしょうか。
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