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取締り強化? 規制緩和? 電動キックボードの扱いは結局どうなる? 検討されている新ルールとは

くるまのニュース / 2021年12月27日 10時10分

警視庁が電動キックボードの取締りをする様子が伝えられた翌週に、今度は警察庁が規制緩和を検討しているという報道がありました。電動キックボードを巡る規制と方針は、どのような枠組みで決まり、今後どうなっていくのでしょうか。

■規制緩和の検討、なぜ今?

 警察庁が電動キックボードに対して運転免許を不要とするなど道路交通法の改正を検討していると、一部メディアが2021年12月23日に報じました。

 これを受けて、ネット上では電動キックボードに対して普及促進につながると歓迎する声がある一方で、「なぜ、このタイミングで?」とか「なんだかよく理解できない」と、規制緩和について困惑する人も少なくないようです。

 なぜそうした事態になっているかといえば、この報道が出る少し前の12月15日に東京都港区で、警視庁による電動キックボード取締りの様子が報道陣向けに公開され、その模様がテレビやネットで広く紹介されたばかりだったからではないでしょうか。

 警視庁によると、2021年は11月末までに電動キックボードが関係する事故が60件発生し、16人が負傷しています。

 事故が増えてきたからこそ、交通ルールを遵守してもらうため取締りを強化し、また車両の区分に応じた反則切符を切る場合があるということを周知するために、警視庁が積極的に広報活動したといえます。

 警視庁はこの取締りの様子を公開する2か月ほど前、交通事故防止の取り組みの観点で「電動キックボードについて」としてウェブサイトに車両の技術要件、運転免許、保険、ナンバープレートの必要性などを詳しく紹介しています。

 具体的には、「キックボード(車輪付きの板)に取り付けられた電動式のモーター(原動機:定格出力0.60キロワット以下)により走行する電動キックボードは、道路交通法および道路運送車両上の原動付き自転車に該当する」と説明しています。

 つまり、運転には原動機付き自転車を運転できる二輪免許や四輪免許が必要で、走行するのは左側通行の車道のみです。歩道は通行できませんし、ヘルメットの着用義務もあります。

 また道路運送車両法の保安基準に合致していて、自動車損害賠償責任保険または自動車損害賠償責任共済に契約していなければなりません。

 そのほか、区市町村税である軽自動車税の納付義務があり、納付により交付されるナンバープレートを取り付けていなければなりません。

 さらに「販売する方へ」として、電動キックボードの販売取扱店には、法規などについて丁寧に説明することを要望すると同時に、「『運転免許がなくても公道で乗れる』等の虚偽の宣伝や説明をすると、刑事責任を問われる場合があります」と厳しく通知しているのです。

 ところが、都内などでは電動キックボードをノーヘルで走行していても、交番の警察官もパトカーもその電動キックボードに乗る人を呼び止めようとはしない――そんな光景を見た人もいるでしょう。

 そうこうして、警視庁による情報提示から2か月後には、運転免許不要だとか、ヘルメット着用は任意だとか、また条件によって歩道も走れるといった、警察庁の規制緩和の方針が表に出てきたのです。

 確かに、こうした電動キックボードを巡るここまでの流れを振り返ってみると、多くの人が「一体どうなっているの?」という素朴な疑問を持つのは当然のように思えます。

■電動キックボードの規制緩和 その背景は?

 今回の規制緩和の方針は、いきなり決まったというものではなりません。

 2010年代後半頃から、欧米で電動キックボードのシェアリング事業が盛んになり、日本でも交通、車両規定、事業化の観点から、内閣府、警察庁、国土交通省、経済産業省などで多角的な議論が進められてきました。

兵庫県姫路市でも電動キックボードの実証実験が実施された(画像:E-KON)兵庫県姫路市でも電動キックボードの実証実験が実施された(画像:E-KON)

 そうした中で電動キックボードは、新しいビジネスモデルという観点から、産業競争力強化法の規定に基づき、新事業特例制度を使い、mobby rideやLuupなど4事業者が東京、神奈川、千葉、福岡、愛媛などで公道実証実験を実施しました。

 このとき最高速度を15km/hに制限し、また実験場所が交通の頻繁な道路を含まない場合ヘルメットの着用義務なし(ただし着用を強く推奨)となりました。

 この実証実験の対象として、ノーヘルで電動キックボードを乗る人がいたということでしょう。

 実証実験の内容や海外での事例などを含め、さらに他の交通との関係性を考慮して、警察庁では電動キックボードに関する法改正を視野に入れた検討会が、2020年7月から2021年11月まで計9回にわたり開催されてきました。

 名称を「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」といいます。

 ここには、電動キックボードのみならず、電動車いす、自動配送ロボット、超小型モビリティ、自転車などが含まれます。

 2021年12月に最終報告書が提示されていますが、新たな交通ルール(車両区分)の大枠として、「一定の大きさ以下の電動モビリティは、最高速度に応じて3類型に分ける」としています。

 1つ目は歩道通行車(6~10km/h)です。電動車いすや自動配送ロボットが該当します。

 2つ目は小型低速車(15~20km/h)です。通行できるのは車道、普通自転車専用通行帯、自転車道。ただし、歩道や路側帯を通行する際は、最高速度の制御とそれに連動する表示が必要としています。ここに、一部の電動キックボードが含まれます。

 3つ目は既存の原動機付き自転車等(15~20km/h超)です。通行は車道のみ。免許所持やヘルメット着用の義務は維持としています。

 つまり、今回話題となっている電動キックボードの規制緩和は、上記の「小型低速車」という類型に関するものが多いといえます。

 免許の対応については、同検討会の中間報告書の中に海外制度に関する調査内容があります。例えばドイツでは運転免許不要・年齢制限14歳、フランスでは運転免許不要・年齢制限12歳などと記載されています。

 最終報告書では、今後の検討事項等として、小型低速車の最高速度は「一般的な自転車利用者の速度(15~20km/h)と同程度で検討」としました。

 また、交通安全教育のあり方については「運転免許を不要とするが、基本的な交通ルールに関する理解を担保するため、シェアリング事業者・販売事業者による利用者に対する交通安全教育の実施を求める」としています。

 また、ヘルメット着用の促進も図るとしています。

 以上のような、電動キックボードを含む多様なモビリティに関する道路交通法等の改正案について、警察庁は2022年の通常国会に法案を提出する方針です。

 電動キックボードについては、法改正がおこなわれてからも、各地域の実情に合わせて利用者、地方自治体、事業者が丁寧に情報交換し、地域社会のルール作りが必要な場合も出てくるかもしれません。

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