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知らないけれど使ってる!? クルマの優れた裏方「モービルアイ」の技術は何がスゴいのか?

くるまのニュース / 2022年1月11日 17時10分

「EVシフト」だけじゃない! クルマのADAS(先進運転支援システム)もEVと同様に技術開発競争が熱を帯びていますが、実は多くのクルマにそのADASを支えるモービルアイの技術が搭載されています。このモービルアイとは何なのでしょうか。

■熱を帯びるクルマのADAS技術開発競争

 米ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2022」で、フォルクスワーゲン、フォード、そして吉利(ジーリー)のEVブランド「Zeekr」が、インテル/モービルアイの自動運転やADAS(先進運転支援システム)の新技術を採用すると発表しました。

 さてここで、この「モービルアイ」という名前を聞いたことはあるでしょうか。

 モービルアイは、インテルの子会社です。名前は知らなくても、日本をはじめ欧州、アメリカ、中国などの自動車メーカー30社以上がモービルアイの技術をすでに量産車で採用しています。つまり日本の多くのユーザーも、その技術に触れていることになります。

 モービルアイの技術を具体的にいうと、いわゆる自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)やレーンキープアシフト、さらには自動運転レベル2でのハンズフリー走行などで使われる、カメラによる画像認識をおこなうコンピュータチップです。

 そのなかでも、モービルアイの事業を大きく飛躍させたのは、2010年代半ば以降に本格的な生産を始めた単眼カメラを使った「EyeQ3」でしょう。

 EyeQ3の開発が佳境に入っていた頃、筆者はイスラエルのエルサレムにあるモービルアイ本社を単独取材し、試作車でエルサレム市街地を走行しました。

 あわせてモービルアイ創業時からの開発に関するさまざまな話を聞くことができましたが、取材に応じたモービルアイの共同経営者は、「時代は明らかに我々にとって追い風だ」と将来の事業成長に自信を見せていました。

 その背景にあったのが、予防安全に対する世界的な認識の高まりです。

 クルマの安全性に関する第三者評価に、衝突安全や予防安全について項目が追加されたのです。

 欧州NCAP(ニュー・カー・アセスメント・プログラム)や日本のJNCAPなどで、歩行者に対する予防安全評価が昼間だけではなく夜間も対象になるなど項目が強化されていきました。

 こうした時代の流れを受けて、小型車から大型の高級車までADASが高度化し、歩調を合わせるようにEyeQ3の需要も急増していきます。

 EyeQ3から進化した「EyeQ4」は、BMWや日産が採用する単眼カメラを3つ使う「トリフォーカル」と呼ばれるシステムを量産化しました。

 その後、EyeQ4はトリフォーカルに加えて5つのカメラを使う「フルビジョン」へと進化していきます。

 そうしたなか、2017年に大きな出来事が起こります。米半導体大手のインテルが、モービルアイを153億ドル(現在のレートで約1兆7750億円)で巨額買収したのです。

「インテルはいってる」というコピーでおなじみのインテルは、パソコンなどIT機器向けの半導体を開発・製造してきましたが、モービルアイの買収によって自動車産業界に本格参入した形です。

 筆者は2017年にインテルが米シリコンバレーのサンノゼに新設した自動運転開発拠点も現地取材し、インテルの自動車産業界に対する意気込みを感じています。

 2022年1月時点で、乗用車向けではインテル/モービルアイが自動運転レベル「2+」と呼ぶ高度なレベル2やレベル3への対応、またいわゆるロボットタクシーのような公共交通向けのレベル4用として、EyeQシリーズは第六世代に進化しています。

■モービルアイの強みは「REM」にあり

 ADASや自動運転に関する画像認識技術については、インテル/モービルアイのほかに、日本メーカーだとトヨタ系のデンソー、またスバルは次世代「アイサイト」(ADAS)で米オンセミコンダクターとスウェーデンのヴィオニアと協業を始めています。

 欧州もコンチネンタル、ボッシュ、バレオなどの自動車部品大手が、ADAS関連で量産体制を敷いている状況です。

モービルアイの最新チップ「EyeQ ULTRA」のイメージ(画像:モービルアイ)モービルアイの最新チップ「EyeQ ULTRA」のイメージ(画像:モービルアイ)

 このようにADASまわりの技術競争は熱を帯びてきていますが、インテル/モービルアイとしては、REM(レム:ロード・エクスペリエンス・マネージメント)と呼ばれるテクノロジーが強みといえるでしょう。

 REMは、画像認識用のカメラから得たデータをクルマからクラウドへ転送し、解析ののち短時間でデジタル地図情報を作成するというものです。

 モービルアイによると、信号機、横断歩道、車線などの位置情報だけでなく、それらの関係性についても独自のアルゴリズムによって解析するといいます。

 一般的には、ハンズフリーや自動運転で走行する際、専用の測定車両を事前に走らせて高精度三次元地図(3Dマップ)を生成する必要があります。しかしこの方法だと、地図生成後に道路状況が変われれば、また測定をする必要が生じます。

 一方、REMは道路状況の変化を把握しやすく、しかも高精度三次元地図に比べて自動車メーカー側が負担するトータルコストが安く抑えられる可能性があるといいます。

 REMはグローバルで拡大するEyeQシリーズにひも付く技術だからこそ可能になるインテル/モービルアイならではの発想です。

 CES 2022の発表でも、フォードがREMを採用した高度なレベル2(レベル2+)でのハンズフリーADASを複数モデルに展開することを明らかにしています。

 その他、すでにインテル/モービルアイの画像認識技術を採用している日系自動車メーカーの技術関係者が「REMの採用も視野に次世代ADASの開発を考えている」と漏らしています。

 このところ自動車産業界は、トヨタ、テスラ、アップル、そしてソニーなどのEVシフトが大きく取り上げられている印象ですが、その水面下では、ADASや自動運転もさらなる技術進化が進んでいるのです。

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