ジツはかなり貴重な存在? 国産1.6リッターターボエンジン車3選
くるまのニュース / 2021年10月18日 6時10分
かつて走り好きの若者から絶大な支持を得ていたのが、1.6リッターエンジンを搭載した高性能車です。しかし、そのほとんどは自然吸気エンジン車で、ターボエンジン車は稀でした。そこで、実は数少ない1.6ターボの高性能モデルを、3車種ピックアップして紹介します。
■希少な「テンロク ターボ」を振り返る
トヨタ「AE86型 カローラレビン/スプリンタートレノ」やホンダ「EK9型 シビック タイプR」など、ハイパフォーマンスな1.6リッターエンジンを搭載したモデルは、かつて走り好きの若者たちを夢中にさせました。
日本では自動車税が2リッターエンジンと同額になってしまう1.6リッターエンジンは、中途半端な排気量といわざるを得ませんが、モータースポーツの世界ではクラス分けでメジャーな排気量となっていたため、必然的に1.6リッター車は高性能なモデルが多くなったということです。
過去には各メーカーがラインナップしており、隆盛を極めていた1.6リッター車ですが、そのほとんどは自然吸気エンジンで高回転、高出力を競い合っていました。
一方で、極めて数少ない存在だったのが1.6リッターの過給機付きエンジン車で、とくに国産車ではレアなモデルです。
そこで、実は数少ない歴代の1.6ターボの高性能モデルのなかから、3車種ピックアップして紹介します。
●マツダ「ファミリア GT-X」
国産車初のフルタイム4WD車という記念すべきモデルの「ファミリア GT-X」
ターボエンジンの普及が始まったのは1980年代からで、国産車の高性能化が一気に加速し、メーカー間のパワー競争にまで発展しました。
そして、自社の高性能車をアピールするために各メーカーともモータースポーツへの参戦を積極的に進め、とくに欧州で高い人気を誇っていた世界ラリー選手権(WRC)に参戦することは、グローバルでイメージアップに繋がるとともに、ベース車の販売にも影響を与えました。
1970年代の排出ガス規制強化に対応するため、国産メーカーでは一時的に下火になっていたWRCへの参戦でしたが、1980年代の終わりには次々と復活。
そして誕生したのが高性能なDOHCターボエンジン+フルタイム4WDのハイスペックモデルたちで、その先駆けとなったのが、1985年に発売されたマツダ「ファミリア GT-X」です。
ファミリア GT-Xは6代目ファミリアの高性能グレードで、国産車では初となるフルタイム4WD車という記念すべきモデルでした。
搭載されたエンジンは最高出力140馬力を誇る1.6リッター直列4気筒DOHCターボで、駆動方式はプラネタリーギア方式のセンターデフを用いたフルタイム4WDシステムを採用。トランスミッションは5速MTのみです。
ハイパワーなエンジンと4WDの組み合わせによって、加速性能は2WDの2リッターターボ車を上まわるほどと評され、たちまち若者たちを虜にしました。
あらゆる路面で高い走行性能を誇ったファミリア GT-Xは、国内外のラリーでの活躍もあり、ブランドイメージの向上にも貢献を果たし、他メーカーも同様な高性能4WD車を発売して追従しました。
●日産「ジューク」
アグレッシブなデザインのコンパクトボディが特徴の「ジューク」
現在のSUVブームが盛り上がりをみせようとしていた2010年に、日産は生粋のクロスオーバーSUVとして「ジューク」を発売。
アグレッシブなデザインのフロントフェイスや、張りのある曲面で構成されたグラマラスなボディが、大いに話題となりました。
ボディサイズは全長4135mm×全幅1765mm×全高1565mmとコンパクトで、内装も色使いや各部の造形が外装に負けないほどポップな印象です。
グレードは最高出力114馬力の1.5リッター直列4自然吸気エンジンを搭載した「15RX」系と、最高出力190馬力とパワフルな1.6リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載した「16GT」系の大きく2タイプに分けられていました。
また駆動方式は2WD(FF)が基本で、トップグレードの「16GT FOUR」のみが4WDとなっており、トランスミッションは全車CVTです。
2013年には、この16GT系をベースに最高出力200馬力までチューンナップされた「ジューク NISMO」が登場し、さらに2014年にはジューク NISMOをベースに、最高出力214馬力にまで高められた「ジューク NISMO RS」が発売されるなど、よりスポーティなモデルをラインナップしました。
ジュークは一定の人気を獲得し、ロングセラーとなって2019年に生産を終了。現在も欧州では2代目が販売されていますが日本への導入はなく、2020年に発売された「キックス」が実質的な後継車です。
●トヨタ「GRヤリス」
トヨタがWRCで培った技術をフィードバックして開発された「GRヤリス」
2020年9月に発売された「GRヤリス」は、トヨタがWRCで培った技術を惜しみなく投入した4WDスポーツカーで、車名こそヤリスを冠していますがほぼすべての部分が専用設計とされた別モノのマシンです。
ボディはヤリスに近いシルエットながら専用の3ドアハッチバックで、トレッドの拡大から前後ワイドフェンダーとし、迫力あるエクステリアを演出しています。
ほかにもカーボン製ルーフパネルの採用や、ボンネットとドアパネルはアルミ製とするなど軽量化が図られ、車重は1280kgを実現。
内装ではデザインはヤリスに準じていますが、メーターやステアリング、シートはGRヤリス専用で、4名乗車となっています。
「RZ」グレードに搭載されるエンジンは、最高出力272馬力・最大トルク370Nmを誇る1.6リッター直列3気筒ターボで、組み合わされるトランスミッションはブリッピング機能がある6速MT(iMT)のみです。
この大パワーは新開発の駆動力可変型フルタイム4WDによって路面に伝えられ、運動性能と加速性能はまさにラリーマシンレプリカといえるでしょう。
なお、外観は4WDモデルと同様ながら、1.5リッター自然吸気エンジンにCVTを組み合わせた2WD(FF)の「RS」と、快適装備の一部を排除してRZから30kg軽量化したモータースポーツベース車の、「RC」がラインナップされています。
※ ※ ※
国内メーカーで、今回紹介した3車種以外に1.6リッターの過給機付きエンジンを搭載したモデルというと、三菱が2代目・3代目「ミラージュ」と「コルディア/トレディア」、いすゞが2代目・3代目「ジェミニ」、直近ではスバルが初代「レヴォーグ」に1.6リッターターボを搭載していました。
また、トヨタは初代「MR2」と「AE92型」カローラレビン/スプリンタートレノにスーパーチャージャー付きの1.6リッターエンジンを搭載した実績があります。
しかし、特殊なモデルであるGRヤリス以外は、国内メーカーではすべて淘汰されてしまいました。
1.5リッター以下の過給機付きエンジンならば経済的なメリットがありますが、重量増も避けられない1.6リッターの過給機付きエンジンは、今となっては必然性が見いだせないということなのでしょう。
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