MT車が若者から熱い支持!? EVシフトで消滅寸前! いまあえて自動車メーカーがMT車を設定する理由とは
くるまのニュース / 2021年10月12日 7時10分
若者の購入比率が高いホンダ新型「シビック」では3割以上がMTを選択するなど、AT全盛の現代において支持を受けているといいます。EV化が進むなかで消滅する運命のMT車をラインナップし続けるのはなぜなのでしょうか。
■ホンダ新型「シビック」は35%の購入者がMT車を選択
ホンダ新型「シビック」の初期受注において、6速MTの比率が高いことが話題となっています。
ホンダによると、2021年9月3日発売の約1か月後となる10月7日時点で、新型シビックの受注台数は月販計画台数の3倍相当の3000台以上を達成。そのうち、35.1%が6速MTだということです。
しかも、購入層でもっとも多い年代が20代(23.9%)という数字も、300万円台のミドルカーとしては珍しい結果に感じます。
そもそも、なぜホンダは新型シビックの日本仕様に、現在のホンダの国内普通車として唯一となるMT車を設定したのでしょうか。
筆者(桃田健史)は2021年9月に新型シビック試乗会に参加した際のホンダ関係者と意見交換のなかで、「先代モデル(10世代)ではタイプRを除いて6速MT比率が3割だったことが最大の要因」という見解を聞いています。
また、先代モデルでもハッチバックに対する20代ユーザー比率が高く、モデルライフの途中でセダン販売を中断し、ハッチバック1本でユーザーの若返りを狙う戦略に出ました。
こうした流れが、新型でもしっかり継承されたといえます。
そのほか、普通車でMT設定が多いメーカーといえば、マツダがあります。
「ロードスター」のMT比率が高いことは当然だと思いますが、コンパクトカーの「マツダ2」からSUVの「CX-5」まで、モデルの商品性に合わせてガソリン車「SKYACTIV-G」やディーゼル車「SKYACTIV-D」において6速MTをラインナップしています。
その理由は、マツダが提唱する「Be a driver」という「走る楽しさ」の追求です。
時計の針を少し戻すと、2010年にSKYACTIV量産を受けて、マツダの三次自動車試験場(広島県)で開催されたプロトタイプ試乗会で、SKYACTIV-GとSKYACTIV-Dの特徴的な走り味を6速MTで初体験しました。
当時のマツダ幹部が、「MTでないと感じ取れない、走りの楽しさをわかってほしい」とコメントしたことをよく覚えています。
そうしたマツダの志は2017年にドイツのアウトバーンで初試乗した「SKYACTI-Xプロトタイプ」でも、また2020年の美祢自動車試験場で乗ったe-SKYACTIV G搭載の「マツダ3」でもしっかり継承されており、MT車の走りを素直に楽しむことができました。
こうした、「Fun to Drive」というクルマ本来の在り方が、ホンダ新型シビックで見られるような若い世代での6速MT志向として、改めて浮き彫りになったといえるでしょう。
■EVシフトでMTはいずれ消滅する運命!?
そもそも、乗用車が一般家庭に普及し始めた1960年代の高度成長期では、MT車は当たり前の存在でした。
日本車のエンジン排気量は小型でありパワーやトルクが低く、またブレーキやタイヤの性能は現代と比べるとかなり低かったため、手動変速によって加速での出足とエンジンブレーキを併用した減速をMTでドライバー自らがコントロールする必要があったのです。
MTしか設定がない先代「シビックタイプR」
それが1970年代に入ると、「トルコンAT(トルクコンバーター)は運転が楽だ」とか、「先進国のアメリカでは自動変速は当たり前だ」といった風潮が日本で広まり始めました。
筆者はその当時、日系大手メーカーのトルコン車を実際に運転していますが、出足はかなりゆったりした印象でしたし、登場して間もなかったパワステも手ごたえ感がかなり軽く感じました。
時は流れて、AT限定免許が登場して日本車でもATが当たり前となり、MTによる手動変速は「面倒なこと」とか「操作が難しいこと」といったイメージが世間に広まっていきます。
また、いわゆるスーパーカーでもMT車はどんどん消えていき、残ったのはスバル「WRX STI」やホンダの「タイプR」、ロードスターなど日本を代表するスポーツカーという時代に入ってきました。
では、今後MT車はどうなっていくのでしょうか。
残念ながら、ある時期を境に一気に消滅する可能性が極めて高いといわざるを得ません。
理由は、クルマの電動化・EV化です。
2050年カーボンニュートラルに向けて、各メーカーがパワートレインの電動化を推進していますが、例えばホンダは「2040年にブローバルで新車100%をEVまたはFCV(燃料電池車)」を公式に宣言しています。
EV専用プラットフォームと専用モーター・制御機能が当たり前の時代になれば、MT車が存在できる場所はなくなってしまいます。
唯一考えられるのは、サーキットなどクローズドエリアでのレースカーや、旧車を楽しむ走行会でしょう。
こうした時代の流れを、若い世代ほど敏感に感じ取れるのかもしれません。
また、長年クルマを愛してきた中高年層では、「終(つい)のくるま」としてMT車という選択肢もあるように感じます。
MT車の最後の花道になるであろう2020年代に、MT車との思い出づくりをしようと思っている人が、日本でも一定数いるのだと思います。
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