VW新型「ゴルフ」にディーゼルモデルTDI追加! 遅れて登場した本命はどう進化した?
くるまのニュース / 2022年1月1日 18時10分
2021年6月に日本に上陸し、2021−22日本カー・オブ・ザ・イヤーのインポートカー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれた8代目となるVW新型「ゴルフ」に、この12月21日、待望のディーゼルモデル「ゴルフTDI」が追加されました。その走りはどうなのでしょうか。モータージャーナリスト岡本幸一郎氏のレポートです。
■従来モデルと比較してNOxの排出量が最大80%削減
2021年6月の衝撃の日本上陸から半年たらず。8世代目にフルモデルチェンジしたフォルクスワーゲン(VW)新型「ゴルフ eTSI」に次いで、こちらを待っていた人も少なくないであろう、ディーゼルモデルの「ゴルフTDI」がやってきました。
最高出力150馬力(110kW)、最大トルク360Nmというエンジンスペックは、1.5リッター4気筒ガソリンターボのeTSIに対して、最高出力が同じで、最大トルクは110Nmも大きい数値となります。さらにWLTCモード燃費は20.0km/Lと、同eTSIの17.3km/Lを2割近く上回ります。
同じように4グレード体系で、車両価格は291万6000円から375万5000円のゴルフeTSIに対し、ゴルフTDIは344万4000円から408万8000円となっていますが、じつはエンジンの違いだけではありません。
見た目は、バッジ以外はゴルフeTSIと同じですが、グレードと装備の関係が少々違っています。
同一車線内全車速運転支援システムの“Travel Assist”やデジタルメータークラスターの“Digital Cockpit Pro”といった新型ゴルフならではの先進装備が、TDIではエントリーグレードの「Active Basic」から標準装備とされました。
また、ゴルフeTSIの下位グレードではオプション設定だった、走行モードの切り替えが可能なドライビングプロファイルやシートヒーターなどの快適装備も、ゴルフTDIでは全車標準装備となります。さらにゴルフTDIには、LEDマトリックスヘッドライト“IQ.LIGHT”やヘッドアップディスプレイ、純正インフォテイメントシステム“Discover Pro”といった、通常はオプション設定の装備を標準設定とした「Active Advance」というグレードが新たに設定されています。
その上位グレードとして、上質なトリムや電動パノラマスライディングルーフなどのオプションが選択可能な「Style」や、エクステリアをスポーティな仕様にした「R-Line」が設定されているのは同じですが、今回のTDIの追加を機に、要望の多かった18インチアルミホイールが、R-Line用のオプションとしてゴルフeTSIも含め選べるようになったのも注目すべきニュースです。
走りに関する部分でも、ゴルフeTSIの1リッター車ではトレーリングアームだったリアサスペンション形式が全車4リンク式となり、これにあわせて燃料タンク容量も全車51リットルとなります。車両重量は、ゴルフeTSIの1リッター車に対して150kg、同1.5リッター車に対して100kg重い1460kgとなります。
150psと360Nmを発生する最新世代の2.0TDIエンジンには、最新のテクノロジーとなる、ツインドージングと呼ぶデュアルAdBlue噴射システムの採用が特徴です。
VW「ゴルフTDI R-Line」のTDIエンジン
これはふたつに分けて直列に配置したSCR触媒コンバーターから「AdBlue(尿素水)」を注入することで、窒素酸化物(NOx)の排出量を大幅に削減できるというものです。
さらに、最新の排気浄化システムの採用に加え、各種の最適化を図ったことで、窒素酸化物の排出量が先代と比較して最大で80%も削減されます。あわせて、従来のTDIエンジンよりも低い回転域から最大トルクと最高出力を発生できるようになり、レスポンスの大幅な向上を実現するとしています。
■静かでなめらかなディーゼルエンジン
試乗したTDI R-Lineには、Discover Proパッケージ(19万8000円)とテクノロジーパッケージ(17万6000円)と、前出の18インチアルミホイール(6万6000円)が装着されていました。
VW「ゴルフTDI R-Line」の走り
そして走り出してすぐに、あまりに静かで滑らかなことに驚きました。けっして大げさではなく本当に、間違えてゴルフeTSIに乗ったのかと思ったほどです。
従来の7代目ゴルフ(ゴルフ7)のモデル末期に日本に導入されたTDIにも長距離を走る機会があって、どのような感じだったのかよく覚えているのですが、もはや比べるまでもないほど圧倒的にノイズや振動が小さく、別モノに進化しています。
これにはおそらく、エンジンマウントをかなり柔らかくしているのも効いているのではないかと思います。先発のゴルフeTSIの1リッター車が3気筒でも、音や振動の弱点を車内に伝えないように同様の手法をとっていました。
半面、ハードブレーキングなどの際には動きが大きく出るなど、その副作用を感じさせるシチュエーションもあったわけですが、それは特殊な状況であり、おそらく柔らかくしたほうがメリットが大きいと判断されたのでしょう。
そしてもちろんTDIらしい力強い加速フィールは、なかなかインパクトがあります。eTSIでも十分なところ、低回転域から圧倒的にトルクフルで、ちょっときつめの上り勾配が連なる箱根のワインディングでもものともしません。
加えて、7速DSGのクラッチが湿式多板であるおかげで、走りがとてもスムーズです。クラッチが乾式のeTSIも、DSGが不得手な極低速域の部分をBSG(ベルト駆動式スタータージェネレーター)が巧くカバーしていてあまりギクシャクすることもないのですが、TDIは素の状態でも十分にスムーズです。
ハンドリングも、車検証によると前軸重が910kg、後軸重が550kgとややフロントヘビーながら、その影響をあまり感じさせないほど、操舵に対する動きの素直で走りの一体感があります。イメージした走行ラインを極めて正確にトレースしていくことができます。
試乗時は雨で路面が滑りやすかったにもかかわらず、トラクションも十分に確保されていて、あたかも後輪を操舵しているかのような動き方をして、小さな舵角を維持したままグイグイと斜め前方に進んでいく感じで曲がっていきます。
また、ゴルフeTSIのR-Lineでは少々硬さを感じた乗り心地も、後発モデルとして早くも手当てされたのか、あるいは車両重量の増加が効いてか、当たりのカドが感じられなくなっています。
むろん、ゴルフeTSIでも掲げていた、デジタル化と運転支援技術のさらなる進化はもちろんゴルフTDIにも盛り込まれています。
ディーゼルは欧州ではもう“オワコン”と認識されつつあるなどという話も耳にしますが、こうして最新のTDIのあまりに高い完成度を間のあたりにすると、まだまだ大きな可能性があるように感じた次第です。
VW「ゴルフTDI R-Line」のインパネ
Volkswagen Golf TDI R-Line
フォルクスワーゲン・ゴルフTDI R-Line
・車両価格(消費税込):408万8000円
・試乗車オプション込価格:435万2000円
・全長:4295mm
・全幅:1790mm
・全高:1475mm
・ホイールベース:2620mm
・エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
・排気量:1968cc
・駆動方式:FF
・変速機:7速DSG
・エンジン最高出力:150ps/3000−4200rpm
・エンジン最大トルク:360Nm/1600-2750rpm
・タイヤサイズ:225/40R18
・WLTCモード燃費:20.0km/L
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