時代の流れに取り残された!? 往年の意外なFR車3選
くるまのニュース / 2021年12月8日 6時10分
現在、ミドルサイズ以下のクルマは、前輪駆動が主流です。FF車は室内空間が広くできるのが最大のメリットで、ファミリーユースがメインのクルマでは最適なレイアウトといえるでしょう。しかし、かつては実用的なクルマでもFRのモデルが存在。そこで、ファミリカーといえるクルマながらFRだったモデルを、3車種ピックアップして紹介します。
■かつて存在した意外なFR車を振り返る
現在、販売されている新車でミドルクラス以下のサイズのモデルは、フロントエンジン・フロントドライブのFF車が主流です。
日本でFF車の普及が本格的に始まったのは1960年代の終わりから1970年代の初頭で、室内空間を広くできることや、部品点数が減らせることでコストダウンと軽量化が可能なことから、小型のクルマから採用されました。
その後、FF車は爆発的に普及し、今では軽自動車から大型ミニバンに至るまで、FF車が一般的になりました。
しかし、FF車の販売拡大は各自動車メーカーが一斉に始めたわけでなく、メーカーによってまちまちで、なかには実用的なモデルでも後輪駆動を採用したモデルも存在。
そこで、ファミリカーといえるクルマながらFRだったモデルを、3車種ピックアップして紹介します。
●三菱「ミニカアミL」
スペース効率が重視される軽自動車でもFR車だった「ミニカアミL」
軽自動車におけるFF車の歴史は古く、1955年にスズキ初の4輪自動車として誕生した「スズライトSS」がFF車でした。
また、1967年に発売されたホンダ「N360」も、FFのメリットを最大限に生かして広い室内空間を実現し、大ヒットを記録。しかし、軽自動車メーカー各社は独自の思想からか、駆動方式はバラバラでした。
そんななか、かつて三菱の主力軽自動車だった「ミニカ」は、1962年に初代が登場して以来、FRのまま代を重ねていました。
最後のFR車だったのは1981年発売の5代目「ミニカアミL」で、1977年発売の「ミニカアミ55」のボディをベースに、新軽自動車規格に合わせて100mm全長を伸ばしたモデルでした。
エンジンは最高出力31馬力(グロス)の550cc直列2気筒SOHCを縦置きにフロントへ搭載して後輪を駆動。三菱独自の「サイレントシャフト(バランサーシャフト)」を採用したことで、低振動化と高い静粛性が特徴でした。
そして、最大のトピックスだったのが、1983年に軽自動車では初のターボモデルが登場したことです。キャブレターターボでインタークーラーも無く、最高出力は39馬力(グロス)と8馬力アップに留まりましたが、このターボモデルの登場はその後の軽自動車における熾烈なパワー競争へのきっかけとなりました。
そして、他メーカーに遅れながらも1984年に、FF化した6代目ミニカが登場しました。
●日産初代「セレナ」
1ボックスワゴンからミニバンへの過渡期に登場した初代「セレナ」
2018年に9万9865台を販売し、ミニバン販売台数ナンバー1に輝いた現行モデルの日産「セレナ」ですが、初代は1991年に誕生しました。
当初は前身のモデルである1ボックスワゴンの「バネットコーチ」の後継車だったことから「バネットセレナ」の名前でしたが、1994年のマイナーチェンジでセレナに改名されました。
それまで多人数乗車が可能なクルマはキャブオーバータイプの1ボックスワゴンが主流だったなか、セレナの外観は今のミニバンに通じるセミキャブオーバータイプで、商用車のイメージを払拭したスタイリングでした。
一方で、エンジンは前席の下に搭載して後輪駆動を採用するなど、かつての1ボックスワゴンの名残りもあり、さらに商用バンをラインナップするなど、まだミニバン(ワゴン)とバンを完全に分離できなかった過渡期のモデルだったといえます。
ユニークだったのがサスペンションです。上位のグレードではフロントがストラット、リアがマルチリンクとされ、リアサスペンションには左右で1本のFRP製リーフスプリングが採用されました。
このリアサスペンションによって、とくに後席の乗り心地の向上と優れた走行安定性を実現。さらに広くフラットな荷室フロアを可能にしました。
しかし、やはりFRでは低床化 は困難で、スペース効率の点では不利だったことから、1999年に2代目が登場した際にプラットフォームを一新してFFとなりました。
●マツダ4代目「ファミリア」
ライバル車に対して不利な戦いを強いられた4代目「ファミリア」
現在、マツダのラインナップで、Cセグメントのプレミアムなモデルに「マツダ3」がありますが、その前身は「アクセラ」で、さらに遡ると、同社の主力車種として長い歴史があった「ファミリア」シリーズにたどり着きます。
初代ファミリアは1963年に誕生した大衆車の先駆け的存在で、FR車として誕生。
その後も4ドアセダンと2ドアクーペのボディがメインで代を重ねましたが、1977年のモデルチェンジで大きな転換期を迎え、ボディタイプを一新し、3ドアハッチバックと5ドアハッチバックの2ボックスへと変貌を遂げました。
これは同クラスのライバル車に追従したかたちで、外観は丸みを帯びたフォルムに、1975年に発売された2代目「コスモ」に似た縦格子デザインのフロントグリルを採用。上級車種をイメージさせる戦販が成功して販売も好調でした。
しかし、先代から引き継いだシャシだったことから基本設計の古さは否めず、後輪駆動のままとなっており、ライバル車たちが次々と前輪駆動を採用して広い室内空間を実現していたことに比べ、ファミリカーとして不利な状況が続きました。
そして、ファミリアは1980年に、「赤いファミリア」のキャッチコピーがつけられた5代目へとフルモデルチェンジを敢行。
前輪駆動による広い室内空間と、直線基調のシャープな外観デザインが若者を中心に支持され、シリーズでも屈指の大ヒットを記録しました。
※ ※ ※
FR車のメリットは、操舵輪と駆動輪を分けることによるハンドリングの良さと、加速時に車体荷重がリアへ移動することで、大きな駆動力が得られることにあります。
そのため、スポーツカーでは室内の広さよりも走りの性能を優先することから、FR車はまだまだ現役でラインナップされています。
また、FR車の醍醐味として、アクセルワークで車体の姿勢や旋回をコントロールできることが挙げられ、今後EV化しても効率の追求だけでなく、後輪駆動の走る楽しさは残してほしいところです。
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