コンセプトは素晴らしい! だけどちょっとだけ惜しい車3選
くるまのニュース / 2021年11月27日 6時20分
自動車メーカーが新型車を開発する際には、コンセプトを明確にします。それが個性や特徴につながり、アピールできるようになります。しかし、もうちょっとがんばっていれば、もっと良いクルマになったかもしれないモデルも存在。そこで、コンセプトは秀逸ながらちょっと惜しいクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
■もうちょいガンバってほしかったクルマを振り返る
毎年各メーカーから、数多くの新型車が発売されていますが、どのモデルも個性や特徴を明確にしているのが一般的です。開発の初期にコンセプトを決めることで、個性や特徴につながります。
多くのクルマには他メーカーのライバル車が存在するため、個性を際立たせればアピールポイントとなり、ライバルに対してアドバンテージが築けるというものです。
しかし、個性的だからといっても必ずしもヒットするとは限らないのが、新型車開発の難しいところではないでしょうか。
一方で、もう少しがんばっていれば、もっと良いクルマになったかもしれないと思われるモデルも存在。
そこで、コンセプトは秀逸ながらちょっとだけ惜しいクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●スズキ「スイフト RS」
ローパワーながら優れたドライビングプレジャーを持つ「スイフト RS」
スズキ「スイフトスポーツ」は今では数少ない生粋のホットハッチで、最高出力140馬力を発揮する1.4リッターターボエンジンを搭載し、車重はわずか970kg(MT)を達成するなど、国内でも屈指のドライビングプレジャーあふれるモデルです。
しかし、スタンダードなスイフトにも走る楽しさではスイフトスポーツに負けない「スイフト RS」がラインナップされています。
RSのエンジンは最高出力91馬力の1.2リッター直列4気筒で、トランスミッションは当初5速MTのみでしたが、現在はCVTも追加されています。
外観もスポイラー形状の前後バンパーやサイドステップ、小ぶりなルーフスポイラーが装着され、フロントグリルにRS専用で赤いストライプが入れられるなど、スポーティさを強調しています。
特筆すべきは車体の軽量化で、車重はスイフトスポーツよりもさらに100kg軽量な870kg(MT車)を実現しています。
また、足まわりは欧州仕様と同じチューニングが施され、軽量なボディながら4輪ディスクブレーキが装着されるなど、ローパワーながら本格的なホットハッチに仕上がっています。
ところが、価格(消費税込、以下同様)は178万2000円からと意外と高めで、スイフトスポーツの「スズキセーフティサポート非装着車(MT車)」が187万4400円ですから、9万円ほど足せばスイフトスポーツが買えてしまいます。
スイフト RSは安全運転支援システムが標準装備されているので、価格が上がってしまうのは仕方ないのですが、むしろスイフトスポーツがかなり安いといえるのかもしれません。
●ホンダ「N-ONE RS」
軽FFターボ車では初となる6速MTを設定した2代目「N-ONE RS」
ホンダは2020年11月に、軽トールワゴンの2代目「N-ONE」を発売しました。プラットフォームを一新し、外観デザインは初代からのキープコンセプトとしながらも、細部のデザインをブラッシュアップしています。
グレード構成は最高出力58馬力を発揮する自然吸気エンジンの「オリジナル」と「プレミアム」、そして64馬力を発揮するターボエンジンの「プレミアムツアラー」と「RS」の全4グレードをラインナップ。
なかでもRSは、FF軽ターボ車では初の6速MTが設定されたスポーティグレードです。
この6速MTは「S660」と同じく1速から5速をクロスレシオ化し、ショートストロークで小気味よいシフトフィールを実現。さらにシフトノブの形状は「S2000」のデザインをモチーフとするなど、細部にまでこだわって設計されています。
また、CVTもRS専用のセッティングとされ、マニュアルシフトが可能なパドルシフトを装備しており、2ペダルならではのスポーツ走行が可能です。
また、4輪のブレーキを制御することでコーナリング時に車体の挙動を安定させる「アジャイルハンドリングアシスト」を搭載するなど、2代目N-ONEは走りの性能を重視しています。
しかし、N-ONE RSの車重はMT車で840kgもあります。唯一のライバルといえるスズキ「アルトワークス」の2WD、MT車が670kgですから、N-ONE RSは170kgも重く、トルクが小さい軽自動車では走行性能に大きく影響してしまうことでしょう。
ただし、前出のスイフト RSも同様ですがスズキの軽量化技術はすさまじく、アルトワークスが異常に軽いという見方もできます。
●トヨタ「GRヤリス RS」
イージドライブが可能で普段使いに適したソフトなスポーツカーの「GRヤリス RS」
トヨタは2020年9月に、ベーシックカー「ヤリス」のハイパフォーマンスな派生車として「GRヤリス」を発売しました。派生車といっても中身はヤリスとはまったくの別モノで、ほぼすべてがGRヤリス専用に設計されています。
GRヤリスのトップグレード「RZ」は、トヨタが世界ラリー選手権で培った技術をフィードバックした生粋のスポーツカーで、最高出力272馬を発揮する1.6リッター直列3気筒ターボエンジンを搭載し、トランスミッションは6速MTのみ、駆動方式はトルク可変型のフルタイム4WDシステム採用。
外観はヤリスのシルエットを残しながらも専用の3ドアハッチバックボディで、前後をワイドフェンダー化した迫力あるフォルムを実現しています。
一方で、RZと同じボディにヤリスに搭載される1.5リッター直列3気筒自然吸気エンジンを組み合わせ、2WD車の「RS」グレードも設定されています。
エンジンは最高出力120馬力とヤリスと変わらず、トランスミッションはパドルシフト付きのCVTのみです。
しかし、シャシはRZ並の高剛性で、フロントがストラット、リアがダブルウイッシュボーンの足まわりもRS専用にチューニングされ、ブレーキも4輪ディスクが奢られるなど、内容的には十分に優れています。
またRSの価格は265万円と、RZの396万円よりも大幅に安価で、普段使いにもマッチしたスポーツカーです。
ただし、非常に残念なのがMTを設定していないことです。ヤリスの6速MTをそのまま持ってくればMT化は可能なように思われますが、現在まで実現していません。
ローパワーで優れたシャシのモデルですから、MTを駆使して走ればドライビングプレジャーはさらに高まること間違いないでしょう。
※ ※ ※
なにもかもが優れた完全無欠のクルマは存在しませんが、もう少しがんばればもっと良くなりそうなクルマは他にもあります。
しかし、その「もう少し」を実現するには莫大なコスト増につながるケースもあり、簡単ではありません。
多くのクルマは個々の部品や生産工程で、1円にも満たないコスト削減策を積み重ねており、販売台数が期待できなければ、ある程度は妥協するしかないでしょう。
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