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同じ「シリーズハイブリッド」でも結構違う? ダイハツe-SMARTハイブリッドと日産e-POWERを乗り比べ

くるまのニュース / 2021年12月10日 18時10分

クルマのハイブリッド方式の種類で、エンジンが発電しモーターで走る「シリーズハイブリッド」というものがあります。ダイハツ「e-SMARTハイブリッド」や日産「e-POWER」が該当しますが、どのような違いがあるのでしょうか。

■「e-SMARTハイブリッド」と「e-POWER」はどう違うのか

 2021年11月、ダイハツがコンパクトSUV「ロッキー」と兄弟車のトヨタ「ライズ」を一部改良。新開発の1.2リッターハイブリッドシステム「e-SMART(イースマート)ハイブリッド」を搭載したモデルを追加し、発売しました。

 このe-SMARTハイブリッドは、エンジンを発電機としてのみ使い、モーターで走る「シリーズハイブリッド」に分類できますが、日産のe-POWERも同方式を採用しています。シリーズハイブリッドとしては同じですが、どちらが優れているのでしょうか。

 今回、e-SMARTハイブリッド車に都内で試乗する機会がありました。感想は「クルマ全体に、より上質感が増した」という印象でした。

 比較として、新開発の1.2リッターガソリンエンジンを搭載したロッキーも試乗。ハイブリッド車はガソリン車より車重が少し増えていますが、それが“クルマ全体のどっしり感”になっており、少しゆったり目にセッティングされているハンドリングとの相性が良いと感じました。

 走り味については、発進時や、低速から加速時は当然のことながらモーターによる強い押し出し感があり、軽快というよりグイグイ速いといった印象です。

 アクセル操作のみで車速コントロールするスマートペダルは、少し強めに利く印象で、市街地ではとても使いやすく感じました。完全停止まではしないので止まるにはブレーキ操作が必要ですが、「走り」としてのアクセルとブレーキそれぞれの操作の違和感はありませんでした。

 今回ダイハツが採用したハイブリッドシステムは、いわゆるシリーズハイブリッドと呼ばれるものです。

 ハイブリッド車は、一般名詞や商品名などさまざまあり、その分類方法はメーカーや学術関係者の間で若干の違いがあります。

 ハイブリッド車は、方式により大きく3つに分類されます。

 1つ目は、エンジン駆動が主体でモーターがアシストする「パラレル方式ハイブリッド」。一般的に「マイルドハイブリッド」とも呼ばれるものです。

 2つ目は、エンジン走行とモーター走行のどちらも可能な「シリーズ・パラレル方式」。エンジンを発電と走行の双方に使うタイプで、代表例はトヨタ「プリウス」です。

 そして3つ目が、エンジンを発電機としてのみ使い、モーターで走行する「シリーズハイブリッド」です。e-SMARTハイブリッドや日産e-POWERが該当しますが、ユーザーとしてはこれらのどちらが優れているのかという点が、気になるところでしょう。

 そこで今回、試乗の前後に新型1.2リッター(WA)エンジンの開発担当者と、e-SMARTハイブリッド開発担当者から開発の狙いを聞きました。

■メーカーで異なるシリーズハイブリッドの開発思想

 試乗前、e-SMARTハイブリッドの開発担当者からは「エンジンがかかるシチュエーションが多いはずだ」といわれました。

 これは、筆者(桃田健史)が日産のe-POWER開発者とこれまでしてきた意見交換のなかで、特に新型「ノート」から搭載している第2世代e-POWERの「可能な限りエンジンをかけない制御を志した」(e-POWER開発者)という話を聞いていると指摘したことへの、ダイハツとしての回答でした。

ダイハツ「ロッキー」ダイハツ「ロッキー」

 ダイハツが示したグラフのひとつに、停止時から40km/hまではモーター走行のみというものがありますが、「これはアクセルを緩やかに踏んだ場合で、アクセルを強く踏み込むと40km/h以下でもエンジンはかかる」(e-SMARTハイブリッド開発者)といいます。

 実際の走行でも、その指摘どおりにエンジンがかかりましたが、遮音材と防音材によって、エンジンの音や振動が車内で気になるというネガティブな印象は持ちませんでした。

 ダイハツの開発の狙いは「良品廉価」であり、最新技術をより多くの人に広めていこうという考え方です。

 そうしたポリシーのもと、ダイハツは、トヨタのハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、小型電動車、そして燃料電池車での電動車開発の知見を「学びに行った」といいます。

 ハイブリッド車の開発でもっとも難しいのは、エンジンとモーターの連携に関する制御と、バッテリーマネージメントです。

 ダイハツはその点を十分に理解した上で、量産効果によるコスト削減のために一部の部品をトヨタと共通化しています。

 具体的には、モーターとジェネレーター(共通共用するトヨタ車名称は非公開)、リチウムイオン二次電池のセルとモジュールです。

 PCU(パワーコントロールユニット)については、トヨタでの知見を活かして、ダイハツが独自に基盤を設計しています。

 リチウムイオン二次電池の容量は4.3Ah(0.7強kWh相当)で、e-POWERの半分程度としています。

 この点についてe-SMARTハイブリッド開発担当者は、「実用レベルでの燃費に対する効果と走行性能、そしてコストバランスを考えた」と説明します。

 そのため、走行中にエンジンを発電機として使いバッテリーに充電する場合と、エンジンで発電してそのままモーター駆動させる場合とのバランス感を考慮しています。

 一方、日産のe-POWERについては、筆者がこれまで「ノート」と「ノートオーラ」を公道試乗した実体験では、初代に比べて第2世代e-POWERは明らかに走行中にエンジンがかかる頻度が減ったと感じました。

 また、e-POWER開発担当者とのオンライン意見交換のなかで「初代ノートe-POWERはユーザーから『エンジンがかかる頻度が多い』という指摘もあり、第2世代e-POWERではバッテリー制御を改良するなどしてエンジンを可能な限りかけないような方向とした」と主張しています。

 このように、ダイハツと日産では、シリーズハイブリッドの開発思想に違いがあります。

 また今後、e-SMARTハイブリッドは軽自動車にも搭載されることになるようですが、ライズよりボディサイズが大きいトヨタ車への展開も十分にあり得ると思われます。

 その場合、コストバランスを考慮して、搭載バッテリー容量を大きくしてよりエンジンがかからないタイプのe-SMARTハイブリッドが登場するかもしれません。

 いずれにしても、ボディサイズが少し大きめのAセグメントであるロッキー・ライズのe-SMARTハイブリッドは、走行性能、燃費、そして価格とのバランス感がとても良いという印象を持ちました。

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