三菱「ランエボ」だけど走り系じゃない!? エボと同じ心臓を持つ“非競技系”のモデルとは?
くるまのニュース / 2021年11月5日 18時10分
三菱「ランサーエボリューション」は高性能モデルとして知られています。そんなランエボと同じ心臓を持っているにもかかわらず、非競技系のモデルがあったのです。それはどんなモデルなのでしょうか。
■エボと同じ4G63型エンジン搭載でも走り系じゃないモデルがあった
「ランエボ」といえば、多くのクルマ好きは三菱「ランサーエボリューション」と解釈するでしょう。
しかし元をたどると「ランサーエボリューション」というのは車名ではなく、「ランサー1800GSR/RS」に対する、「ランサーGSRエボリューション/RSエボリューション」というグレード名の一部でした。
エボリューションモデルが最初に設定されたのは1991年10月に発売されたランサーで、4G93型1.8リッターDOHCターボエンジンを搭載するGSRやRSといった、走りに特化したグレードが設定されていました。
さらに戦闘力を増して国際ラリーで戦うために、「ギャランVR4」に搭載されていた2リッターの4G63型DOHCターボエンジンを搭載した限定生産のモデルがエボリューションだったのです。
当初は「ランサーにクラスを超えるサイズのエンジンを搭載したグレード」にすぎなかったのですが、「エボリューションV」でボディパネルを3ナンバーサイズ化。「エボリューションVII」からシャシも基本の「ランサーセディア」と「エボリューションVI」の折衷となるなど、特殊モデル化していきます。
特殊かつ高額化していくエボリューションシリーズに対し、エボリューションVII以降は各種のユーザー層を拡大するモデルが設定。そのなかには、ランエボと同じ4G63型エンジンを搭載しながら、競技に特化していないエボリューションモデルも存在していました。
2001年にエボリューションVIIが発売された少し後、エボリューションシリーズの走りをATで楽しめるようにした、「GT-A」グレードが発売されました。
エンジンはAT専用の272馬力にデチューンした仕様で、マニュアルモード付5速ATを搭載。フロントデフはオープン式で、センターデフとリヤデフはGSRと同じACD、AYCを装着し、サスペンションはGSRと比較して若干柔らかめのセッティングにするなど、スポーツ度は若干控えられていました。
外観上の違いは、小型のリヤスポイラーであることと、テールランプカバーがクリア式であることなどです。
当時の感覚では、「ランエボに乗るのならMTを運転できないと」と否定的に見る人が多かったものですが、現在ではATで速いクルマが普通になっており、GT-Aはむしろ先見性のあるグレードだったといえます。
一方、2005年にはRSとGSRと中間グレードとして、「GT」を発売します。
RSは競技用グレード、GSRはACDやAYCなどを装着した三菱特有の電子制御技術を用いた最新技術投入グレードでしたが、GTは「競技はしないけれども、快適装備が必要で、それでいて比較的安価なエボリューションが欲しい」という声にも対応したモデルでした。
エンジンはほかのグレードと同じ280馬力を発揮。センターデフはACD、リヤデフにはAYCを装着しないメカニカルLSDとするなど簡素なRSに近いのですが、オートエアコンやキーレスエントリーなどの快適装備は充実していました。
GTは、特殊になりすぎたランサーエボリューションを、競技をしない人も購入しやすいように、走行性能を向上させる装備を絞ったモデルだといえます。
ごく短期間の設定でしたが、このGTのエッセンスは、四世代目のランサーエボリューションの姉妹車「ギャランフォルティス ラリーアート」につながっていきました。
■ワゴンやSUVでエボの心臓を持つモデルとは
三世代目のランサーエボリューション発売当時、ランサーセディアにはワゴンがあり、スマッシュヒットしていました。
ランサーセディアワゴンには直噴1.8リッターターボエンジンが搭載されていましたが、ハイパワーワゴンとして人気を博したスバル「レガシィ ツーリングワゴン」と比較するとパワーの上ではインパクト不足でした。
そして2005年に「ランサーエボリューションワゴン」は三菱流のハイパワーワゴンとして追加されました。
三菱「ランサーエボリューションワゴン」
エンジンはMTとATで異なり、MTはエボリューションVIIIのもの、ATモデルはGT-Aと同等の272馬力を発揮しています。
また、本格的なワゴンボディだったため、ライバルのスバル「インプレッサ ハッチバック」を上まわる実用性も備えていました。
しかし、このクルマは単にランサーセディアのボディをランサーエボリューションのシャシに搭載したわけではありません。
前述の通り、ランサーエボリューションのシャシは3ナンバーサイズでしたから、ランサーセディアワゴンのボディを載せるにはリヤホイールハウスを広げる必要があります。
そのため、リヤドアからクオーターパネルまで、専用のブリスターフェンダー形状に変更されています。
外板形状を変更することは大変なコストがかかりますが、ランサーエボリューションワゴンは生産期間の割には非常にコストがかかったモデルといえます。
ランサーエボリューションワゴンは、重量ではセダンモデルより重く、絶対的な速さこそ劣りますが、ワゴンを待っていたランエボファンに好評をもって受け入れられました。
エボリューションの名を持たないものの、同じ心臓を持つSUVがありました。
2000年代の初め頃にSUVブームが起こり、トヨタ「ハリアー」などがヒットしていました。
三菱は本格的なRVは手慣れていたものの、乗用車感覚のSUVへの対応が遅れていましたが、そんななか、2001年にランサーセディアを基本とした乗用車SUVの「エアトレック」を発売します。
搭載エンジンは当初、4G63SOHC自然吸気エンジンと4G64DOHC GDIエンジンの2本立てでしたが、2002年に4G63ターボエンジンを搭載する「ターボR」を追加します。
エンジンの出力特性を日常域で使いやすいように変更したため、最高出力は240馬力に抑えました。
※ ※ ※
ランサーエボリューションは、「エボX」最後の特別仕様車「ファイナルエディション」の納車が2016年3月に完了し、その歴史に幕を閉じました。
今回紹介したモデルはいまでは骨董品の領域に入りつつありますが、エボリューションモデルのバリエーションとして、記憶されていくことでしょう。
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