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内燃機関を敵にすると日本は潰れる!? EV化が進む欧州とは異なる日本らしい脱炭素とは

くるまのニュース / 2021年9月11日 14時10分

カーボンニュートラルの達成に向けて、クルマの電動化が進められています。欧州ではEV化が急速に進んでいますが、日本はどうなるのでしょうか。

■欧州のEVシフトが加速! 日本の電動化はどうなる?

 このところ欧州では、メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲン、ボルボ、ジャガーなどEVシフトに向けた動きが急加速していますが、日本での電動化シフトがどうなるのかとても気になります。

 そうしたなか、2021年9月9日開催の日本自動車工業会(自工会)会長定例記者会見で豊田章男会長は、カーボンニュートラル達成に向けて「日本の強みを生かした電動車フルラインナップが前提」と改めて強調しました。

 最近すっかり報道が増えたカーボンニュートラルですが、これは、人間が社会活動のなかで排出する二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの総量を、森林など自然界が吸収するCO2量と相殺することで地球温暖化を防ごうという考え方です。

 具体的には、欧州が2030年までに1990年比で55%削減、アメリカが2030年までに2005年比で50%から52%削減、中国が2030年までに2005年比で60%から65%削減など、高い目標値を掲げています。

 これに対して日本では2030年までに2013年度比で46%削減としています。

 当初は同26%という目標でしたが、グローバルの動きを鑑み、2050年カーボンニュートラル達成に向けて「さらなる高みを目指す」と菅総理が決断したものです。

 グローバルでのCO2削減強化が進められるなか、クルマの電動化については国や地域で規制や方針が異なります。

 もっとも厳しいのが欧州で、2035年までに内燃機関車を禁止します。内燃機関車とは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンのことで、広義では内燃機関とモーターを併用するハイブリッド車やプラグインハイブリッド車も含まれる場合があります。

 ところが欧州の場合、ハイブリッド車とプラグインハイブリッド車を含まないという解釈ができ、欧州ではEVシフトが急速に進み始めたといえるでしょう。

 そのほか、アメリカは2030年までにEV、燃料電池車、プラグインハイブリッド車の比率を市場全体の50%、また中国では2035年までにEV、燃料電池車、プラグインハイブリッド車が50%で、残り50%をハイブリッド車としています。

 そして日本ですが「遅くとも2035年までに軽自動車を含む新車100%電動化」としています。この電動化には、ハイブリッド車とプラグインハイブリッド車を含めるという解釈です。

■これからも日本経済が持続的に成り立つ方法とは?

 今回のおこなわれた自工会の会見では、政府が2021年10月末から英国グラスゴーで開催予定のCOP26(国連気象変動枠組条約・第26回締約国会議)に向けて、「欧州寄り」の考え方を示そうとしているとして、自工会として政府に対して牽制球を投げた印象があります。

 プレゼンでは、カーボンニュートラルの根幹は「敵=炭素」であり、「敵=内燃機関」ではないという表現で、政府の動きに釘を刺しました。

世界初の量産ハイブリッド車として登場した初代プリウス世界初の量産ハイブリッド車として登場した初代プリウス

 日本はハイブリッド車を基盤とした、世界でも極めて稀な電動化立国であり、過去20年間に5400万トンのCO2を削減。これを今後の政府目標に当てはめると、同量を10年間で削減する必要があるといいます。

 それを実現するためには、欧州のような急激なEVシフトではなく、日本がこれまで培ってきた電動車フルラインナップ体制をさらに強化し、加えて内燃機関に水素や合成燃料を使うなど、CO2削減のための選択肢を増やすことが重要だと主張したのです。

 さらに、仮に日本がEVと燃料電池車のみが電動車という欧州方式を取り入れた場合、日本自動車産業界がどうような事態に陥るかも説明しました。

 それによると、2030年で日本国内でのEVと燃料電池車の総生産台数は「200万台には満たない」と予測しており、これが現在の総生産台数1000万台の2割にとどまります。

 また、現状では1000万台のうちの半数にあたる500万台が海外輸出ですが、カーボンニュートラルにおける作る・運ぶ・使うという社会全体を俯瞰するLCA(ライフサイクルアセスメント)の観点では、資源に乏しい日本では海外輸出が難しくなる可能性があります。

 出荷額では、全製造業の2割に相当する約70兆円の自動車産業で、関連する従事者約550万人の雇用に大きな影響が及びかねません。

 要するに、環境と雇用とのバランスを考えると、現状での電動車フルラインナップ体制から急激なEVシフトさせることは、日本全体にとってプラスではないという考え方です。

 そのうえで自工会として、エネルギー政策全体に対する提言を2021年10月に公表することを明らかにしました。

 概要としては、日本がいつまでに、何を、どのようにしてエネルギー供給体制を作ることが、電動車フルラインナップ体制を続ける日本の経済が成り立つのかという、大きなロードマップを描くことになります。

 豊田会長は、自動車産業は運輸部門だけではなく、多様な産業界と社会を通じてつながっている産業であるため、カーボンニュートラルを考えるうえで「納期と課題がわかりやすくなる」と表現し、政府に対して今後一層の連携を訴えました。

 また、一部で会長任期の延長が決まったとの報道があったことについては「決まっていない。理事会で決定したことはすべてこのように会見(で説明)している」として、単なる噂話であると報道を完全否定しました。

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