レクサス新型「LX」はどう進化? 最速試乗でわかったランクル300との違いとは?
くるまのニュース / 2022年1月13日 18時10分
2022年1月12日に登場したレクサス新型「LX」。NXに続いて、次世代レクサスの第2弾となるLXですが、新型ではどのように進化したのでしょうか。早速乗ってみました。
■フルモデルチェンジして登場したレクサスのフラッグシップSUV
2021年に登場した新型「NX」に続いて、次世代レクサスの第2弾となる「LX」が国内で発表・発売されました。
新型は正常進化と思われがちですが、じつはコンセプトは刷新されています。それは何かといえば、レクサスLXとしての「立ち位置」でしょう。
歴代モデルはレクサス仕立てではありましたが、残念ながら「高級なランクル」の域を出ていませんでした。しかし、新型は「レクサスのフラッグシップSUV」として開発されています。
このようにいうと「新型もランクルの基本コンポーネントを使っている」と言う意見が出ます。ただ、従来モデルは「ランクルの流用」だったのに対して、新型は「ランクルの武器を活用」と、考え方が異なります。
じつはこれ、TNGAの「基本性能にこだわった高いレベルのモジュールを開発、各ブランドが求める性能に合わせて最適化して使う」という考え方になります。つまり、NXの基本骨格が「RAV4」や「ハリアー」と同じGA-Kを用いていますが、各部がレクサスの目指す走りのために専用設計になっているのと同じです。
試乗の前に、チーフエンジニアの横尾貴己氏に「新型LXが目指した走り」と「メカニズムのこだわり」について聞きました。
--先代は乗ると他のレクサスとはちょっと違う印象で、ある意味「孤高の存在」だと感じました。新型の走りはどうですか?
横尾氏:他のモデルと機構/構造は異なりますが、レクサスファミリーである以上は「味」の部分はシッカリと統一させています。
--フレームでもレクサスらしい走りを実現させるための武器は何でしょうか?
横尾氏:全面刷新した「GA-Fプラットフォーム」の採用に加えて、「電動パワーステアリング(EPS)」と「アクティブ・ハイト・コントロール(AHC)」が大きいですね。AHCはショックアブソーバー兼車高調整機能兼ガスバネ……という機構になりますが、先代は前のみでしたが新型は前後に採用しています。特にステアリングを切った時に、今までのフレーム車のようにグラッと来ないのは、AHCのガスバネの効果が大きいです。
--つまり、サスペンションのセットアップだけでは実現できなかったと?
横尾氏:そうですね。直進/ゆっくり走っている時とステアリングを切った時で、AHCの作動は全然違います。4輪でスッと曲がる感覚はこれまでのフレーム車にはないもので、自分も生産車に近い試験車に乗った時、手前味噌ですが「これは凄い!!」と思いました。
--他にLX独自の部分はありますが?
横尾氏:一般的にフレーム車は「ボディに手を入れても効かない」と言われて続けてきましたが、結合剛性や構造用接着剤を上手に使うと、レクサスらしい乗り味を引き出すための大きなアイデアとなりました。
--ちなみにパワートレインやブレーキなどは形式的にはランクルと一緒ですが、その味付けはどうですか?
横尾氏:V6-3.5リッターV型6気筒直噴ツインターボ+10速ATですが、制御系は独自です。走りはじめのスッと走る抵抗感のない軽やかな動き、雑味の無さは他のレクサスと変わらず。この辺りは静粛性の高さに加えて姿勢変化の少なさも大きく効いているはずです。
–レクサスの走りは「スッキリと奥深く」がテーマですが、LXは実現しやすかった?
横尾氏:正直いうと「間に合わないかも?」というくらい苦労しました。レクサスの味は「味磨き活動」を通じて頭と体にインプットされていますが、開発当初から悩みは「どうやって実現させるのか」でしたので……。
--レクサスは「二律双生」にこだわっていますが、LXの場合は「オンロード性能」と「オフロード性能」の両立でしょう。味付けにはオンロードのTAKUMI(伊藤好章氏)、オフロードのTAKUMI(上野和幸氏)が関わっていると聞きましたが、相容れないことは?
横尾氏:たとえば、オフロードでの「アタリの優しさ」はオンロードでの「乗り心地の良さ」にも通じます。つまり、走るステージが異なっても理想は同じで、仕上げていく上で相反することはありませんでした。
--「いいクルマは走る道を選ばない」といいますが、LXはその究極でもあると?
横尾:その通りです。LXのコンセプトは「世界中のどんな道でも、楽に上質に」ですので。
■まるで大排気量NAエンジンのような吹け上がり
では、実際に見て・触れて・乗ったらどうだったのか? 今回は短時間ですが富士スピードウェイのマルチコースと特設のオフロードセクションで試乗することができました。
レクサス新型「LX600」の走り
エクステリアにはランクルの面影が残りますが、ドア以外の外板は全てLX専用です。企画時はまったく別のデザインも検討されたといいますが、メインマーケットの中東ではランクルとの協調はメリットのため、あえて“らしさ”を残しているそうです。
個人的には18インチタイヤとヒカリ物を抑えた意匠の「オフロード」が好印象で、これまでのレクサスとは違う「引き算の美しさ」が感じられました。ただ、残念なのはランクルと同じホイールデザイン。ここはLXにふさわしいカッコいい専用デザインを期待したいところです。
ステップに足をかけ、「ヨイショ」と運転席に座ると、TNGA世代のUX/NXと変わらない自然なシートポジションに先代からの進化を実感します。
インパネは新世代レクサスの「TAZUNA」に基づく設計ですが、先に登場したNXとはデザインは異なります。上部にナビゲーション用、下部に空調/AWD制御用のツインディスプレイ仕様となっており、各スイッチは悪路走行時も確実に操作ができるように機能的に配置されています。個人的には大画面のシングルディスプレイにして画面分割をしたほうが、デザインはよりスマートになるような気がします。
少々気になったのは、ステアリングスイッチがNXとは違うロジック(従来仕様)であることと、シフトレバー後ろに非接触充電器をレイアウトするために、カップホルダーが追いやられてしまい使いづらいことです。このあたりはレクサスとしての統一感、何を優先すべきかなど……再考の余地があると思います。
インテリアの注目は、日本向けレクサス最高額となる最上級グレードの「エグゼクティブ」に採用されたリクライニング機能付(最大48度)のキャプテンシートと後席専用コンソールでしょう。実際に座ってみましたが、LSよりも縦方向に余裕があることに加えて、目線が高いことによる見晴らしの良さなども相まって快適性はいうことなしです。値段はかなり高価ですが、選びたくなる気持ちはわかります。
実際に走らせるとどうだったでしょうか?
パワートレインは415馬力/650Nmを発揮する3.5リッターV6ツインターボと10速ATの組み合わせです。
ハード的にはランクルと同じですが、LXは大排気量NAだと錯覚するような自然な過給の立ち上がりや雑味のない滑らかな吹け上がり、さらにアクセルを踏んだ時のクルマが軽くなったと錯覚するくらいの応答性の良さはランクルとは別モノ。どちらかというと「LS」に近い印象を受けました。
さらに驚いたのはフットワークです。正直いうと、試乗前は「乗り比べると解るくらいの細かい差かな?」と予想していましたが、走らせてビックリ!! ランドクルーザー300系とは完全に別のクルマで、むしろ他のレクサスモデルとの共通性の高さを実感しました。
ステア系は軽い操作力、ダルさを感じない初期応答の良さ、滑らかなのに芯がある操舵フィール、直結感の高さなどを感じましたが、これはLX初採用となるEPS(電動パワーステアリング)の恩恵が非常に大きいです。
フットワークは、語弊を恐れずにいえば、フレーム車である事を忘れる一体感のある動きが印象的です。
フレームとボディの結合の高さによる剛性の連続性や、フレーム剛性アップ(最新の溶接技術)やボディ剛性アップ(スポット増しや構造用接着剤)などにより力の伝達が上手にできていると予想しています。
ステアリングを切るとフレーム車特有のグラッと来る動きの少なさはもちろん、自然なノーズの入りと細かい操作にも応えるコントロール性、そして4つのタイヤを効果的に使って安定した姿勢で曲る感覚は、2トンオーバーの巨体であることを忘れるレベル。このあたりはより緻密な制御が可能なリニアソレノイドバルブ式AVSと姿勢変化をコントロールするAHC(アクティブハイトコントロール)のガスバネの効果が大きいのでしょう。
■どのシーンで走ってもレクサスらしい走り
最後に、クローズドコースなのをいいことに、目いっぱいのペースで走らせてみましたが、重さだけ注意すれば不安要素もなし。
正直いってしまうと、緩めの中速コーナーを曲がる時の『気持ち良さ』はNXといい勝負かな……と。
レクサス新型「LX600」の走り
ノーマルでここまで走れてしまうと、海外仕様に設定のある「Fスポーツ」の期待値はより高まります。ちなみに日本への導入の可能性について横尾氏に聞いてみると、「モノとしては存在しますので、市場からの要望次第ですね」と語ってくれました。
乗り心地に関しては、今回試乗した路面がフラットだったので、判断は一般道での走行までお預けです。ただ、コース上の縁石を跨いでみた感じでいうと、段差を乗り越える際のアタリの優しさとショックの少なさは、現レクサスラインアップの中で一番優れているといってもいいかもしれません。
ではオフロード性能はどうでしょうか?
上記のようにオンロード性能の飛躍的なレベルアップから、「オフロードはランクルに任せたのかな?」と思う所もありましたが、モーグルや急こう配を備えた特設コースを走らせてみてひと安心。
もちろん先代でも同じコースはクリアできる実力を備えていますが、新型はそれに加えて「誰でも」、「安心して」、「快適に」、「楽に」走ることが可能でした。
とくに驚いたのは階段状の段差を上がる時、新型はまるで段差の角が丸くなったかのようなショックの少なさとクルマの擦れの少なさを実感。さらにオフロード走行をアシストしてくれるマルチテレインセレクトやクロールコントロールの制御の緻密さや応答の速さ、作動音の少なさなども、クルマへの信頼に繋がると思います。
※ ※ ※
そろそろ結論に行きましょう。
レクサスは相反する価値を同時に叶えることを「二律双生」と呼んでいますが、新型LXはオンロード性能/オフロード性能を高次元で両立させているだけでなく、どちらのシーンで走ってもレクサスらしさを実感できる魅力が備わっている一台です。
おそらく、先代はレクサスの名を冠しているものの、通常のラインアップには属さない別格な存在だったように感じますが、新型は正真正銘のレクサスの一員になったといってもいいのかもしれません。
消費税込みの車両価格は1250万円から1800万円となっていますが、じつはベースグレード同士で新旧の比較をすると微増。むしろ性能アップ分や機能・装備の充実などを考えるとバーゲンプライスだったりします。
とはいえ、絶対的な価格の高さ……とくにランクルとの価格差から、今後あーだ、こーだいう人も出てくるでしょう。
ただ、ランクル300系と新型LXは似て非なるクルマに仕上がっているので、比べるのは野暮というものです。
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