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幻の「カウンタック」が蘇った! ランボルギーニはいかにして「LP500」を製作したのか

くるまのニュース / 2021年10月8日 8時10分

クラッシュテストにより、すでにこの世に存在しない「カウンタックLP500」が蘇りました。伝説の試作車はどのようにして蘇ったのでしょうか。

■幻の試作車「カウンタックLP500」、ヴィラ・デステで復活

 スーパーカー界の歴史的アイコン、ランボルギーニ「カウンタック」にとって、今年2021年が記念すべき生誕50周年であることは、すでに周知のことだろう。

 年明け以来、メーカー公式や愛好家グループ、あるいはメディアによって、稀代の名作誕生半世紀を祝賀するアニバーサリー企画が数多く送り出されたのに加えて、8月のアメリカ「ザ・クエイル・モータースポーツギャザリング」および「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」では、現代版である「カウンタックLPI800-4」も大々的に復活デビュー。

 それが今年の「カウンタック・イヤー」のクライマックスになるかと思いきや、もうひとつ大きなニュースが待ち受けていたようだ。

●伝説の復活に成功したランボルギーニ・ポロストリコ

 アメリカにおけるLPI800-4ワールドプレミアの興奮も冷めやらぬ9月14日、ランボルギーニ本社から「エキサイティングなニュースがあります」という文言とともに、一本のティザー動画が世界配信された。

 この動画は、ランボルギーニ本社のクラシック部門「ポロストリコ」によるクラシックモデルのレストアを予告した内容のもので、「50年前、それは未来への道を拓きました。そして今、再び走り出します」という煽情的な予告とともに締めくくられていた。

 ランボルギーニにとっての「50年前」といえば、当然ながらカウンタック。1971年3月11日に開幕したジュネーヴ・ショーにて、「アイデア・カー」として参考出品されたカウンタックLP500のことを示しているのは間違いあるまい。

 LP500はすぐにジュネーヴ・ショーにおけるスターの座に就き、その写真は世界中の主要メディアが競うように掲載した。このコンセプトカーは、伝説的な「ミウラ」に代わるものとして提案され、その技術とデザインの両方で自動車史の新しいページを開くことになる。ところが肝心のLP500プロトタイプは、1974年3月におこなわれたクラッシュテストのために完全破壊されたのち、放棄されてしまったことはファンの間では有名な事実である。

 しかしランボルギーニ・ポロストリコは、不可能を可能とするプロジェクトを完遂したようだ。今年10月1日、イタリア・コモ湖畔チェルノッビオで開催されたコンクール・デレガンス「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」のコンセプトカー部門に、復活を遂げたカウンタックLP500が、堂々のレビューを果たしたのだ。

 このセンセーショナルな復活劇は、2017年末にランボルギーニのさる重要顧客が、当時の写真でしか知られていない伝説的モデルであるカウンタックLP500の再製作が可能であるか否かを尋ねられたことによって始まったという。

 このオファーを受けたランボルギーニ本社は、「ポロストリコ」およびボディワークの再構築とスタイリングを監督する「チェントロスティーレ(デザインセンター)」を総動員して、実にのべ2万5000時間を要することになった復活プロジェクトに着手した。

 このプロジェクトの最初の数か月は、入手可能なすべての資料を入手し、詳細な分析をおこなうために費やされたという。

 ポロストリコのサービスマネージャー、ジュリアーノ・カッサターロ氏は次のように語っている。

「ドキュメントの収集は非常に重要でした。クルマの細部、全体的な一貫性、技術スペックに非常に注意が払われていました。写真や文書、会議の報告書、原画、そして当時のレジェンドたちの記憶。これらすべてが、細部のかたちと機能を可能な限り正確に確立することに貢献したのです。また“フォンダツィオーネ・ピレリ(Fondazione Pirelli)”のサポートは、オリジナルのLP500試作車に取り付けられていたタイヤを再現するための、歴史的アーカイブ資料を提供する上でも非常に役に立ちました」

 この解析を経て製作作業がスタートしたのだが、実はLP500試作車は、当初パオロ・スタンツァーニ技師が熱望していたプラットフォーム式モノコックを採用しており、のちの市販型カウンタックの鋼管スペースフレームとはまったくの別もの。そこで、まずはすべての基本となるプラットフォームの開発からはじめられた。

 ただし、ポロストリコでは物理的に再設計するだけでなく、当時の製造方法を尊重するために、どの作業システムを使用して構築するかを決定する必要があったとのことだ。ボディワークにも同じプロセスが採用された一方で、その分析と定義にはさまざまな最新技術機器が投入されたとのことである。

 そして板金作業の段階に達すると、伝統的な創造性とツールを備えた「バッティラストラ(Battilastra:板金職人)」によって、イタリアの伝統的方法論に従って作業が遂行された。加えて、すべてのメカニカルパーツについては1971年のスペックにしたがって、ランボルギーニが保有するオリジナルのスペアパーツ、あるいは当時の復元されたコンポーネントを使用したが、それが不可能な場合には新造されることになったという。

■いかにして「カウンタックLP500」は蘇ったのか

 カウンタックLP500オリジナルのデザインの歴史的な再構築のパートナーとして、ポロストリコは「ランボルギーニ・チェントロスティーレ」に目を向けたという。そこではランボルギーニのデザイン責任者、ミィティア・ボルケルト氏率いるチームが、非常にチャレンジングなプロジェクトに取り組むことになった。

1971年に発表された当時の姿。クラッシュテストに供され、写真のオリジナルの個体は現存していない1971年に発表された当時の姿。クラッシュテストに供され、写真のオリジナルの個体は現存していない

●ポロストリコとチェントロスティーレが挑んだ、半世紀前の偉業の完全復刻とは?

「LP500は、後続のすべてのモデルのデザインDNAを生み出したことから、ランボルギーニにとってもっとも重要なコンセプトカーです。」とボルケルト氏は語った。

「1971年のジュネーヴ・ショーでデビューしたLP500に到着するために、1:1スケールのスタイリングモデルが開発されました。残念ながら、車両自体と同じく時間の経過とともに失われましたが、写真による広範な証拠が残っています。これは、私たちがプロジェクトに取り組むことを決めたのと同じアプローチです。

 当時の出版物から始めて、ホモロゲーションシートの画像やポロストリコから回収されたそのほかの資料から、最初の1:1スケールモデルを作成するために必要な数学を再構築することができました。最大の課題は、車両の正確なボリュームを作成することでした。このために、膨大な情報源である『LP400』(シャシ001)の3Dスキャンをおこなうチャンスを利用しました。

 結局、最終モデルにたどり着くまでに、のべ2000時間の作業が必要となりましたが、満足のいくラインに到達できたと思います。インテリアについても、まったく同じ手順に従いました」(ボルケルト氏)

 そしてランボルギーニ・ポロストリコの徹底したこだわりは、タイヤにも求められた。そこで、ジュネーヴでのデビューの際にLP 500プロトタイプに取り付けられていたタイヤを再生するため、1963年にランボルギーニが創業して以来、現在に至るまで継続しているピレリとのコラボレーションが、この上なく貴重であることが証明された。

「フォンダツィオーネ・ピレリ(Fondazione Pirelli:ピレリ基金)」のアーカイブに保存されている画像と資料のおかげで、オリジナルのLP500は当時のイタリア製高性能車の定番「チントゥラート(Cinturato)CN12」を装着していたことが判明。

 これらのドキュメントから、ミラノのピレリ本社は1930年から2000年の間に製造された名作の復刻版「ピレリ・コレツィオーネ・シリーズ」のチントゥラートCN12の作成に着手し、ヴィンテージなイメージを現代のテクノロジーでよみがえらせることに成功した。

 今回のランボルギーニ・カウンタックLP500用のCN12タイヤは、フロント用が245/60R14、リア用は265/60R14のサイズで提供されることになったという。

 さらにボディカラーの選択に関しては、「PPGアーカイブ」が重要であることが判明。慎重に分析したのち、「ジアッロ・フライ・スペチアーレ(Giallo Fly Speciale)」として識別される黄色を生成するための、正確な組成を解明することができたとのことである。

* * *

 カウンタック50周年に際して、幻のLP500プロトティーポを復活させることに成功したアウトモビリ・ランボルギーニ社の会長兼CEOであるステファン・ヴィンケルマン氏は、ヴィラ・デステ出展に先立ち、以下のようなコメントを残している。

「カウンタックはハイパフォーマンスカーを再び発明するとともに、デザイン言語を構築した名作です。わたしたちが新たに製作した伝説的なカウンタック第1号車、1971年のLP500をヴィラ・デステのコンセプトカー・クラスにて鑑賞することができるのは、カウンタックの50周年を祝う、貴重な機会となるでしょう」

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